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異世界生活
女神の加護で成長チート②
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日が暮れ、異世界に来て初めての夜を迎える。
ユグドラシルの用意した大きな石の焼き台で、ぶつ切りにした巨大な鳥の肉を焼く。
調味料などが無いため、ただ焼くだけ。
「ウマドリに味付けなど要らぬ」
美味い鳥型の魔物だからウマドリなのか。
それとも少し馬顔の鳥型の魔物だからウマドリなのか。
ジュゥ……。
真相は定かではない。
しかし、焼く音と匂いで、焼くだけで充分にうまいという事だけはわかった。
焼けば焼くほどに、ウマドリの肉から脂が出る。
ジュゥ……。
ユグドラシルの用意した木製の大きなコテでひっくり返す。
もう片面はしっかりと焼けている。
リルはまだかまだかと尻尾を振り、涎を滝の様に流しながら待っている。
「お!に!く!お!に!く!」
向日葵は早くも席につき、木製のナイフとフォークを手に持ち歌っている。
焼けた肉を桜が木の皿に盛り、蓮が配膳する。
つまみ食いしそうになるほど良いに匂いだ。
「はーい。お待たせ」
「それでは!おててをあわせてぇ!いただいまーす!」
準備が終わり、全員が席に付くと同時にかかる向日葵の号令。
「っ!?」
「うまうまぁ!」
口に入れた瞬間に肉汁と鶏肉と炭火の様な香りが広がる。
とてつもなく美味しく、フォークが止まらない。
普段なら向日葵に『うまうまじゃなくて、美味しいでしょ』と言葉使いを注意するが、あまりの美味さに忘れていた。
ただ焼いただけでこれほどの美味さ。
もし調味料を手に入れれば、頬がとろけるのではないだろうか。
蓮達はそんな話をしながら、異世界に来て初めての肉に感動した。
「これほどうまいのは初めてじゃ!」
今まで狩ったウマドリをそのまま食していたリルは、血抜きをするだけでこれほど臭みが消え、味わいが増すのかと衝撃を受けた。
よほどお腹が空いていたのか、美味さに衝撃を受け過ぎたのか、リルは1分もしないうちに平らげてしまった。
「も、もう無いのか……?」
残念そうに桜を見つめるリル。
その眼差しに負け、食事の手を止めて、アイテムボックスから肉を取り出した。
石の焼き台に乗せ、表面を火魔法で炙りながら時短して焼く。
魔法のそういう使い方を思い付き、自然と行動に移せる所が、才能の怖さだ。
焼き上がった肉をリルの皿に盛ると、再びガツガツと食べ始めた。
「リル。ありがとうだよ」
「む、むぅ。感謝する」
「はい。召し上がれ」
食事の手を止めてまで用意してくれたものをお礼も言わずに食べ出すリルに、蓮が感謝を促す。
リルは貫禄のある話し方だが、素直で聞き入れる耳を持っている。
プライドや恥が邪魔して、感謝や謝罪ができないような盆暗ではないと安心した。
「リルはフェンリルの王様って言ってたけど、フェンリルって群れで生活するの?」
「いや、群れることはない」
そもそもフェンリルは世界に数えるほどしかおらず、リル自身、同族に会ったのは100年以上も前だそうだ。
群れない習性から、集団生活をするのは、子が成長するまでのわずか数年だけ。
一度に生まれるのも1体か2体程度。
集団生活をしたことが無いため、気持ちを伝える習慣が欠けているようだ。
「群れないならどうやって王になったんだ?」
「称号を賜ったのだ」
称号。
偉業を成し遂げ、神が認めた者にだけ与えられるもの。
人々の間で与えられる社会的な地位や役職とは訳が違い、加護を授かる事に近いそうだ。
「数百年前じゃが古代竜と戦い、打ち破った時に授かったのだ」
「へぇ、そうなん……だ。古代竜!?」
自然な流れで言うため、一瞬納得しかけてしまった。
「その戦いの時にできたのが、竜の山の麓にある巨大な渓谷です」
そうユグドラシルが補足する。
両者の争いは、想像を絶するほどの規模で、植物界への影響も大きかったため、よく覚えているそうだ。
「両者の強力な魔素の影響もあって、希少な鉱石が多いんですよ」
ゲームや漫画で聞いたことのあるミスリルやアダマンタイトなど、希少で高価な鉱石が多くあるらしい。
