【完結】R18 オオカミ王子はウサギ姫をご所望です。

ユリーカ

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第一章 ウサギの攻防編

幕間 アウルとマテオの密談

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 ここはマテオの部屋。

 せっかくノワと楽しくイチャコラしてたのに、話があるとものすごい力で俺はマテオに引っ張り出された。

 しかも今回は夢にまで見たノワのベッドでのイチャコラ。ここぞとばかりに堪能してた!してたのにだ!

 くっそ!めちゃくちゃいい雰囲気だったのに!まだノワを触り足りなかったぞ!
 ノワも建前では抵抗してたが、あれはある種照れ隠しだ。無自覚に流されているだけとも言えるが、本気でダメなら秒で叩き出されることを俺は知っている。

 故に俺は今、猛烈に不機嫌だ。

「話とは何だ?どうでもいいことだったら許さんぞ!」
「それはこっちにセリフだ。まだ私に説教させる気か」

 マテオの底冷えする低い声が響く。

 こいつは普段無害そうににこにこしてるが、怒らせるととんでもなく怖い。ウサギのふりしたオオカミ。この猫‥‥もといウサギ被りが恐ろしい。
 免疫ないものがこの怒りに触れればギャップでトラウマになるだろう。
 まあ長い付き合いの俺はそれに慣れているんだが。今日のこいつはぼちぼち怒ってる程度か。

「その話は散々しただろ?もう少し待てと」
「そう言われ続けて三年待った」

 ぐっ 痛いところをつく。そんなに経ったか。

「遠慮するな。いい加減ノワを食え」

 マテオが腕を組んで冷ややかに言い放つ。

「お前!ノワは仮にも妹だろ?!」
「おう、仮でもなく妹だ。いつまでイチャコラだけで引っ張るつもりだ?ノワももう十八だ。このままだと嫁に行き遅れる。お前が食わないのなら別の男にするが?飽いたのなら言ってくれ。縁談は腐るほど来てる」
「それは断じて許さんぞ!!」

 だん!とテーブルを叩いて睨みつける。それをマテオが冷然と見やる。

「ならば!さっさと食えと言っている!あれはお前に惚れてる!」
「だから!まだだと言っている!」
「お前!本当に肉食か?!肉のフリした草食だろ!」
「お前こそ!草のフリした肉食な!婚約者フィアンセ速攻で食っただろ!お前と一緒にするな!」
「相思相愛なら当たり前だろ!!」
「少しは節度を持て!」

 ギリリと睨みつければマテオが信じられんと天井を仰いだ。

「三年も!ありえない!いい加減どこぞに掻っ攫われるぞ」

 三年も。俺もそう思う。自分でも信じられない。

 三年前にリーネント国両陛下、マテオに謁見を願い出てノワの縁談を申し込み許可を得ている。婚約はお互いの合意の上で、という条件だ。
 俺としても異存はなかった。絶対落とすつもりだった。だから三年前から公務の合間を縫って通いに通い詰めて口説いてるんだが。

「まあノワも鈍い。世間知らずな上に恋愛の免疫もない。だからこそ多少強引にいく方がいい。流されればあいつもほだされる」
「それはダメだと言ってるだろ!あいつの意思じゃない!」
「馬鹿正直で頑固なやつだな。お前の口説き、全然伝わってない。お前らどうなってるんだ?」
「それは俺が聞きたい!!!」

 ソレ本当にな。手応えはある。ノワも無自覚ながらも顔や態度にも俺を憎からず思っているのは表れている。それがあるのに落ちない。本当に謎だ。
 何がいけない?何がノワを躊躇わせてる?ため息が止まらない。

「食えという割にはさっきは邪魔してくれたな」
「お前、食う気がないのに食うフリしてイチャついてるだけだろ。時間の無駄だ」

 バッサリだな、血も出ない。その通りだが。
 マテオが顔を顰め俺を見据える。

「お前、いい加減腹を括れ。なぜお前に腹を立てているかわかってるのか?」
「‥‥いや」
「甘ったれてるからだよ。ホントはノワと結婚できなくてもいいと思ってるだろ?」

 耳を疑った。何を言っている?こいつ、俺を全否定しやがった。十年我慢に我慢をしている俺を。

「それはない!」
「だが嫌われる危険を冒すより今のヌルい関係で満足しようとしてる。事実婚のつもりか?ガキの頃のように仲が良くて居心地良さそうだな」

 血が一瞬で沸騰した。向かいのマテオの胸ぐらを掴む。流石にそれは暴言だ!

