復讐のはじまりは暗くて寒い

皐月亭 もっちりー

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184.

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『またか』と内心でため息をつきながらトマスは柔和に見えるように調整された笑顔の仮面を被り続けた

彼の島国ファンネル・ド・ル・アゴドとの独占貿易はバニエアラ商会の根幹を支える物であった
一度の船の往復でやり取りされる物品での会計は王国の上級貴族家の一年分ほどにもなる
船は3~4ヶ月で1往復するので年に3~4回の取引が行われその合計額だけでも王家の資産を越えるのではと言われている
そもそも最初に王国で名を馳せた商材は彼の島から持ち帰った薬草と薬のレシピだった
バニエアラ家の異例のスピードでの勃興は彼の島との交流があったからこそだった

あやかりたいと願うものやそれを面白くないと思うものは王国内に止まらず周辺諸国にもいたし貴族も商人も平民にもいた

妬むもの  羨むもの  恨みを抱くも者

その数はあまりにも多くトラブルは絶えない…

一度はグラナス達が押さえたが彼らが去り跡を継いだのがまだ年若い息子だと見て燻っていた者達は再び手を伸ばしてきた
商会主を継ぎ、男爵位を継いだトマスは最初の数年をそれらを含めた問題の解決に忙殺された

最近は鳴りを潜めていたというのに…
今、目の前にいる彼等はその執念としつこさを除けばましな部類だった
彼等はいつも口実を捏造したり何かしらを見付けては再三トマスに島への橋渡しを迫って来ていた

そうして、何度も交渉をした事があるからこそ彼等もトマスから引き出せる最大の言葉が何かを分かっていた

「皆様もご存じの通り私共にはそのような決定権はございません
しかし、王国の法を守ることは光栄にも貴族の末席に置かせて頂いている此の身なれば当然の事です」

トマスが悩むように眉を寄せながら皆を見渡せば話の流れから大体を察して口元が既に緩んでいる者、表情の変わらない者、鋭い目付きでトマスを見つめる者…様々だった

「我が家に何かしらの瑕疵があるならばそれをはっきりさせ償いをせねばなりませんが
先ずは今回の事故が故意の物では無かったと証明する必要があり
その為には不明なやり取りが介在するのは良くないと存じます
此の現場の調査や魔獣との契約に関する事
それに次の船が到着した時に『船長』との魔獣に関する話し合いを行う際にその場にも王国からの監査とアドバイザーを置きたいと考えています」

『船長』の一言で皆の雰囲気が変わった

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