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異世界生活

魔法訓練②

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ユグドラシルのおかげで感覚を掴めた。

蓮は目を閉じ、体内にある魔素の流れに集合した。

姿勢は自然体。

(これか。これを手に集めて……)

できた。

蓮はそう思い、ゆっくりと目を開け、自身の手を見た。

「おおぉ」

蓮の手は、先ほどのユグドラシルの時と同じように、微かに青みがかった光に包まれていた。
しかし、ユグドラシルが蓮ごと包んだ時の様に量は多くない。

「お上手ですね」

ユグドラシルはそう言った。

一度で感覚を掴めることは凄いことなのかもしれない。
蓮はそう思い、浮かれて桜と向日葵を見て言った。

「見て!すごい……だ……ろ?」

しかし、言葉を発してすぐに失った。

そこには、蓮よりも濃く、大きく、そして安定感のある薄く青い光で全身を包んでいる桜と、蓮と同じように手を薄い青い光で包む向日葵が居た。

「も、もうできたの?」

妹達の凄さを讃えて良いのか、自身の浮かれを恥じれば良いのか、蓮は何とも言えない表情を浮かべた。

「う、うん。なんかごめん。できちゃった」

できた瞬間の喜びの表情が一変して、複雑な表情をしている蓮を、桜は少し気遣った。

「ひぃちゃんも!できたぁ!」

向日葵は手を振ったり、戦うポーズをしたりして楽しそうだ。

「レ、レン様もお上手なんですよ?」

慌ててフォローしようとするユグドラシル。
しかし、蓮はもとより知っていた。
魔法の才能では、この中で、ぶっちぎりの最下位だということを。

「にぃに?ひぃちゃんすごい?」

心配そうな表情をした向日葵に、服をクイクイと引かれて蓮は気がついた。

「2人とも凄いなぁ!天才天才!」

「きゃぁー!ひぃちゃんてんさい!」

向日葵の心配した表情を吹き飛ばすように、蓮は向日葵を抱き上げ、回り、そして抱きしめた。
妹達との比較はやめよう。

桜と向日葵が魔法を早く習得することは良いことだ。

ただ、桜と向日葵を守るために、誰よりも強くならなくてはならないことは事実。
蓮は、魔法だけでなく、剣技や武技を身につけて、自身の道を見つけようと考えた。

「皆さんこれで使えるようなりましたね」

とりあえず、家に設置された浄化の魔法が仕組まれている取手を使えるようになった。
それだけでも大収穫だ。

「この魔素をさらに各属性に変換して使用するのが魔法です」

ユグドラシルによれば、魔法とは、魔素を火や水、雷など様々なものに変化させたものらしい。

魔力を変化させる上で、最も大切なものは想像力。
どれだけ結果を具体的に想像できるのかが、魔法の出来栄えに大きく影響するおうだ。

そのため、知力が高い物ほど、魔力が高く、魔法が上手く扱える。

属性欄に記載があり、レベルが高いものほど、魔素からの変換効率が良く、消費魔力も少ない。
さらに、魔法スキルの成長も早く、複雑で強力な魔法も使いやすいそうだ。

逆に、属性欄に記載がない属性は、いくらイメージを固めても、形をなさないそうだ。


「へぇ本当だ。見てみてぇ」

ユグドラシルの話の途中に、桜が言葉を発した。

その声につられて桜を見てみると、桜は指先から、青い炎を出していた。

火炎放射器のように放出するでもなく、蝋燭ろうそくの火のように弱くゆらめくこともない。

まるで理科の実験で使用したガスバーナーのような安定した力強く燃え盛る青白い炎。

「う……そ……」

蓮は、あまりの衝撃に言葉を失った。
なぜ教わってもいないことがすでにできているのだ。

これが魔法神マーリンの加護なのだろうか。
それとも全属性Lv10や魔力操作Lv7という圧倒的才能なのだろうか。
はたまた、その全てなのだろうか。

「こ、これは凄まじいですね」

ユグドラシルはこんな炎を見たことが無いそうだ。

そして桜は続けた。

「なんか、色々できるかも……」

そういうと指先から出る炎を消し、両手の掌の上に直径10cmセンチメートル程度の水球と1つずつ作り出した。
そしてそれを自在に操り、宙を舞わせる。

「ちょっとひまちゃんお願いね」

桜の言葉を聞き、蓮は向日葵の肩を持ち、離れない様に足元に寄せた。

次の瞬間、桜は水球を増やした。
そして、それらを鳥や魚など様々な動物の形に変え、宙を舞わせたのだ。

「わぁ、きれぇ」