「取り消せ!!」
「言い返してみろ。お前はノワに甘えて依存してる。怯えてリスクを冒さないヘタレだ」
「大事だから!大切にしたいんだよ!」
「履き違えんな。それは優しさじゃない。ビビってんじゃねぇよ、三年もな。施政ならあそこまで冷徹なのになんでここまで来て尻込みするんだ?おかしいだろ?!」

 全部図星だ。だから言い返せない。
 そう自覚すれば手から力が抜けた。

「‥‥ビビんなよ。今更あれがお前から離れると思うか?どんだけ付き合い長いと思ってるんだ?」
「それでも無理強いはしたくない」
「さっきは珍しく強引に行ってたが?あそこまでするなら覚悟を決めて全部食えよ、全く」

 思わず顔を顰めた。全部見てたのか?こいつは本当に性格が悪い。

「‥‥あれは暴走した。あんまりにも頑固だから」

 あいつは俺への愛がないという。三年口説き続けた俺にそれをいうのか?全部無駄だったと?ひどすぎるだろ。
 あいつは俺を好きなはずなのに、どうすればノワの愛は手に入るんだ?

 情に訴えてもダメ。国が結婚を許さないという。だから国益のない結婚をと言えばそれも拒否する。キレた俺が悪いのか?

「そこでブレーキがかけられるお前もすごいな。禁欲的ストイックで驚いた。普通はあそこで殴らせない」

 あれは俺の甘さだ。逃げる隙を与えて言い訳をしている。ノワのためじゃなく俺のための言い訳だ。

 ひどいことをしたいんじゃない。ただノワに愛されたいだけなのに。

 あそこまで、押し倒しても落ちない。もうどうすればいい?

 頭を抱える。腹の底からため息が出た。
 それを見たマテオが非情にも言い放つ。

「ひとまずお前はもうこっちに来るな」
「はぁ?!なんで?!」
「お前ら近すぎるんだよ。側にいて当たり前だと思ってるんだ。隣の国同士であれば普通遠恋だぞ?なに三日おきに会ってるんだ?あの山道と絶壁を超えて通うお前の執着が恐ろしいわ」

 それは俺が禁断症状を起こすからなんだが。
 それは流石にこいつに言えない。呆れられる。

「ノワもしょっちゅう会えるから今のままでいいと思ってる。弊害だ。だから少し離れて焦らせ。今は色々と動いている。いい時期だ」

 焦らすって俺をか?ノワは焦れないだろうな。スイーツ禁断症状はあるかもだが。
 だがこいつのいうことも一理ある。どうせ手詰まりだし乗ってみるか。

「ならさっきの謝罪をしに‥‥」
「馬鹿か。こんな美味しい状況をなぜ利用しない?」
「??よくわからない」

 マテオは今度こそ呆れたように脱力している。
 流石の俺もイラついてきた。

「微妙な別れ方をした後に突然会えなくなる。連絡が取れない。どうしたんだろうと思わせる。相手を不安にさせるのが第一歩だ。お前、ホントそういう男女の駆け引きはダメだな」
「おかげさまでそんな必要はなかったからな」

 駆け引きの意味もわからない。陰謀や根回しなら手に取るようにわかるのに。マテオが呆れた声を上げる。

「落とす必要がないという自慢か?お前ならよりどりみどりだろうな」
「だから!お前と一緒にするな!俺は——」

 マテオはつまらなそうに俺を指さした。

「知ってる。十年前からノワ一筋。死ぬほどモテるのに中身は一途。初恋拗らせて挙句は童」
「それ以上言えばブッ殺すぞ!!!」
「おっかねぇ。そして引くほど重い。耳への執着は程々にしろ。あれは反動だ、童」
「本当に殺されたいか?!!」

 こいつ本当に口悪いな。王族なのが信じられない。そしてノワと成就すればこいつが俺の義理の兄となる。

 正直、こんな狡猾な悪辣王子が義理の兄とかできれば遠慮したいが、王になればこれほどに有能なものもいないのは知っている。ものぐさが玉にキズだがリーネントは良い王太子を持ったと言える。

「後のことはこちらでフォローしておく。お前はとっとと帰れ。私も忙しい」
「え?本当にこのまま帰れと?」
「ああ。だが次に食うチャンスができたら躊躇わずに必ず食えよ。お膳立てはしてやる」

 襟首を掴まれ追い立てられた。抵抗できない。謎の怪力だ。

「せめて一目だけでも‥‥あと何度も言うが警護を増やせ!離宮はスカスカだ!」
「そうだな、検討しておく」
「必ず検討しろ!お前すぐ手を抜くからな!お前ら平和ボケがすぎるぞ!」

 ノワに会いたい。ちょっと気まずい空気を残した。無理矢理襲おうとしたし謝罪もないのかと嫌われてはいけない。のだが。
 わからないやつだな!とそのまま窓からつまみ出された。ひどいやつだ。


 それから俺がどれだけ我慢できたかといえば。二週間も死ぬかと思った。一週間から大幅な記録更新だ。よく頑張ったと俺は自分を褒めてやりたい。効果があったかはわからないが。

 そしてあの日行動を起こしていて心底良かったと自分の幸運に感謝した。


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