【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

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Ⅱ メガミ、俺。

015: いざ!レベリング!

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 ———強くなれ

 愛する女神様から少年誌の海賊漫画のような無慈悲な無茶振りが入った。そうなれば俺はやるしかない。もうこれは愛のムチだ。女神様からいただけるのなら涙を堪え、喜んでそのムチを受けようじゃないか!え?俺は決してマゾじゃないぞ!

 あれから何度か俺は鏡に話しかけるが女神様は現れなかった。時間がないと言っていた。俺との逢瀬は時間制限があるらしい。もっと大事に時間を使えばよかった!ちょっとでも俺が強くなることで俺との時間も長くなればいいんだが。もっと女神様とイチャラブしたい!

 そうなると問題は俺の強化、レベリング方法である。俺は戦闘能力皆無。何か倒してこいと言われても何もできない自信がある。可及的速やかに戦闘技術を習得しなくてはならない。だがそれは今後の継続課題だ。一日二日で急激に強くなれるわけもない。今はできることをやろう。

 怪我は嫌!流血怖い!レベリングであればここは初心者ノービスとして身分相応な依頼をこなすだけだ。間違っても低レベルが初期装備だけでいきがって魔物討伐の依頼を受けるべきじゃない。それは死のフラグだ。

「薬草取りは初心者の基本クエストだしな。冒険者ギルド入らなくても受けられる」
『我がお供いたします。討伐を受けられては?』
「ギルドが丸腰の俺に討伐依頼を出さないって」

 それに人族事情の討伐ってのもどうよ。
 人族にとって害でも世界ではそれは当然なことかもしれない。弱肉強食に俺が関わるつもりもない。

 というわけで。薬草を摘んで帰ってくるだけの簡単なお仕事を受けた。子供でもやってる超ビギナークエスト。あってよかった。だが経験値も微々たるもの。ならばとある依頼は全部受けてきた。依頼書の束が辞書の厚みになっちまったぜ。こうなりゃ数撃ちまくる。薄利多売ってやつだ。

 これだけの数の依頼をこなせるかって?
 普通にそこらを探しても無理だな。
 だが俺には勝算があった。

『森の奥ならば薬草も多くあります。良い場所へ我がご案内致しましょう』
「頼りにしてるぞ」

 今日は森に行くためスカートをやめ作業着ズボンスタイル。髪は赤いリボンで束ねている。俺の嫁は何を着ても可愛いなぁ
 人けのない場所で馬サイズまで大きくなったポメにまたがる。そして森の中の闇に飛び込んだ。何度か時空を抜けて出た場所は街からかなり離れた場所だ。遥か遠くに街のやぐらが見えるが豆粒だ。森の奥深くまで来たようだとわかる。

 まあ?薬草クエスト受けるような初心者が危険な森の奥深くまで薬草摘みになんぞ来ないわけで?ポメの鼻で薬草の在処もわかるし。これもある種のチートズルだな。

「おぉすげぇ!薬草群生してる!刈り放題だな!」

 一面の薬草に俺のテンションも上がってきた!
 森の奥の秘境スポット?ここ!誰にも教えないぞ!山菜取りの人が山菜群生地を秘密にしたい気持ちスゲーわかる!

 ギルドから借りてきた薬草事典で薬草の種類を特定。みんなが欲しがる薬草はだいたい決まっている。
 マンなんたらとかいう激レアな薬草もあった。根っこが錬金術の材料になるらしい。引っこ抜いたらすげぇ声?この世のものとも思えない断末魔?が聞こえた。事典で調べたら聞いちゃいけないヤツだったようだが俺はなぜか大丈夫だった。ムンク顔に人型の根っこがキショイわ!抜かれたのに逃げようとしてたから一発殴ったらおとなしくなった。こいつ、根っこの分際で活きがいいな。

 とりあえず他は手当たり次第刈って大丈夫そうだ。

 これまたギルドから借りた麦わら帽と軍手に鎌、首からはタオルに虫除けポプリを装備、農作業スタイルだ。ぞんざいに生える高級薬草を雑草のようにざくざく刈り取っていく。山になった薬草は束ねてポメの時空収納に放り込んだ。

 もうこれは草刈りか収穫代行のバイトのようだ。かがみ姿勢での作業は腰が痛い。重労働に汗ダラダラだ。農家さん大変だなぁ。人手は欲しいがポメには流石にこの作業は無理だ。この間ポメは周囲を警戒。一応ここは魔物のいる危険な森の中、何がいるかわからんし。

 意外に肉体労働だったな。弁当におやつを持ってきてよかった。
 
 2時間ほどの作業で辞書サイズの依頼書はコンプリート。俺がんばった!薬草はまだたんと生えている。また刈りに来よう。

 刈り取って綺麗になった草むらにブランケットを敷いて弁当タイムだ。天気も良くて風が気持ちいい。労働の後の飯は美味い!宿の女将さんに作ってもらった弁当に大満足だ。俺はごろんと寝転んで昼寝モード突入。

 学園から逃げ出した時はまだお気楽だったなぁ。あの時と全然状況違うけど、なんかこれもスローライフ風?ゆっくり穏やかに時間が流れて‥‥

 嫁も俺のそばにいるわけで?レベリングいる?
 魔王云々抜きでのんびりライフでもうよくね?


 俺の隣で静かに体を横たえていた狼がピクリと顔を上げた。辺りの気配を探っている。俺は気持ちよくまどろんでいるところだった。

「ん?どうした?」
『血の臭いがします』

 一瞬で眠気が飛んだ。俺も身を起こしたが見える範囲でここはのどかな野原と森だ。魔狼は耳をピクピク動かしている。

「どこだ?」
『風に乗って臭いが来たようです。距離は遠い‥‥微かな金属音がします』

 金属音、人族が戦っている?

「様子はわかるか?」
『血の臭いは人族のもの‥それに大量の亜人の臭い‥おそらく相手はゴブリンでしょう』
「どちらが押されてる?」
『人族が押されています。このままでは助かりません』
「そうか」

 魔物討伐に来た冒険者か旅人が襲われた。だがこれも弱肉強食だ。世の理、強いものが勝ち残る。今まで何千何万とあったことだろう。仕方がない。
 弱肉強食に関わるつもりはないが、目の前で助けを求める者を見捨てるのは辛い。ポメが行けば助けられるだろうが、俺の知らないところで助けを求める者は放っとくわけで。

 目の前にいたら助ける。それは不公平。
 これは俺の弱い心、罪悪感からの逃避だ。

 同じ境遇の全ての者を助けられないのに感情で動くべきじゃない。贔屓はだめだ。理性ではわかるが心が重いのは前世の記憶のせいだろうか。

 目を伏せ動かない俺にポメがおずおずと口を開いた。

『よろしいのでしょうか?この匂いは———』

 そこで俺は衝撃で目を見開いた。



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