【完結】R18 狂惑者の殉愛

ユリーカ

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第二部

第22話

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 エデルは暗がりで目を覚ました。窓を見やれば朝陽は登り始めている。いつも目を覚まし厩舎に向かう時間。昨日まで行っていた習慣で体が自然と目を覚ました。だが今朝はその必要はない。側で柔らかい寝息を立てるエルーシアの顔を覗き込んだ。

 昨日教会で二人だけで将来を誓い合った。略式ではあったがエルーシアと神前で夫婦になれた。そして昨晩初夜を迎えた。

 自分のものが普通より大きい自覚はあった。痛い思いをして欲しくない。悩んだ挙句薬とワインを準備したが思いの外エルーシアの感度がよく、艶かしく悶える愛妻にエデルの理性のタガもあっさり外れてしまった。
 エルーシアの初めての 媚薬ラブマジック。強すぎては辛いだろうとエデルは一番弱いものを選んだ。自分も食べれば酷いことになる。そう脅してもエルーシアは動じない。一人だけ食べるのは不安なのだろう。問題ないと食べてみせる方がエルーシアも安心するだろうと自分も食べた。
 食べたのはたった一欠片。あれより強いものを過去何度か使って自分は耐性がついている。大したことにはならないだろうと踏んで、その上であそこまで催淫された。あれほどの快楽は今まで経験がなかった。
 エルーシアが辛くないようなるべく早くとは思った。が、暴走した挙句最短記録で果ててしまった。タフさには自信があったのに。体の相性がいいだけでは説明できない。あんなことは初めてでエデル自身、信じられず茫然となった。

 今思えば少量の媚薬と酒は催淫より自制を失くさせる効果があったのかもしれない。エルーシア相手では媚薬がなくとも同じ結果だったろう。エデルは苦く笑みをこぼした。

 初めてで辛い中で自分を受け入れてくれた妻に愛しさが込み上げる。媚薬を使ってもあんな小さな蜜口でこの巨根を全て咥え込むのは大変だったろう。堪えきれずエデルはそっと口づけた。エルーシアの裸の下腹部に優しく触れる。昨日確かにここに自分の子種が蒔かれた。いつか芽吹いてくれればいい。
 愛おしさが込み上げる。触れるだけ、少しだけのつもりだったが止められず、唇を割って深く口づければエルーシアが目を覚ました。

「‥‥エ‥デル?」
「すみません、起こしてしまいましたね」
「‥‥‥‥あ、えっと‥」

 昨晩は情事のあとに風呂に入り裸のまま抱き合って眠りについた。だからまだ二人は裸体のままだ。それを思い出したのか自分の体をシーツで隠しエルーシアは頬を染めて視線を外す。
 あんなに乱れて風呂まで入ってまだ恥じらいを見せる。そんな愛らしいエルーシアに昨晩の睦み合いを思い出しエデルの体が勝手に反応した、が、ぐっと堪える。体格差も体力差もある中で無理をさせたと自覚はある。エルーシアの体が心配だ。

「体はどう?」
「‥‥大丈夫、ちょっと痛いだけ。お薬がよかったみたい。ありがとう」
「いえ‥‥すみません、ずっと我慢してたから。色々がっつきすぎました」
「ううん、そんなことない。私もずっと抱いて欲しかったから。嬉しかったからいいの」

 そんな甘いことを言われてはますます血が滾ってしまう。その唇を強引に奪い舌を絡ませ合う。クチュクチュと唾液の混ざる音とエルーシアの鼻から抜ける甘い声に更に自身が硬くなった。微かに残った理性で淫欲に流されそうになる自分を無理矢理に宥め、せめてとエルーシアの額にキスを落とし抱きしめる。

「起こしてすみません。辛かったでしょう?体を休めてください」
「うん‥‥側にいてね‥‥」
「絶対離れません‥」

 やっと手に入れたこの温もりを手放すつもりはない。エルーシアの柔らかい体をぎゅっと抱きしめる。この体を抱いて眠れるとも思えないがその甘やかな香りを堪能するようにエデルは目を閉じた。



 エデルはその日もそのホテルを押さえた。やはり無理をさせたせいでエルーシアが動けなかった為もだが、エデルはそれを待っていた。
 エデルの膝の上で街の様子を見下ろしていたエルーシアの体がびくんと震えたことでそれとわかった。エデルの目が細くなる。

 やっと来たか———

 この街でもあまり見かけることはない黒塗りの豪奢な馬車。ホテルの前に停まった紋章のない見慣れたそれにエデルは目を細めた。そこから降り立った家令がホテルに入ってくる。
 慌てふためくエルーシアを宥め、決して部屋から出ないよう言い含めエデルは部屋を出て外から鍵をかける。何も起こらないのはわかっている。エルーシアは動けないが外に出ないように念のための施錠だ。
 一階の会議用の個室でオスカーはエデルを待っていた。この部屋は防音も備えている。密談にはもってこいだろう。この家令はそつがない。

 ここからさらに海まで出て船に乗る。その手続きに時間がかかりどうしても家令と落ちあう必要があった。急な作戦実行では仕方がない。
 捜索を逃れるため変装や迂回など多少の撹乱はした。逃走ルートは伝えなかったがこの家令なら追跡も造作ないだろう。それでも近隣の街のホテルにこの優秀な家令がたどり着くのが遅かった。何かあったのだろうか。

 オスカーが恭しく頭を下げる。

「ご結婚おめでとうございます」

 そこまでわかっている。やはり追跡はされていたか。
 エデルは顔を顰めた。

「遅かったな」
「申し訳ございません。対応に手間取りました」
「手間取った?船の手配でか?」
「ラルド様が亡くなられました」

 エデルは耳を疑いオスカーを見やった。目は瞠っていたことだろう。

「なんだって?どうして?」
「昨晩お嬢様の捜索に出られた際に落馬で」
「落馬?ラルドが‥‥?」

 遠目で見た限りだがラルドは馬の扱いには十分慣れていた。爵位持ちなら狩猟にも出るだろう。それが落馬?ありえなくもないが信じられない。

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