浮気の定義で揉めて、別の人を好きになってしまった

あと

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「ごめん…女性プロデューサーに誘われてさ。二人で食べに行くことになった。」

彼は手を合わせ、申し訳なさそうに言った。

「……断れないの?」

「うーん、断ったら仕事に支障が出るから。」

彼は腕を組み、真剣な顔で答える。

「……前は断ってたじゃん。」

ダメだ…面倒くさい。でも、止められない。

「ごめんね。仕事だから…」

「…わかった。」

辛いな。こういう仕事についている人と付き合うって――

僕は業界人の端くれのはずなのに、何もできない。

スターと端くれでは、扱いも、価値観も、こんなに違うんだな。

———

「……あの、よければ二人きりでご飯行きませんか?」

あの後、雪村くんとはすぐに打ち解けた。

「うん、いいよ。」

どうせ晶だって二人きりで女と密室にいたんだ。僕だって、二人きりで遊びに行くのはいいだろう。

——

「音響にはこういう魅力があるんです!」

彼が音響の話をするときの顔は本当に楽しそうで、まるで少年みたいだった。

「現場では目立たないけど、音の演出で世界が変わるんですよ。誰かの感情を“音”で支えられるって、すごくやりがいがあるんです。」

「なるほど!」

思わず笑って頷く。心から好きなことを語る人って、見ていて気持ちがいい。

「裏方に興味を持ってくれて嬉しいです。すごいやりがいがあるんですよ。」

雪村くんは、グラスを持ちながらにこにこ笑っていた。
その笑顔は飾り気がなくて、素直に心が和む。
ああ、この子は本当に“支えること”が好きなんだな、と感じた。

「そういえば、ご趣味とかあるんですか?」

僕が聞くと、彼は少し照れたように目をそらした。

「実は……ゲームが好きで……」

「え!僕も好きです!どんなゲームやりますか?」

「えっと、レトロゲームの方で……」

「うそ、マジで!?となると、あのゲームとか?」

「やりますやります!!」

「えぇーー!?」

ふたりで声を上げて笑った。
気づけば、仕事の話よりもゲーム談義で盛り上がっていた。

晶はゲームをほとんどやらなかった。
せいぜいソシャゲか、ど○森くらい。
メジャーなタイトルを知っていても、話題を広げることはなかった。
僕が話しても、どこか温度差があって、結局口をつぐんでしまっていた。

だから、こんなふうに同じ熱量で語り合えるのが、純粋に楽しかった。

「あの、今度レトロゲームショップ行きません?」

雪村くんが、少し緊張した声で誘ってきた。

「行こう行こう!!」

自然と笑顔がこぼれた。
仕事のことも、晶のことも、少しずつ遠ざかっていく。
楽しみができた。新しい友達もできた。
――裏方も、悪くないかもしれない。
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