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第一部
第19話 ※
しおりを挟むエデルの逢瀬の夜の翌朝、エデルに貪られたエルーシアはベッドの中で過ごした。体はだるくとても動ける状況ではなかったが久しぶりの遠乗りで疲れたという言い訳もできた。感情剥き出しのエデルに愛された。それが嬉しくてベッドの中でエルーシアは頬を染め陶然と息を吐いた。
一方でラルドの昨日の行為の意味をエルーシアははかりかねていた。今までのお休みのキスからなぜ昨日豹変したのか。だがエデルにあの様な行為は兄妹ではダメだと言われた。義兄にきちんと伝えなくてはならない。その思いで夜ラルドがやってくるのをエルーシアはベッドの中で待ち構えていた。
エルーシアは扉が軋んで開いた音に目を覚ました。
義兄がやって来たのだろう。昨日のように流されてはいけない。はっきりそう伝えようと思って待っていたのにいつの間にか寝てしまっていたようだ。格子窓から外を見れば月が落ちて深夜になっているとわかった。ランプを灯した薄明るい寝室にガウンを纏ったラルドが入ってきた。
「眠っていたか?」
「お義兄さま‥」
笑顔でベッドに腰掛けるラルドにエルーシアは半身を起こした。勇気を振り絞って口を開く。
「あの‥昨日のようなことはもう‥」
具体的には言いたくない。言い濁せば察したラルドが笑みを深めた。
「昨日の?ああ、あれは兄妹のキスだ」
「それはないと聞きました」
「聞いた?誰から?」
笑顔のまま少し低くなったラルドの声にエルーシアは口籠り目を伏せる。エデルとは言えない。その様子にラルドはにこりと良い笑みを浮かべた。
「侍女からか?そうだな、普通の兄妹はあんなことはしないかもしれない。だが私たちは仲がいい。特に問題はないだろう?」
「いえ‥ですが私たちは‥」
「お前に触れると癒される。私を癒してくれないか?」
「ですが‥お義兄さまが‥元気になるのですか?」
「ああ、お前は愛らしいからな。キスも抱きしめることも昔からやっていただろう?私に触れられるのは嫌か?」
正直嫌ではなかった。エデルにはダメだと言われたが大好きな義兄を癒すのなら子供の時の様な抱擁程度なら許されるのではないだろうか。だがそれをエデルに知られてはいけない。きっとまた怒るだろう。
「‥‥でしたら、キスと抱き締めるだけなら‥‥」
目を伏せ口籠ればラルドに顎を掬い上げられた。
「十分だ。お前は私を慰めるため、悪いことではない。誰も私たちを咎められない。誰も‥神でさえも」
「でも兄妹では‥‥ンッ」
口籠るエルーシアを封じるようにラルドに口づけられた。柔らかい口づけで昨晩の淫行が体を駆け抜ける。その興奮の記憶でぶるりと体が震える。ラルドが目を細めエルーシアをベッドに押し倒した。
「おにぃ‥‥ぁん」
「気持ちよくなるだけだ。怖いことはない」
覆いかぶさるように抱きしめられ熱い吐息がエルーシアから溢れる。体の大きな義兄の優しい抱擁は子供の頃から大好きだ。だが深く口を貪られ肩を撫でた手が夜着越しに胸に触れると、くぐもった声がエルーシアの喉の奥から漏れた。
「ダメです‥そこは」
「触っているだけだ。昨日も触れた。子供の頃も触れていただろう?」
「ですがそこは‥やんッ」
特に感じやすい胸を弄られ変な声が出てしまい慌てて口を閉じる。義兄が子供の頃のように触れているだけなのにいやらしい声を出してしまった。
「昔に比べればここも随分大きくなったな。こんなに柔らかい」
「あ‥当たり前です‥もう私たちは」
「そう、大人だ。子供の頃のままではいられない」
「ふッンンッ」
義兄はただ触れているだけ。ダメなのに、感じてはいけないことなのに。キスで勃ち上がった乳首を官能を引き出すようにゆっくり淫らに撫でられる。義兄の手でエルーシアの思考はあっさり溶かされ快楽に流された。嫌悪感もなく昨晩と違いそれを止めるエデルはいない。
「ここが気持ちいいのかいシア?」
「‥ぁん‥きもちぃ‥」
「‥お前は素直で可愛いな」
「ゃん‥おにぃ‥さま‥」
荒々しく口づけられ言葉を封じられる。舌で口内の隅々を深く舐られ舌を絡められる。首のリボンがしゅるりと解かれ夜着のボタンが外される。そして夜着を大きく開かれ、白い肌に直にラルドの大きな手が這った。
「イヤッダメ‥」
胸を見られる。そう思い羞恥で体を隠そうとするエルーシアの手を抵抗と見たラルドが不満げに払い除け、その両手を左手でまとめてエルーシアの頭上に押さえ込んだ。力ではラルドに敵わない。
ラルドは自分のガウンの腰紐を解いてエルーシアのもがく両手を一つに縛りベッドの柱にくくりつけた。いつも優しい義兄に縛られた。その蛮行が信じられずエルーシアは目を見張り愕然とする。
「お義兄さま?!なんで‥」
もがいても縛られた手首は解けない。必死に手を抜こうと抗うエルーシアをラルドが嫣然と見下ろした。残っていた夜着のボタンをゆっくりと外しエルーシアの裸体を全て晒す。
「それは解けない。お前が隠そうとするから。私に隠し事はいけないよ。抵抗せず全部見せておくれ」
「隠し事じゃなくて‥いや‥見ないで‥‥」
「恥じらうか‥愛らしいな。そこにも癒される」
ランプの光の中で両腕を縛り上げられたエルーシアの裸体を眺めるラルドは目を細め陶然と囁いた。
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