【完結】R18 狂惑者の殉愛

ユリーカ

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第一部

第29話 ※

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「お前は父の血を継いでいる。父は望んでお前の母を妻にしたのだから。私はダメだ。お前だけだ、父の血を引いているのは。だから———」

 だからラルドの子を産んで家を継がせろ、と。
 義兄の真意を悟りエルーシアは目を瞠る。そうすればトレンメル家の血は絶えない。

「‥‥でも‥‥でも私はエデルが」
「エルーシア!」

 ラルドの叱責にびくりとエルーシアの身が震えた。

「あの男のことは忘れろ!なぜあれなんだ?私じゃなく‥‥ずっとお前のそばにいて守ったのは私なのになぜ‥‥」
「ごめん‥なさい‥でも‥」

 エデルが好きなの‥‥

 目元を覆う義兄の姿にエルーシアの胸が痛む。ずっと義兄だと思っていた。大好きな義兄、義兄の悲痛な様子がとても悲しい。
 エデルが好きなはずなのに何かがエルーシアをラルドに引き寄せようとする。エデルにダメだと叱られる前は当然のようにラルドのキスも愛撫も受け入れていた。エデルが好き。でも義兄への引力も無視できない。そしてある想いがエルーシアを貫いた。


 私は義兄のことも一人の男性として愛して‥‥?


 義兄が誰かと結婚すると考えただけで寂しくて切なくなった。体が触れ合った時に感じた背徳と罪悪感は兄妹という倫理観から。でも行為自体は嫌悪も恐怖もなくあの夜、淫楽に堕ちた。エデルにダメだと言われたのにラルドに強請られ口では拒絶しながらもラルドを受け入れていた。いけないことだと思うも愛されて求められて嬉しかった。ずっと好きだったと告白されて心が熱くなり身が震えた。
 義兄の言うことを疑わず信じたのはその方が都合が良かったから。義兄を慰め癒すという言い訳があれば、触れ合う理由があればそれでよかった。純潔を守ろうとしたのは恋人のエデルのため。ラルドという男との行為を厭ったわけではない。

 エデルを誰よりも愛している。
 ならもしエデルがいなかったら?
 もし義兄と血が繋がっていなかったら?
 いや、血の繋がりはもう関係ない。

 エルーシアの身が、心が震える。それは‥その感情は気が付いてはいけなかった。義兄だからと無意識に気がつかない様にしていた。そして自身の、理性が覆い隠した心の奥底の欲情に気がつき愕然とした。

 兄妹なのに‥ダメなのに‥‥
 私は義兄と結ばれることを望んでいる‥‥


「どうして‥私の何がいけない?なぜ私を拒むんだ?なぜ?」

 そこでラルドの身がびくりと震えた。エルーシアの目でもはっきりわかるほどにラルドは青ざめガクガクと震えていた。

「まさか‥だが‥ありえない‥」
「お義兄さま‥‥?」
「シア‥‥ダメだ。絶対に‥あの男だけは‥‥」
「おにいさ」
「こちらにおいで。お前は私のものだ」

 目を見開くラルドが歩み寄りエルーシアを抱き上げる。エルーシアの背後にはベッド。ラルドの急変とその意図にエルーシアが青ざめるもそのままベッドに押し倒された。

「お義兄さまッダメッやめてッ」
「どこまであの男に体を許した?!まさかもう?!」
「エデルは何もしてません!お義兄さま‥放して‥」
「お前は誰にも渡さない。私のものだ‥あれは‥あの男だけは絶対にダメだ!」

 必死に抵抗するも両手を頭の上に片手で拘束される。ラルドにのしかかられ暴れる足も抑え込まれた。エルーシアの抵抗を全て封じ馬乗りのラウドがうっとりエルーシアを見下ろし夜着の上から乳房を鷲掴みにする。ラルドに触れられ興奮から呼吸が浅く荒くなった。体がそれとわかって勝手に快楽に流される。エデルを愛している、でも義兄への想いを自覚したエルーシアの心と体はラルドにも惹かれ欲していた。

「あ‥放して‥お願い‥兄妹でこれ以上は‥」
「夜は逃げられ続けたからな。ずいぶん焦らされた。久しぶりにお前に触れられる。お前は柔らかくて甘いな」

 ラルドの耽美の声と共に両腕を拘束されたまま夜着をめくり上げられ手が直に胸に這わされた。当然下着は身につけておらず白い肢体がラルドの前に晒される。柔肉にラルドの指が埋まり手荒く揉みしだかれもう一つの乳頭にラルドが吸い付いた。じゅるじゅると音を立ててすすり口内で扱き歯を立てる。その淫らな愛撫に体が勝手にビクビクと跳ねた。痺れるような快楽に唾液を纏う胸の先端が硬く勃ち上がった。

「ヤ‥ダメ‥おにぃ‥」
んだろう?すればいい。無理矢理がいいのかい?また縛ろうか?その方が存分にお前を可愛がれる。あの夜縛られてお前も感じていた。大丈夫だよ、それでいいんだ。私たちは惹かれあってるのだから」
「ちがいますッやめ‥」
「違わない。私に抱かれたいのだろう?私の手に反応して‥体はこんなに素直で従順なのにな。お前は義兄に犯される。それでいい」

 ラルドの言葉にエルーシアは目を見開いた。背徳の夜に寝室で縛られて強引に貪られた。縛られて抵抗できない。やめてと言ったのに義兄は聞いてくれない。それは全てエルーシアの言い訳だ。
 そして今エルーシアは抵抗するが押さえ込まれ義兄に奪われようとしている、。義兄に焦がれ体を繋ぐ言い訳を欲しがるエルーシアの心の闇を見抜いている。それでも理性は近親の姦淫を拒絶した。

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