アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました

あと

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4.彼が家に来た

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『天野、今から家遊びに行っていい?』

スマホに表示されたその文字を見て、俺は自分の部屋を見渡す。……やばい。汚い。

魅力的な人物が、脱ぎっぱなしの靴下や食べかけのコンビニ袋に囲まれて暮らしているか……? 答えは断然ノーだ。

前呼んだときは、特別綺麗にしてただけで、基本的には汚いんだよ、俺の部屋。

というか、なんで突然!?

最近、会いたい気持ちを必死に押し殺して連絡を控えていたからか?

いや、だって、頻繁に会いたがったり連絡しすぎたりすると、「いつでも手に入る安い男」だと思われて、唯一無二のミステリアスな感じがなくなるってチャッキーが言ってたんだ。

「やばいやばいやばい!! チャッキー!! 助けて!!」

俺は半泣きでチャッキーにメッセージを叩きつける。

『今、どうしても無理だから明日にしてと言いましょう! 汚部屋に愛しの彼を入れるんですか? ちなみに、部屋が汚いという事実は徹底的に隠しておきましょう。』

「やっぱりそうだよな……!」

チャッキーのいつも正しい。俺は震える指で「今日はどうしても外せない用事があるから無理」と嘘の返信を送る。

『なんで?』

即座に返ってきた言葉に、俺は思わずスマホを凝視した。

「いや、なんでそんなに食い下がるんだよ……」

郁也らしくない。彼はいつも物分かりが良くて、俺の都合を最優先にしてくれるスマートな男だったはずだ。

『……わかった。明日の10時には行くからね』

「めちゃくちゃ早い……っ!」

いや、世間一般では早朝ではないのかもしれないが、徹夜でこの「魔窟」を清掃しなければならない俺にとっては、夜明け直後のような早さだ。

郁也の返信はそれきり途絶えた。

どこか強引な彼の態度に首を傾げつつも、俺はゴミ袋を引っ掴んで立ち上がる。

「見てろよ郁也……。明日お前が来る頃には、峰不○子が住んでるような洗練された部屋にしてやるからな!」

———

「お邪魔します……。昨日はごめんね、突然連絡して」

午前10時ぴったり。チャイムの音とともに現れた彼は、少しだけ居心地が悪そうな、申し訳なさそうな顔をして玄関先に立っていた。

「ぜんっぜんいいよ!! 気にしないで!」

俺は精一杯の笑顔で迎える。夜通しでゴミの山と格闘し、一睡もしていない俺の目はバキバキだったが、なんとか「洗練された部屋」を完成させた。俺、マジで偉すぎる。

「……部屋、前来た時より綺麗だね」

開口一番、彼は驚いたように室内を見渡した。報われた……。掃除機の音が鳴り響く地獄の徹夜が、今、報われた。

「だろだろ!」

「なんでこんなに綺麗になったの? 」

「ふふふ。それはだな、とある人に掃除の極意を教わって、楽しくなってきたからだ!」

本当は「お前を呼ぶために死ぬ気で片付けた」と叫びたい。でも、峰不○子はそんな重いことは言わない。あくまで自分軸で楽しんでいる雰囲気を出すのが、チャッキー流のモテ術だ。

「……誰に教わったの?」

「ば、バイト先の先輩だよ。ほら、前にも言っただろ」

すまん先輩。存在借りる。こうやって、俺の人間関係を支えてくれ。

「……ふーん。洗面所借りるね。手洗いうがいしなきゃ」

「うん、どうぞ!」

流石は郁也、清潔感も完璧だ。そんな彼の背中を見送って、俺はソファにどかっと腰を下ろした。……眠い。でも、ここからが本番——。

「……はぁ!!???」

洗面所から、ひっくり返ったような大声が聞こえた。
え、何? 虫? それとも隠しきれなかったゴミの残骸でも見つかったか?

「な、なんで歯ブラシが2つあるんだよ!!」

郁也が洗面所から飛び出してきた。その手には、コップに立てかけられた二本の歯ブラシ。
……あ、終わった。
一本は新品を下ろしたばかりのやつで、もう一本は毛先が広がって捨てるのが面倒で放置していた。やばい、俺のズボラが最悪な形で裏目に出た。俺のアホ!!俺が極度のめんどくさがりなのがバレる…!

「……え、えっと……」

「答えて。これ、誰の?」

「そ、その、バイトの先輩が……」

動揺のあまり、万能の「先輩カード」を反射的に切ってしまった。

「はあ!? 歯ブラシ置かせるほどの仲なのかよ!? 家で何してたんだよ!!」

「う、嘘! 冗談だって! 兄貴だよ、兄貴が泊まりに来たときの!」

「……お兄さん、いたの?」

郁也が疑わしげに目を細める。

「い、一応……。たまに来るんだよ」

嘘ではない。兄貴は実在する。忙しすぎてこの汚部屋に来たことなんて一度もないが、背に腹は代えられない。

「…………わかった」

郁也は深くため息をつくと、それ以上は追求せず、肩の力を抜いた。
やっぱり物分かりが良くて優しい彼氏だ。俺の下手くそな嘘も、きっと信じてくれたに違いない。
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