復讐のはじまりは暗くて寒い

皐月亭 もっちりー

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見るも無惨な有り様だった
庭園での華やかな催しを行う事を想定し設計されて造られたその広場は
今はなぎ倒された木々が散乱し地面は抉れ焼け焦げた匂いが辺りに充満していた

「………」

トマスが案内された先には人が集まり何かを囲んでいた
その集まっている見覚えのある面々を見てトマスは僅かなため息をこぼした
トマスが近付くと台の上のそれを覆う布が捲られた
そこには荒れた庭の元凶となった獣の死体が置かれていてトマスはその残骸を見て思わず顔をしかめながら確認した

「……これは…この首輪は確かに『シュシュ』の物のようですね
あちこち損傷はしていますが見た限り…間違い無いでしょう」

背中から腹にかけての深い傷と取れてしまった後ろ脚…
だらりと口から落ちた赤い舌と焼けて真っ黒になった顔、目はかつての高貴さは感じられず白く濁りその首輪と焼けずに残った白い毛がかつての姿の名残りとして見てとれた

「では!男爵もご存じでしょうがこの魔物はとても貴重な物なのですよ多少の傷みは問題ありません!是非とも今後の私の…我らの研究の為にも…」

「待ちなさい、研究を望む貴殿の言は分からなくもないが今後を考えるなら協会にて保存を中心とした…」

「いえ、皆様お待ちを!そもそも魔物を倒した時の取り決めをお忘れか?それに準ずるなら…」

目の前で言い争いを始めたのは古くからこの国を下支えする魔法協会から派遣された魔法使い達と
魔法の各技術、開発機関等から送られて来た者達だった

「あー、皆様お待ち下さいこの魔物はとある魔術師からの『借り物』のなのです
本来なら数年後に返却予定だった物でして今回の『事故』は想定外でありどうすれば良いかは直ぐには答えられません
今は向こうとの契約内容を改めて確認中にございます
契約内容を見て問題が無ければご希望に添うことも出来ますが…
向こうとの連絡は次の船便を待たなくてはなりません
どうかご理解下さい」

「…………そうか、だがなバニエアラ男爵よこの始末はどうするのだ?魔術師との『契約』の重要性は我らも当然承知している
確かに無視は出来ない物だろうがこの国の法とて無視して良いものではない
今回の『事故』の報告を確かなものとするには相応の調査は必要だろう?」

「…………」

トマスの顔に貼り付けられた笑顔の仮面が僅かに揺れた

「そうだな、特に件の魔術師の契約については調査が必要だろう」

「あぁ、我らも同意する」

「そうだなとても重要なことだ
だが、船便の往復を待っていては時間ばかりがかかってしまう
男爵、次の船にて
かの国への調査団を派遣することを検討してみてはどうだろうか?我らも協力は惜しまぬ」

「…それは、かねてより再三の皆様方との話し合いの事と同じく
皆様もご存じの通り、船の事は船長次第ですから
私では約束は出来かねます
今回の事案も王国の法に背く事は私どもは畏れ多く考えることもございません」

頭を下げるトマスにそれでも今回の事は非はそちらにあるのだからと断るのは違うだろうといい募ってきた
納得がいかない面々は何とか言質を取ろうと食い下がったがトマスが頷くことは無かった






    
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