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異世界生活:王都レグナム編
祝典②
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それぞれが王に紹介され、蓮たちは大歓声に包まれた。
この後は蓮の挨拶。
そして、平民地区を一周回るだけ。
挨拶さえ乗り越えれば、後は観光と同じ。
ここさえ乗り越えれば……。
「此度の偉業を成し遂げたレン・ミツルギ殿じゃぁ!」
蓮がそんなことを思っていると、王から盛大な紹介を受け、蓮は一歩前に出た。
「えっと……あっ」
考えてきた短い挨拶の言葉。
蓮が言葉にしようとした時、民衆の中にフェン、ロー、メイの3人の姿を目にした。
わざわざグリーデンから駆けつけてくれたのだろう。
この人混みの中で、かなり前の方に居ることから、相当朝早くから場所取りをしてくれたことが伺え、蓮は嬉しくなり笑みをこぼした。
「考えてきた建前の挨拶なんてどうでもいいや」
蓮は小さく言葉を漏らした。
せっかくの異世界。
創造神エマーテルも言っていた。
自由に生きて良いと……。
「皆さん。お集まり頂きありがとうございます。ご紹介に預かりましたレン・ミツルギと申します」
まずは挨拶。
蓮は話したい事を瞬時にまとめ、伝えたい言葉に向け話し始めた。
闇病のマンティコアは一人で打ち取ったこと。
傀儡のゴブリンロードは向日葵の従魔のリルが圧倒し、とどめを刺しただけだということ。
そして、殺奪のゴブリンキングは白狼の爪牙という冒険者パーティとともに倒したことを話した。
「彼らは優れた身体能力でゴブリンジェネラルを打ち破り、僕に道を作ってくれました。おかげで僕は殺奪のゴブリンキング討伐に集中することができました。彼らにも盛大な拍手をお願いします!」
蓮が手を広げた先に居たフェン達に注目が集まる。
しかし、拍手をするものは数少ない。
一部の獣人たちが小さく拍手をしているだけだ。
蓮の想定以上に差別は酷く、この状況でも表面状の拍手ら送られないとは思ってもいなかった。
パチパチパチ。
その時、蓮の斜め後ろから2つの拍手が聞こえてきた。
ウォルスタッド王とソフィリア王女だ。
「素晴らしい!白狼の爪牙の功績を称え、褒美として白金貨を与えよう!」
王は冒険者ギルド経由で特別報酬を与えることを告げた。
王の言葉に続き、ソフィリアは拍手を強めた。
それに続く四魔帝と騎士団長の拍手。
次第に拍手は大きくなり、広場を包み込んだ。
「おめぇら!獣人の誇りだぜ!」
「俺の店に来い!飯食わしてやるぜ!」
「ねぇ。あの2人かっこいいと思わない?」
獣人たちは拍手に乗せて歓声を送る。
最後の言葉が聞こえたのかフェンは赤く光るほどに赤面した。
恥ずかしがるフェンを肘で突いていると『あの子もかなり可愛いな。俺タイプかも』という言葉が聞こえ、メイは赤面。
逆にフェンは怒りに満ち溢れ声のした方向を睨んだ。
拍手が少しずつ収まる頃合いを見定め、蓮は口を開いた。
「僕たち兄妹は異界人です。なのでこの世界の常識は分かりません。だからこそ、この世界の常識に違和感を覚えることがあります。種族関係なく、少しで良いので想像してみてください……」
民衆の視線が再び蓮に向き、蓮が何を言うのかと耳が傾く。
「もし、愛する人との間に生まれた子供が少し体毛が濃いだけで迫害を受けたらどう思いますか?もし、生まれた子供の体の一部の形が違うだけで、いじめられていたらどう思いますか?」
蓮は語り掛けるように言葉にした。
「少しで良いので想像してみてください。もし、この世から魔法がなくなったら?明日から魔法が使えなくなったら?今偉そうにしている人たちは何に縋って生きるんですか?」
蓮の言葉を聞き、衝撃が走る。
魔法があることは当たり前。
当たり前が無くなることなど想像もしたことがない。
魔法がなくなれば、数以外に獣人に勝れるものはない。
言われて初めて気がつく真実にざわめきが生まれるた。
中には自身の差別行動を思い返し報復を想像したのか、慄きの言葉や表情が生まれた。
恐れてほしいわけではない。
あと少し。
伝えたい事はその少し先にある。
蓮はグリーデンでグランと話したことを思い出しながら、強い口調で言葉にした。
