異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー

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世界大会編

因縁

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食事を終え、浄化で匂いを消して、しばしの食休み。
この世界に来る前に、犬はネギ属を食べると嘔吐など中毒症状を引き起こすと聞いたことがあったため、白狼族の3人が体調を崩さない心配したが杞憂に終わった。

「それで?話したいことって?」

蓮の言葉を思い出し、フェンが切り出した。
フェンの言葉を聞き蓮は桜を見た。

「メ、メイちゃん。こ、今度うちに遊びに来ない?」

桜は深呼吸をしたのち、勇気を振り絞って言葉にした。
桜の言葉を聞いて、メイは驚きで数舜止まり、すぐに口を開いた。

「い、いいの!?お友達の家に遊びに行くなんて初めてだよぉ!」

桜と同年代だが、育った環境が全く異なることを感じさせられる言葉。
冒険者は他のパーティとの交流も少なく、パーティメンバー以外との交流も少ないのだろう。
メイの反応を見て、桜が断られたり嫌がられたりするのではないかと不安を抱いていたことを説明すると、メイは全くそんなことはないと喜びながら否定した。

「もちろんフェンさんたちも。嫌でなければ是非」

メイ同様に、フェンたちも驚きで少しの間、言葉を失った。
蓮はその表情を見て、小熊のしっぽで食事の同席を促したときのことを思い出した。

「ああ。行かせてもらおう」

「うん。せっかくのお誘いだからね」

フェンは鼻をこすり照れを隠し、ローは爽やかに笑顔で答えた。
蓮にとってもこの世界で数少ない友人と呼べる存在。

「湖の畔にある綺麗な場所なので、息抜きにはちょうど良いと思います」

拠点がユグドラシルの管理する森の中にあること。
強力な結界に守られている場所のため安全であること。
湖で釣りをしたり、蓮たちの世界の遊びをしたりする予定であることを説明した。

「そいつは楽しみだな。しかし、なんでまた急に誘ってくれたんだ?」

「実は……」

桜がソフィリア王女と友人関係になったこと。
四魔帝テトラゴーノンの一角である光水帝のアクアを同行させるのを条件に、家に遊びに来ることになったこと。
その際に、蓮は世界大会に向けてフェリクス騎士団長を鍛えること。
蓮はフェリクスが自身に似た生い立ちで親近感を抱いていることや、誠実な人間であることから助力することになったことなど経緯を説明した。

「ってことは、ウォルフの野郎は来ねぇのか?」

「ええ。3人だけです」

蓮の話を聞いて、フェンはローと顔を見合わせたのちに言葉にした。
険しい表情と棘のある口調。
蓮は祝典時に、フェンが睨むようにウォルフの方を見ていたことを思い出した。

「フェリクスさんだけは先ほど話した理由から特別にって感じですね。他の方は城内で少し訓練をつける程度です」

城内で訓練を行う。
その言葉を聞き、フェンの顔色が変わった。

「レン。その訓練ってのを俺にもつけてくれねぇか?」

決意と情熱の灯った真っ直ぐな瞳。
数少ない友人たっての依頼。
断るわけにはいかない。
しかし、理由は知っておきたい。

「わかりました。詳しく聞きましょうか」

蓮は了承した上で、フェンに尋ねた。

「白狼族と銀狼族は昔から不仲なんだ」

獣人は同種族の中でも、体毛の色によって呼び方が変わることがある。
狼人族で言えば、フェンたちは白い体毛の白狼族。
他には、黒い体毛の黒狼族や、白色と灰色の間の体毛がある銀狼族などがいる。

その中で、体毛の色での差別や争いは特になく、黒狼族の者と白狼族の者が結婚することもあるそうだ。
しかし、白狼族と銀狼族の間だけには、どちらがフェンリルの末裔なのかという論争が根深くあるそうだ。
どちらの種族もフェンリルに強い信仰心があり、自らの種族こそがフェンリルの本当の末裔であるという強い誇りを持っている。

「んで、あいつはこの大陸の銀狼族の頂点。白狼族で強いのは俺かローってわけだ」

フェンとローは一族の名誉を背負い、いつかウォルフに挑み、勝利し、自身らが世界大会に出て成果を上げ、白狼族こそがフェンリル族の末裔であることを証明したいと熱く語った。

フェンリルの中で、ドラコのように人化のスキルを使用するものが居て、人族との間に子が生まれたのか。
はたまた、フェンリルが人族の形に近づく変化を起こし、狼人族という種族が生まれたのか。
ルーツや真偽は定かではない。
そのため、どちらの種族が末裔なのかはわからない。
はたまた、どちらの種族も末裔ではないのかもしれない。

「難しい問題ですね。僕には種族間のことはわかりませんが、友人フェンさんたちが強くなりたいというのであれば力を貸します」

圧倒的な強さを誇るフェンリル。
その末裔は強いに決まっている。
じゃあ強い方が末裔だ。
そういった思考からくるのかもしれないが、蓮の考えでは、強さの証明と末裔の証明は直結しない。
元居た世界の言葉で言うのであればDNA鑑定をしてみなければわからない問題だからだ。
しかし、この発展途上の世界では、その技術も考え方も未発達。

種族間の問題を全て理解することはできないが、フェンたちが強くなれば、任務の成功率が上がる。
それはフェンたちの生存確率に直結する。

蓮は勝利後に銀狼族への迫害行為を行わないことを条件に要望に応じた。

フェンの話を聞き、桜はメイを見た。

「メイちゃんは人族とエルフ族のことは嫌い?」

「大っ嫌い。獣人差別もあるし、魔法が使えたり数が多いってだけで偉そうにしてのがムカつくんだよねぇ」

桜の言葉に、メイは嫌なことを思い出したような表情を浮かべながら答えた。

まだまだ根が深そうだ。
全てを取り除くことは難しいのだろう。
しかし、せめて桜や向日葵の周囲だけでも緩和させたい。

「実はソフィリア王女が、桜の友達メイちゃんの事を紹介してほしいと話してたんだ」

そして、嫌でなければ同じ日に家に招待をしようと考えていることを説明した。

「え!?王女様が!?なんで私を!?」

驚くメイに桜がソフィリアの生い立ちや人的環境を説明。
ソフィリアが差別意識もなく、同年代の同性の友人を求めていることを伝えると、意外にもメイはソフィリアとアクアであれば問題ないと口にした。

「現王は人格者で有名だしね。ソフィリア王女も、どの種族からも支持されているよ」

人族とエルフ族が嫌いだと話した後のため、メイの反応に驚く蓮たちに、ローが解説。
さらにアクアとフェリクスも獣人差別はせず、是々非々の思考の持ち主で定評があるらしい。
逆にゲイルはお手本のような嫌われ方をしているらしい。
城に戻ったら国民への態度を改めるように躾ける必要がありそうだ。

「あの時の対応も良かったしな」

蓮がゲイルへの対応を考えていると、フェンは祝典時に、ウォルスタッド王が特別報酬で白金貨を与えたことや、あの場で獣人に対してその行動を取ったこと自体を嬉しく感じていたようだ。

「じゃあ、王女たちと同じ日に招待するってことでいいですか?」

「ああ。俺らは問題ねぇよ。お前の言葉遣い以外はな」

蓮の言葉にフェンが返すと、メイとローは頷き同意を示した。
ユグドラシルにも指摘されて間もないため、距離を感じさせない言葉遣いは蓮の課題。
蓮は『わ、わかってはいるんだけどね。なかなか……』と意図的に崩しながら善処する旨を伝えた。
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