【完結】ヒロイン、俺。

ユリーカ

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Ⅱ メガミ、俺。

017: ボスキャラ登場!

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「別に敵を殲滅させる必要はない。ゴブリンを怯えさせて逃走させればいいわけだろ?ここで俺がドデカいのを打ち上げてちょっと驚かせればいい。戦闘不要だ」
『はぁ。ちょっと‥でしょうか』
「なんだ?俺にはいきなり魔導発動は無理とか思ってるのか?」
『いえ‥‥決してそのようなことでは‥‥』
「なんだよーはっきり言えよー怒んないからさー」

 俺がパワハラ上司みたいじゃん。ツツーと目を逸らし言葉を濁すポメの真意がわからない。

 俺、信頼されてない?口だけ上司と思われてる?
 ここはいっちょガツン!とカッコよくカマして部下の信頼回復だ!

 超初級本は既にざっくり読んだ。あとは実践だ。教本を片手に目を閉じた。
 初めての魔導はまず発動に注力する。威力は度外視だ。だが俺はこれでも!腐っても魔王!レベル1でも魔王!初期魔導でも発動さえすればそこそこのものがでるんじゃね?

 教本の教え通り、体内の魔力を練る。体内で渦を巻く魔力を体感できる。魔導の発動を体感できた。お?初撃ちでイイ感じ!これはできそうじゃん?ここは華麗に決めるところだ!派手なヤツ出てこい!!

「いっけぇぇッファイアーッ」

 気合を入れて俺がカッコよく手を突き出した。
 が、なぜか何も出ない。辺りが静まり返った。

 え?なんで?!ここで不発?!マジか!!

 カッコつけたのに不発弾。嫌な汗がダラダラ出てくる。流石にこれは恥ずかしい。しばしの間のあと、ゴブリン共から遠慮なしの爆笑が上がる。羞恥もあり、その嘲笑に俺は一瞬で沸点を超えた。

「アァ?!誰がヘッポコダサダサ最弱魔導士だァ?!俺を誰だと思ってんだ!ナメてんじゃねぇゾッ笑ったヤツ出てこいやァシバくぞオラァ!!」
『いえ、そこまでは誰も申しておりません』

 ポメの冷静なツッコミが飛んだが怒りはおさまらない。ゲラゲラ笑うゴブリンをキレた俺が指差した直後。

 爆音が轟いた。

 俺の指からとんでもないサイズの炎の球が吹き出した。硬直する俺の前髪が熱爆風でオールバックになる。
 火の球は地面を抉りながら音速で俺の正面のゴブリンを焼き払い崖に激突。砂塵が舞う中、気がつけば岩盤硬そうな崖に穴が空いていた。綺麗にくり抜かれた穴は片側二車線バッチリの高速道路のトンネル並みだ。火の球は崖を突き抜けてさらに奥の山まで削ったようだ。トンネル越しに少し遅れて爆発音と遥か彼方の山頂が崩れる音がした。

 俺の背後でポメがはぁとため息をついた。

 ‥‥‥‥‥‥‥‥え?
 初級魔導ファイアだったよな?
 あれ?俺、今何出した?トンネル掘削機シールドマシン

 一斉にゴブリン共が逃走し出した。もう恐慌パニックである。大量のゴブリンが押し合いへし合い逃げ惑う。押しつぶされ圧死したゴブリンの死体があちこちに散らばっていた。そりゃそうだろう。俺だって顔面蒼白で涙目ガクブルだ。

「おおおおお!落ち着け!皆落ち着けぇ!まだ慌てる時間じゃない!!」
『我は大丈夫です』
「さっきの何?あれ何?俺何した?地獄の業火ヘルファイア?俺間違えた?あれは初級魔導だったよな?な?なぁ?」
『その様でした』
「いやいや、だってまだ一発目だし?あれだ!これはちょっとした事故だ!な?ちゃんと落ち着いて撃てばふつーのが出るんじゃね?そう!これはビギナーズラック!初心者はこれだからいかんよな?な?そうだよな?」
『はぁ』

