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「最近、仕事どう?」
いつものように居酒屋でご飯を食べている時、日向くんが言った。
いつの間にか、呼び方は下の名前で、口調もタメ口になっていた。
「ダメダメだよ。端役ばっかだし……30歳になったら裏方に回ろうって、決意したところ。」
「いいじゃん。裏方も楽しいよ。」
「うん、日向くんの話を聞いて、ちょっと魅力がわかった気がする!」
「だろ~?」
ピロロ…。
テーブルの上でスマホが震えた。
「あ、ごめん。」
僕は急いで電話を取った。
『帰り遅いね。どうしたの?』
晶の声だった。少し心配そうに聞こえる。
「ごめんね。仕事の人と飲んでて…」
正直に答えた。
『そうだったんだ。楽しんできてね。』
それだけ言って、電話はあっけなく切れた。
…もう少し詮索してくるかと思ったのに、あっさりしてる。
やっぱり、彼はさっぱりした人だ。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
そう言って、ビールを一口飲んだ。
「もしかして恋人さん?……ごめん、詮索しちゃって。」
「いや、いいんだよ。うん、そう。……実は最近、ちょっといろいろあってさ。」
僕は名前だけ伏せて、つい話してしまった。
不思議と、日向くんには話しやすい。
話し終えると、彼は静かにうなずいた。
「そうだったんだ。……確かに、それは複雑だね。」
「僕って重いかな?」
正直に聞いてみた。
彼は笑って言った。
「軽くはないと思う。でも、僕もそっち側なんだよね。」
「え?」
「僕も、好きな人が誰かと二人きりで会うだけで嫉妬するタイプ。密室とか……発狂するかも。なんてね。」
……驚いた。そんなところまで、気が合うなんて。
「まあ、でも最近は慣れてきて、何とも思わなくなる日も増えたけどね。」
「慣れって、怖いね。」
「ね。」
笑いながらお酒を飲んだ。
僕はふと思う。
華やかな人よりも、こういう地味で、ちょっと不器用な人の方が、気が合うのかもしれない。
「僕、恋愛遍歴ほとんどなくて……実は晶が一人目なんだ。」
「え!僕も一人だけだよ。」
「マジで?」
「すぐ振られたけどね。重いって言われた。」
「僕たち、似た者同士だね。」
「ほんとに。」
笑い合った瞬間、胸の奥が温かくなった。
……もしかしたら、こっちが“正解”なのかもしれない。
華やかで完璧な晶よりも、趣味が合って、性格も似ていて、重いところまで似ている日向の方が。
――結局、身の丈に合わない恋をしていただけなんだ。
演技も、恋も。
「あのさ……」
気づけば、頭より先に口が動いていた。
「日向くんって、僕はいける?」
……何言ってるんだ。
「ごめん、今の忘れて!」
慌てて手を振った。
「……ありだよ。」
彼は照れたように目を逸らして言った。
「浮気になるので、言えなかったけど。」
……彼も、同じだったのか。
「…別れて、付き合ってって言ったらどうする?」
「…さあ、どうだろう?」
そう言いながら微笑んだ。見たことない笑顔だった。彼の新たな一面に触れた気分だった。
「……彼って、本当に完璧なんだよ。」
僕はポツリとこぼした。
「嫉妬もしないし、束縛もしない。怒らない。いつも笑顔。Hも一度きり。浮気の定義も違う。女の人にモテすぎる。……もう、限界かもしれない。」
僕が悪い。
心が狭い僕が悪い。
全部、僕が悪い。
「……もしかしたら、相性が良くなかっただけかも。」
日向くんの言葉に、少し救われた気がした。
相性。そうかもしれない。
嫉妬深くて重い僕と、完璧すぎる彼。――どちらも、間違ってはいない。ただ、噛み合わなかっただけ。
いつものように居酒屋でご飯を食べている時、日向くんが言った。
いつの間にか、呼び方は下の名前で、口調もタメ口になっていた。
「ダメダメだよ。端役ばっかだし……30歳になったら裏方に回ろうって、決意したところ。」
「いいじゃん。裏方も楽しいよ。」
「うん、日向くんの話を聞いて、ちょっと魅力がわかった気がする!」
「だろ~?」
ピロロ…。
テーブルの上でスマホが震えた。
「あ、ごめん。」
僕は急いで電話を取った。
『帰り遅いね。どうしたの?』
晶の声だった。少し心配そうに聞こえる。
「ごめんね。仕事の人と飲んでて…」
正直に答えた。
『そうだったんだ。楽しんできてね。』
それだけ言って、電話はあっけなく切れた。
…もう少し詮索してくるかと思ったのに、あっさりしてる。
やっぱり、彼はさっぱりした人だ。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
そう言って、ビールを一口飲んだ。
「もしかして恋人さん?……ごめん、詮索しちゃって。」
「いや、いいんだよ。うん、そう。……実は最近、ちょっといろいろあってさ。」
僕は名前だけ伏せて、つい話してしまった。
不思議と、日向くんには話しやすい。
話し終えると、彼は静かにうなずいた。
「そうだったんだ。……確かに、それは複雑だね。」
「僕って重いかな?」
正直に聞いてみた。
彼は笑って言った。
「軽くはないと思う。でも、僕もそっち側なんだよね。」
「え?」
「僕も、好きな人が誰かと二人きりで会うだけで嫉妬するタイプ。密室とか……発狂するかも。なんてね。」
……驚いた。そんなところまで、気が合うなんて。
「まあ、でも最近は慣れてきて、何とも思わなくなる日も増えたけどね。」
「慣れって、怖いね。」
「ね。」
笑いながらお酒を飲んだ。
僕はふと思う。
華やかな人よりも、こういう地味で、ちょっと不器用な人の方が、気が合うのかもしれない。
「僕、恋愛遍歴ほとんどなくて……実は晶が一人目なんだ。」
「え!僕も一人だけだよ。」
「マジで?」
「すぐ振られたけどね。重いって言われた。」
「僕たち、似た者同士だね。」
「ほんとに。」
笑い合った瞬間、胸の奥が温かくなった。
……もしかしたら、こっちが“正解”なのかもしれない。
華やかで完璧な晶よりも、趣味が合って、性格も似ていて、重いところまで似ている日向の方が。
――結局、身の丈に合わない恋をしていただけなんだ。
演技も、恋も。
「あのさ……」
気づけば、頭より先に口が動いていた。
「日向くんって、僕はいける?」
……何言ってるんだ。
「ごめん、今の忘れて!」
慌てて手を振った。
「……ありだよ。」
彼は照れたように目を逸らして言った。
「浮気になるので、言えなかったけど。」
……彼も、同じだったのか。
「…別れて、付き合ってって言ったらどうする?」
「…さあ、どうだろう?」
そう言いながら微笑んだ。見たことない笑顔だった。彼の新たな一面に触れた気分だった。
「……彼って、本当に完璧なんだよ。」
僕はポツリとこぼした。
「嫉妬もしないし、束縛もしない。怒らない。いつも笑顔。Hも一度きり。浮気の定義も違う。女の人にモテすぎる。……もう、限界かもしれない。」
僕が悪い。
心が狭い僕が悪い。
全部、僕が悪い。
「……もしかしたら、相性が良くなかっただけかも。」
日向くんの言葉に、少し救われた気がした。
相性。そうかもしれない。
嫉妬深くて重い僕と、完璧すぎる彼。――どちらも、間違ってはいない。ただ、噛み合わなかっただけ。
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