「人間性に、種族や外見、能力の高さは関係ありません。人間性を現すのは言動です。正しい選択と正しい言動を積み重ねて、誇れる人生を送りましょう」
これから妹たちが生きる世界が、生活する国が、少しでも問題の少ない場所になってほしい。
この世界でできた友人たちが、少しでもストレスなく暮らせるようになってほしい。
そんな願いからの言葉だった。
獣人や心を動かされた者からは支持の言葉が飛び、そうでない者からも拍手が送られた。
その大半は、蓮の後ろで拍手を続けるウォルスタッド王やソフィリア王女の影響。
分かってはいるが、少しでも届いてほしい。
そう思いながら蓮は下がり、元の位置に戻った。
「良い言葉じゃった」
王はすれ違いざまに蓮に賛辞を贈り、一歩前に出た。
そして王は祝典開催を言葉で締めくくり、フェリクスへ先導の指示を出した。
王が席に着くと同時に、乗り物が動き始める。
「ほら。手振ってるよ」
きょろきょろと周囲を見ます桜に、蓮が声をかけた。
メイが一生懸命に手を振っている。
桜と向日葵も手を振り返す様子を見てソフィリアが『機会があればぜひ紹介してください』と口にし、桜は頷き答えた。
平民地区の本通りに関しては大きな貧富の差は感じられず、安心した。
向日葵に社会の嫌な一面を見せずに済んだからだ。
メイたちが見えなくなってからは桜も向日葵も、ソフィリアの真似をしながら上品に手を振っている。
特に向日葵は嬉しそうにニヤニヤと頬を緩めている。
機嫌がよく何よりだ。
一周回り分かったことは、2つ。
貴族地区と平民地区を繋ぐ門の傍にだけ観覧席が儲けられていた。
つまり、貴族はその程度の人数しかいないということ。
そしてもう一つは、女性の怖さだ。
途中に聞こえた『英雄様ぁ!かっこいいぃ!』という声。
蓮が視線を向けると黄色い歓声を上げていたのは先日蓮を新兵と話していた女性だ。
同一人物と気付いていないのだろうか。
服装や髪形を少し変えているだけで、他は何も変わっていない。
強い言うなら乗り物に乗っているだけだ。
蓮が視線を向けていることに気が付き『ねぇ!こっち見てるよ!ひょっとしてお近づきになるんじゃない!?』とはしゃいでいた。
なんとも変わり身の早い女性だ。
蓮は恋人を探す際には、慎重に選ぼうと決意した。
蓮の思いを風に流すように、乗り物は進み、城へと戻った。
この後は蓮の挨拶。
そして、平民地区を一周回るだけ。
挨拶さえ乗り越えれば、後は観光と同じ。
ここさえ乗り越えれば……。
「此度の偉業を成し遂げたレン・ミツルギ殿じゃぁ!」
蓮がそんなことを思っていると、王から盛大な紹介を受け、蓮は一歩前に出た。
「えっと……あっ」
考えてきた短い挨拶の言葉。
蓮が言葉にしようとした時、民衆の中にフェン、ロー、メイの3人の姿を目にした。
わざわざグリーデンから駆けつけてくれたのだろう。
この人混みの中で、かなり前の方に居ることから、相当朝早くから場所取りをしてくれたことが伺え、蓮は嬉しくなり笑みをこぼした。
「考えてきた建前の挨拶なんてどうでもいいや」
蓮は小さく言葉を漏らした。
せっかくの異世界。
創造神エマーテルも言っていた。
自由に生きて良いと……。
「皆さん。お集まり頂きありがとうございます。ご紹介に預かりましたレン・ミツルギと申します」
まずは挨拶。
蓮は話したい事を瞬時にまとめ、伝えたい言葉に向け話し始めた。
闇病のマンティコアは一人で打ち取ったこと。
傀儡のゴブリンロードは向日葵の従魔のリルが圧倒し、とどめを刺しただけだということ。
そして、殺奪のゴブリンキングは白狼の爪牙という冒険者パーティとともに倒したことを話した。
「彼らは優れた身体能力でゴブリンジェネラルを打ち破り、僕に道を作ってくれました。おかげで僕は殺奪のゴブリンキング討伐に集中することができました。彼らにも盛大な拍手をお願いします!」
蓮が手を広げた先に居たフェン達に注目が集まる。
しかし、拍手をするものは数少ない。
一部の獣人たちが小さく拍手をしているだけだ。
蓮の想定以上に差別は酷く、この状況でも表面状の拍手ら送られないとは思ってもいなかった。
パチパチパチ。
その時、蓮の斜め後ろから2つの拍手が聞こえてきた。
ウォルスタッド王とソフィリア王女だ。
「素晴らしい!白狼の爪牙の功績を称え、褒美として白金貨を与えよう!」
王は冒険者ギルド経由で特別報酬を与えることを告げた。