それらは長い年月をかけて、石が大量の魔素を蓄積して変化して言ったものだそうだ。
そのため、魔素濃度の高い所では、希少な鉱石が多く採掘されるらしい。
「リルってやっぱ凄い奴だったんだね」
現れた時と戦っている時とは打って変わって、食いしん坊キャラになりかけていたが、世界規模の絶対強者だったようだ。
「人の街に行く前には鉱石を取りくか。あれは高値で売れるはずじゃ」
表情は凛々しく、博識感を出しているが、流れ出ている涎と揺れる尻尾でわかる。
ウマドリの肉を口にした時、蓮達がしていた『調味料があればどれほど美味くなるのか』という会話を聞いていたのだろう。
調味料を手に入れ、さらに美味い肉を食うために、竜の山の麓まで行こうというのか。
強者は強者だが、食いしん坊キャラは今後定着していきそうだ。
しかし、リルの言葉を一理ある。
今は調味料が無いため用意しなかったが、ユグドラシルに頼めば野菜は手に入る。
リルの獲ってくる魔物の肉に、ユグドラシルの作る野菜や果物。
それに調味料と調理菊があれば鬼に金棒。
様々な料理が作れるし、栄養が偏ることもない。
向日葵の今後の食育を考えても、幅の広い料理は必要不可欠だ。
人の街に行く前に収入源を確保する必要はありそうだ。
話しながら肉と果実を食い、腹は満たされた。
「にぃに。ねむいぃ」
向日葵は疲れたようで、満腹と同時に眠くななったようだ。
ごちそうさまと、桜へのお礼を促し寝かせることにした。
「ふむ。ヒマワリや。こっちに来るが良い」
リルは面倒見が良いのか、向日葵の愛嬌Lv10が効いているのか、伏している傍に向日葵を呼び、寝かせた。
リルの体毛をベッドに気持ち良さそうな表情を浮かべすぐに寝てしまった。
「あ、歯磨き」
桜はそういうと向日葵の頬に手を当てて浄化を使用した。
向日葵は昔から、両親か兄妹が傍に居なければ寝れなかった。
リルにくるまれながら気持ち良く寝る様子を見て安心する。
異世界に来て初めての夜。
不安で眠れない事も想定していたが、大丈夫そうだ。
ユグドラシルはリルの優しい姿を見て『あのフェンリルの王が……』と微笑ましく見ている。
その視線に気が付いたリルは、誤魔化すために咳ばらいをしながらステータスボードの確認を促した。
ユグドラシルの用意した大きな石の焼き台で、ぶつ切りにした巨大な鳥の肉を焼く。
調味料などが無いため、ただ焼くだけ。
「ウマドリに味付けなど要らぬ」
美味い鳥型の魔物だからウマドリなのか。
それとも少し馬顔の鳥型の魔物だからウマドリなのか。
ジュゥ……。
真相は定かではない。
しかし、焼く音と匂いで、焼くだけで充分にうまいという事だけはわかった。
焼けば焼くほどに、ウマドリの肉から脂が出る。
ジュゥ……。
ユグドラシルの用意した木製の大きなコテでひっくり返す。
もう片面はしっかりと焼けている。
リルはまだかまだかと尻尾を振り、涎を滝の様に流しながら待っている。
「お!に!く!お!に!く!」
向日葵は早くも席につき、木製のナイフとフォークを手に持ち歌っている。
焼けた肉を桜が木の皿に盛り、蓮が配膳する。
つまみ食いしそうになるほど良いに匂いだ。
「はーい。お待たせ」
「それでは!おててをあわせてぇ!いただいまーす!」
準備が終わり、全員が席に付くと同時にかかる向日葵の号令。
「っ!?」
「うまうまぁ!」
口に入れた瞬間に肉汁と鶏肉と炭火の様な香りが広がる。
とてつもなく美味しく、フォークが止まらない。
普段なら向日葵に『うまうまじゃなくて、美味しいでしょ』と言葉使いを注意するが、あまりの美味さに忘れていた。
ただ焼いただけでこれほどの美味さ。
もし調味料を手に入れれば、頬がとろけるのではないだろうか。
蓮達はそんな話をしながら、異世界に来て初めての肉に感動した。
「これほどうまいのは初めてじゃ!」
今まで狩ったウマドリをそのまま食していたリルは、血抜きをするだけでこれほど臭みが消え、味わいが増すのかと衝撃を受けた。
よほどお腹が空いていたのか、美味さに衝撃を受け過ぎたのか、リルは1分もしないうちに平らげてしまった。
「も、もう無いのか……?」
残念そうに桜を見つめるリル。
その眼差しに負け、食事の手を止めて、アイテムボックスから肉を取り出した。