 ポメは俺の意見に賛同しづらそうだ。
 背後でお姉さん方も唖然としている。

 あー、なんか俺いらんもん出した?こんなとこにトンネルブチ抜いてさー これならポメの本気の方がまだ魔獣がやったって言い訳できた。

 これホントにアカンやつじゃん?ファイアってろうそくに火を点けるレベルだぞ?初級魔導の初撃ちで暗黒魔法クラスの火力とか!破壊力あればいいとかそういう問題じゃないってば!全然制御できてないじゃん!生ける大量破壊兵器?ソロキャンプでちょっと薪に火を点けたい時に俺はどうすればいいんだ?!俺は一人でキャンプファイヤーもできないのか?!

 そして俺の動揺中にゴブリンは一匹も居なくなった。

 驚かせて逃走させる!作戦成功してんじゃん?もう結果オーライだ!(ヤケクソ)

 この隙に逃げよう!そう思ったその時。森の奥の闇がぐにゃりと歪んだように感じられた。ずっと奥で俺達の様子を見ていた奴が時空の狭間から姿を現した。逃げ惑うゴブリンを踏み潰しそいつは俺達の前に立ちはだかった。

 全身を覆う鱗が青く光っている。レックスタイプの体躯に翼と長い尻尾。二足歩行のその巨体を見上げ俺はあんぐりと口を開けてっしまった。それは生まれて初めて見る魔物。

「うわぁ‥‥ドラゴンか‥‥」

 初めて見た。普通そうか。出会ったら最後、生きて帰れない定番モンスターだ。俺の初陣にいきなり豪華!上位魔獣の登場である。背後のお姉さんからも悲鳴が聞こえた。

 空想上の生き物を初めて見たわけで。ハイファンタジーマニアとしては感無量である。見るだけなら。

 え?俺の初陣のボスキャラがこれ?!
 俺まだレベル1なのに!初心者ノービスに鬼畜すぎるだろッ

「げげげげッ こいつがボス?!聞いてないぞ!」
『使役術を持っていますな。ドラゴンであればゴブリンを統率していたのも納得です。知能はまあまあですが‥‥話してわかる相手ではなさそうです。ドラゴンとしても階級は低い‥下の下、雑魚ですな』
「雑魚?あれが!俺まだレベル1だぞ!薬草から始めてコツコツレベリング中だっての!まだ丸腰だし!こんなんの相手無理だろ!初期のボスキャラなんてちょっと強いでいいんだって!」

 んー、と何やら思案していたポメがボソリとつぶやいた。

『これを倒せば陛下のレベルなるものが上がるのではないでしょうか?』
「こんなの倒せるわけないだろッ」
『陛下なら大丈夫です!ささッ ズブッと』
「俺はレベル1だって!話聞けよ!無茶振りすんな!なんでお前はそうポジティブシンキングなんだよ!」

 そこで耳をつんざくようなドラゴンの絶叫。音圧が凄い。キーンと耳に響いた。耳を塞ぐ俺から悪態が出る。

「なんだこれ!ウザッうるせー!!」
『ドラゴンの咆哮です。精神攻撃で抵抗に失敗しますと発狂です』
「え?これ精神攻撃なんか?こんなんで?」
『はい。陛下の抵抗値であれば問題ございませんな』

 これがあの有名な!精神攻撃!恐怖判定ってやつか!だが俺にとってはただの騒音だ。そういやさっきもマンなんたらがムンクの叫びを俺に披露してたが?あれもそうだったのか?だから聞いちゃダメだったのか。

 だが体感してみるとアレだな。
 ただ叫んでるだけじゃん?雑だな。こんな技でターン消費とかもったいない。

 次は俺のターン!

 とは言っても、俺何しようか?
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