王の言葉に続き、ソフィリアは拍手を強めた。
それに続く四魔帝と騎士団長の拍手。
次第に拍手は大きくなり、広場を包み込んだ。
「おめぇら!獣人の誇りだぜ!」
「俺の店に来い!飯食わしてやるぜ!」
「ねぇ。あの2人かっこいいと思わない?」
獣人たちは拍手に乗せて歓声を送る。
最後の言葉が聞こえたのかフェンは赤く光るほどに赤面した。
恥ずかしがるフェンを肘で突いていると『あの子もかなり可愛いな。俺タイプかも』という言葉が聞こえ、メイは赤面。
逆にフェンは怒りに満ち溢れ声のした方向を睨んだ。
拍手が少しずつ収まる頃合いを見定め、蓮は口を開いた。
「僕たち兄妹は異界人です。なのでこの世界の常識は分かりません。だからこそ、この世界の常識に違和感を覚えることがあります。種族関係なく、少しで良いので想像してみてください……」
民衆の視線が再び蓮に向き、蓮が何を言うのかと耳が傾く。
「もし、愛する人との間に生まれた子供が少し体毛が濃いだけで迫害を受けたらどう思いますか?もし、生まれた子供の体の一部の形が違うだけで、いじめられていたらどう思いますか?」
蓮は語り掛けるように言葉にした。
「少しで良いので想像してみてください。もし、この世から魔法がなくなったら?明日から魔法が使えなくなったら?今偉そうにしている人たちは何に縋って生きるんですか?」
蓮の言葉を聞き、衝撃が走る。
魔法があることは当たり前。
当たり前が無くなることなど想像もしたことがない。
魔法がなくなれば、数以外に獣人に勝れるものはない。
言われて初めて気がつく真実にざわめきが生まれるた。
中には自身の差別行動を思い返し報復を想像したのか、慄きの言葉や表情が生まれた。
恐れてほしいわけではない。
あと少し。
伝えたい事はその少し先にある。
蓮はグリーデンでグランと話したことを思い出しながら、強い口調で言葉にした。
「人間性に、種族や外見、能力の高さは関係ありません。人間性を現すのは言動です。正しい選択と正しい言動を積み重ねて、誇れる人生を送りましょう」
これから妹たちが生きる世界が、生活する国が、少しでも問題の少ない場所になってほしい。
この世界でできた友人たちが、少しでもストレスなく暮らせるようになってほしい。
そんな願いからの言葉だった。
獣人や心を動かされた者からは支持の言葉が飛び、そうでない者からも拍手が送られた。
その大半は、蓮の後ろで拍手を続けるウォルスタッド王やソフィリア王女の影響。
分かってはいるが、少しでも届いてほしい。
そう思いながら蓮は下がり、元の位置に戻った。
「良い言葉じゃった」
王はすれ違いざまに蓮に賛辞を贈り、一歩前に出た。
そして王は祝典開催を言葉で締めくくり、フェリクスへ先導の指示を出した。
王が席に着くと同時に、乗り物が動き始める。
「ほら。手振ってるよ」
きょろきょろと周囲を見ます桜に、蓮が声をかけた。
メイが一生懸命に手を振っている。
桜と向日葵も手を振り返す様子を見てソフィリアが『機会があればぜひ紹介してください』と口にし、桜は頷き答えた。
平民地区の本通りに関しては大きな貧富の差は感じられず、安心した。
向日葵に社会の嫌な一面を見せずに済んだからだ。
メイたちが見えなくなってからは桜も向日葵も、ソフィリアの真似をしながら上品に手を振っている。
特に向日葵は嬉しそうにニヤニヤと頬を緩めている。
機嫌がよく何よりだ。
一周回り分かったことは、2つ。
貴族地区と平民地区を繋ぐ門の傍にだけ観覧席が儲けられていた。
つまり、貴族はその程度の人数しかいないということ。
そしてもう一つは、女性の怖さだ。
途中に聞こえた『英雄様ぁ!かっこいいぃ!』という声。
蓮が視線を向けると黄色い歓声を上げていたのは先日蓮を新兵と話していた女性だ。
同一人物と気付いていないのだろうか。
服装や髪形を少し変えているだけで、他は何も変わっていない。
強い言うなら乗り物に乗っているだけだ。
蓮が視線を向けていることに気が付き『ねぇ!こっち見てるよ!ひょっとしてお近づきになるんじゃない!?』とはしゃいでいた。
なんとも変わり身の早い女性だ。
蓮は恋人を探す際には、慎重に選ぼうと決意した。
蓮の思いを風に流すように、乗り物は進み、城へと戻った。
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