桜の魔法に向日葵が声を漏らす。

蓮は魔法と聞いて、攻撃的な魔法しか想像をしていなかった。
しかし、使い方次第では、人を魅了する素敵な使い方もできるようだ。

「魔法って凄いですね」

蓮がそう言いながらユグドラシルを見ると、ユグドラシルは唖然とした表情を浮かべていた。
まさに、開いた口が塞がっていないかった。

「ユ、ユグドラシルさん?」

「す、すみません!あ、あまりも凄くて……」

蓮に情けない表情を見られ、恥ずかしさを誤魔化しながら慌てるユグドラシル。

精霊で魔法が上手く、優しくて美人で博識で巨乳という、この世の全てを詰め込んだようなユグドラシル。
可愛い一面があったのだと、蓮は和んだ。

「むぅ……」

バシャッ!

「冷たっ!何するんだよ!?」

「知らない!」

ユグドラシルに鼻の下を伸ばす蓮を見て、桜は宙を泳がせていた魚型の水の塊を蓮の顔にぶつけた。
拭くまでびしょびしょだ。

なんだかご機嫌斜めのようだが、蓮に理由は分からなかった。

「ほんとに……。蓮兄れんにぃデレデレしすぎ」

「デ、デレデレなんてしてないだろ!?」

蓮が否定するも全く声は届かない。
蓮も内心ではデレデレしていたことを自覚しているため、説得力は皆無だ。

桜は『まったくもう……』と言いながら、暖かい風を発生させ、蓮の髪や服を乾かした。

「ありが……と……う」

無意識に礼を言いかけ、そして徐々に気が付いた。

桜が当たり前の様に風魔法を使用している事に。

「だ、だからなんでできるんだ?」

「いやぁ、それがなんか思ったらその通りにできちゃうのよね」

蓮の驚きに桜は笑顔で答えた。
異世界に来たのだ。
蓮だって魔法で無双したかった。

愛する妹なため、負の感情は皆無だが、ただただ羨ましく思った。

「みてみてぇ!ひぃちゃんも!」

サァー。

向日葵が傍に会った輝き草かがやきそうに水を上げている。
優しいシャワーのような水だ。

もちろん手に如雨露じょうろなどない。

「ひまちゃん!?うそだろ!?」

「すごぉい!ひまちゃん天才!」

蓮の驚きと、桜の褒め言葉に向日葵はさっと水を止め、腰に手を当ててふんぞり返って見せた。

「よーし。負けれられないなぁ」

蓮は意気込み、想像を膨らませ、天に両手を向けた。

イメージは噴水。
空に向かっての勢いよく吹き出る大量の水。

ぴゅるるる……。

しかし、実際に出たのは水道よりも弱々しく、細い水だ。
天に立ち込めるどころから、発動してそのまま重力通りに蓮の頭に降ってきた。

「ぷっ……。れ、蓮兄れんにぃ何してるの……クス」

「にぃに、どうしたの?」

ただただ自分で水をかぶっただけの蓮を見て、必死で笑いをこらえる桜。
良く分からないことが起きたため、純粋無垢な質問という刃で斬りつけてしまう向日葵。

「は、発動したので成功は成功ですね」

ユグドラシルが精一杯のフォローをする。

「乾かしたばかりなのにぃ」

桜はそう言いながら、何やら嬉しそうに蓮の髪や服を、再び風を発生させて乾かした。

そして、分かったことが1つある。
恐らく魔法の発動において、知力や魔力、想像力よりも、属性欄のレベルの高さが重要だ。

蓮は知力も魔力も共に500。
向日葵は共に350だった。

しかし、属性欄に書かれていたレベルは、蓮は水Lv2で向日葵は水Lv5。

ユグドラシルの言う様に、属性欄に書かれているレベルが高いほど、その属性を上手く扱えるという事を身をもって知った。

「ひぃちゃん、おやつたべたいぃ」

蓮がステータスに関して考察をしていると向日葵に服を引かれた。
少し小腹が空いたようだ。

「では、ちょうど良いので少し休憩しましょう」

ユグドラシルはそう言うと、白い布を地面に敷いた。
そしてその上に木の皿を置き、昼寝をする前と同じように、世界樹の実を盛り始めた。

自然に囲まれて、まるでピクニックのようだ。

「いっただっきまーす!」

「こらこら、まだでしょ」

桜はそう言うと向日葵の量手を握り、光を発した。

「こ、これって……」

「え、ええ……。浄化クリーンですね……」

桜は本当に自然体で、あたかも元々使っていたかのように魔法を使いこなしている。

驚かされてばかりだ。

自分も頑張ろう。

そう思った瞬間。

後ろから低くい声がした。

「ふん。相も変わらず贅沢な食事じゃのう」

驚きその声の方向を見ると、そこには……。

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