アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました

あと

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5.作戦失敗…?

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……静かすぎる。

あまりにも静かだ。

どうしたんだよ、郁也。わざわざ朝早くから、何の用事があって来たんだよ。

郁也はさっきからソファに深く腰掛けたまま、一言も発さずに黙り込んでいる。その横顔はどこか険しく、何を考えているのか読み取れない。

よし、困った時のチャッキーだ。俺はこっそりスマホを取り出した。

『多分、彼は疲れているのでしょう。
あなたに癒やされたくて、たまらず突然会いに来たのだと思います。優しく包み込んで、彼を癒やしてあげてください』

なるほどな、合点がいった。任せろ。俺はバイト先でも人生相談の常連なんだ、心理学部っていう肩書きのせいでな!

俺は意を決して、無言の郁也をぐいっと抱き寄せ、自分の膝の上に頭を乗せた。膝枕だ。そのまま、慈しむようにゆっくりと彼の髪を撫でる。

「……っ! ど、どうした、急に」

郁也が目を見開いて動揺する。俺はそれさえも包み込むように、聖母のような慈愛の微笑みを浮かべた。

「よしよし。疲れてるんだな。今は俺の膝で、何も考えずにゆっくりお休み」

完璧だ。不○子ちゃん……いや、チャッキー。本当にありがとう。癒やしの女神となった俺の腕の中で、郁也は一瞬、毒気を抜かれたような顔をした。

「……これ、みんなにやってるの?」

彼は甘えるように目を細めた直後、ふと何かに気づいたように、訝しげな表情で俺を見上げた。

「え? まあ、バイト先では人生相談によく乗ってるし。心理学部ってだけで、みんな頼ってきて困るよ笑」

俺は余裕のある男を演出して笑い飛ばした。すると、郁也の顔がみるみるうちに不機嫌な色に染まっていく。

「……コミュニケーションを取るのは勝手だけど、俺を最優先にしてよ。俺は、君の恋人なんだから」

わざわざ「恋人」という言葉を強調して、彼は低く言い放った。そんなこと言われなくても分かってるのに、かわいいな。

「それと、気持ちいい。ありがとう、癒やされた」

郁也はそう言って、名残惜しそうに俺の膝から起き上がった。……ふと、彼の視線が俺の首筋で止まる。

「……何? この赤い跡」

「え?」

慌てて近くの手鏡を覗き込む。……本当だ。襟足に近いところに、ぷつりと赤みが差している。そういえば昨日、掃除中に季節外れの蚊が飛んでいた気がする。

「ふふふ。ひ・み・つ♡」

不○子ちゃんマインドを思い出し、指を唇に当てて妖艶に微笑んでみた。

「あ゙?」

地を這うような低い声。郁也の瞳からハイライトが消えた。あまりの怖さに、俺の心臓は一気に縮み上がる。

「嘘です! すみません! 季節外れの蚊に食われました!」

ミステリアスな色気を出そうとしたが、0.5秒で白状してしまった。俺に不○子ちゃんのボディと度胸があれば……!

「……帰る」

「ええっ!? なんで!?」

「今、この部屋にいると、ちょっとイライラする。」

郁也はそれだけ言い捨てると、挨拶もそこそこに嵐のように去っていった。

……何なんだよ、一体。
せっかく徹夜で掃除して、癒やしてあげたのに。
俺は呆然としながら、誰もいなくなった綺麗な部屋に取り残された。
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