浮気の定義で揉めて、別の人を好きになってしまった

あと

文字の大きさ
3 / 6

3

しおりを挟む
「ごめん…女性プロデューサーに誘われてさ。二人で食べに行くことになった。」

彼は手を合わせ、申し訳なさそうに言った。

「……断れないの?」

「うーん、断ったら仕事に支障が出るから。」

彼は腕を組み、真剣な顔で答える。

「……前は断ってたじゃん。」

ダメだ…面倒くさい。でも、止められない。

「ごめんね。仕事だから…」

「…わかった。」

辛いな。こういう仕事についている人と付き合うって――

僕は業界人の端くれのはずなのに、何もできない。

スターと端くれでは、扱いも、価値観も、こんなに違うんだな。

———

「……あの、よければ二人きりでご飯行きませんか?」

あの後、雪村くんとはすぐに打ち解けた。

「うん、いいよ。」

どうせ晶だって二人きりで女と密室にいたんだ。僕だって、二人きりで遊びに行くのはいいだろう。

——

「音響にはこういう魅力があるんです!」

彼が音響の話をするときの顔は本当に楽しそうで、まるで少年みたいだった。

「現場では目立たないけど、音の演出で世界が変わるんですよ。誰かの感情を“音”で支えられるって、すごくやりがいがあるんです。」

「なるほど!」

思わず笑って頷く。心から好きなことを語る人って、見ていて気持ちがいい。

「裏方に興味を持ってくれて嬉しいです。すごいやりがいがあるんですよ。」

雪村くんは、グラスを持ちながらにこにこ笑っていた。
その笑顔は飾り気がなくて、素直に心が和む。
ああ、この子は本当に“支えること”が好きなんだな、と感じた。

「そういえば、ご趣味とかあるんですか?」

僕が聞くと、彼は少し照れたように目をそらした。

「実は……ゲームが好きで……」

「え!僕も好きです!どんなゲームやりますか?」

「えっと、レトロゲームの方で……」

「うそ、マジで!?となると、あのゲームとか?」

「やりますやります!!」

「えぇーー!?」

ふたりで声を上げて笑った。
気づけば、仕事の話よりもゲーム談義で盛り上がっていた。

晶はゲームをほとんどやらなかった。
せいぜいソシャゲか、ど○森くらい。
メジャーなタイトルを知っていても、話題を広げることはなかった。
僕が話しても、どこか温度差があって、結局口をつぐんでしまっていた。

だから、こんなふうに同じ熱量で語り合えるのが、純粋に楽しかった。

「あの、今度レトロゲームショップ行きません?」

雪村くんが、少し緊張した声で誘ってきた。

「行こう行こう!!」

自然と笑顔がこぼれた。
仕事のことも、晶のことも、少しずつ遠ざかっていく。
楽しみができた。新しい友達もできた。
――裏方も、悪くないかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

宮本くんと事故チューした結果

たっぷりチョコ
BL
 女子に人気の宮本くんと事故チューしてしまった主人公の話。  読み切り。

好きとは言ってないけど、伝わってると思ってた

BL
幼なじみの三毛谷凪緒に片想いしている高校二年生の柴崎陽太。凪緒の隣にいるために常に完璧であろうと思う陽太。しかしある日、幼馴染みの凪緒が女子たちに囲まれて「好きな人がいる」と話しているのを聞き、自分じゃないかもしれないという不安に飲まれていく。ずっと一緒にいたつもりだったのに、思い込みだったのかもしれない──そんな気持ちを抱えたまま、ふたりきりの帰り道が始まる。わんこ攻め✕ツンデレ受け

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

処理中です...