石の焼き台に乗せ、表面を火魔法で炙りながら時短して焼く。
魔法のそういう使い方を思い付き、自然と行動に移せる所が、才能の怖さだ。
焼き上がった肉をリルの皿に盛ると、再びガツガツと食べ始めた。
「リル。ありがとうだよ」
「む、むぅ。感謝する」
「はい。召し上がれ」
食事の手を止めてまで用意してくれたものをお礼も言わずに食べ出すリルに、蓮が感謝を促す。
リルは貫禄のある話し方だが、素直で聞き入れる耳を持っている。
プライドや恥が邪魔して、感謝や謝罪ができないような盆暗ではないと安心した。
「リルはフェンリルの王様って言ってたけど、フェンリルって群れで生活するの?」
「いや、群れることはない」
そもそもフェンリルは世界に数えるほどしかおらず、リル自身、同族に会ったのは100年以上も前だそうだ。
群れない習性から、集団生活をするのは、子が成長するまでのわずか数年だけ。
一度に生まれるのも1体か2体程度。
集団生活をしたことが無いため、気持ちを伝える習慣が欠けているようだ。
「群れないならどうやって王になったんだ?」
「称号を賜ったのだ」
称号。
偉業を成し遂げ、神が認めた者にだけ与えられるもの。
人々の間で与えられる社会的な地位や役職とは訳が違い、加護を授かる事に近いそうだ。
「数百年前じゃが古代竜と戦い、打ち破った時に授かったのだ」
「へぇ、そうなん……だ。古代竜!?」
自然な流れで言うため、一瞬納得しかけてしまった。
「その戦いの時にできたのが、竜の山の麓にある巨大な渓谷です」
そうユグドラシルが補足する。
両者の争いは、想像を絶するほどの規模で、植物界への影響も大きかったため、よく覚えているそうだ。
「両者の強力な魔素の影響もあって、希少な鉱石が多いんですよ」
ゲームや漫画で聞いたことのあるミスリルやアダマンタイトなど、希少で高価な鉱石が多くあるらしい。
それらは長い年月をかけて、石が大量の魔素を蓄積して変化して言ったものだそうだ。
そのため、魔素濃度の高い所では、希少な鉱石が多く採掘されるらしい。
「リルってやっぱ凄い奴だったんだね」
現れた時と戦っている時とは打って変わって、食いしん坊キャラになりかけていたが、世界規模の絶対強者だったようだ。
「人の街に行く前には鉱石を取りくか。あれは高値で売れるはずじゃ」
表情は凛々しく、博識感を出しているが、流れ出ている涎と揺れる尻尾でわかる。
ウマドリの肉を口にした時、蓮達がしていた『調味料があればどれほど美味くなるのか』という会話を聞いていたのだろう。
調味料を手に入れ、さらに美味い肉を食うために、竜の山の麓まで行こうというのか。
強者は強者だが、食いしん坊キャラは今後定着していきそうだ。
しかし、リルの言葉を一理ある。
今は調味料が無いため用意しなかったが、ユグドラシルに頼めば野菜は手に入る。
リルの獲ってくる魔物の肉に、ユグドラシルの作る野菜や果物。
それに調味料と調理菊があれば鬼に金棒。
様々な料理が作れるし、栄養が偏ることもない。
向日葵の今後の食育を考えても、幅の広い料理は必要不可欠だ。
人の街に行く前に収入源を確保する必要はありそうだ。
話しながら肉と果実を食い、腹は満たされた。
「にぃに。ねむいぃ」
向日葵は疲れたようで、満腹と同時に眠くななったようだ。
ごちそうさまと、桜へのお礼を促し寝かせることにした。
「ふむ。ヒマワリや。こっちに来るが良い」
リルは面倒見が良いのか、向日葵の愛嬌Lv10が効いているのか、伏している傍に向日葵を呼び、寝かせた。
リルの体毛をベッドに気持ち良さそうな表情を浮かべすぐに寝てしまった。
「あ、歯磨き」
桜はそういうと向日葵の頬に手を当てて浄化を使用した。
向日葵は昔から、両親か兄妹が傍に居なければ寝れなかった。
リルにくるまれながら気持ち良く寝る様子を見て安心する。
異世界に来て初めての夜。
不安で眠れない事も想定していたが、大丈夫そうだ。
ユグドラシルはリルの優しい姿を見て『あのフェンリルの王が……』と微笑ましく見ている。
その視線に気が付いたリルは、誤魔化すために咳ばらいをしながらステータスボードの確認を促した。
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