【完結】R18 オオカミ王子はウサギ姫をご所望です。

ユリーカ

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第三章 ウサギとオオカミの即位編

本編最終話 願いと決意

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 あのクーデターから十ヶ月後。
 私は元気な男の子を出産した。

 出産後ベッドでぐったりする私にアウル様が労いの言葉をくれた。生まれた赤ん坊を見て大喜びだ。

「ノワ!よく頑張ったな!お前によく似た男の子だぞ!めっちゃくっちゃ可愛いな!!」
「私は出来ればアウル様似の方がよかったです」

 ゆるい金髪になんとなくぺちゃっとした顔立ちは私似だろう。可愛いのだが美形という感じではない。アウル様の幼いの頃の肖像画は芸術品か!というくらいに高貴で可愛らしかったのに。なぜに私の遺伝子が?!

 せめて!せめて頭脳だけはアウル様の遺伝子を引き継いでいてくれ!!他の絶倫とか戦闘狂は要らないから!!
 



 妊娠したと思われたあの睦み合いの翌日。
 アウル様は予定通り国王に即位された。

 高貴、厳威、崇高、超越、玲瓏。

 戴冠式に臨むアウル様のカッコよさは私の語彙では言い表せないほどだった。一番側で戴冠の一部始終をバッチリ見られてもう福眼と言うか至福!至高!感動だ!壇上で表情を凍らせつつ内心悶えまくったよ。

 穏やかに微笑む陛下からアウル様は王冠を授けられた。王冠に王笏。王位の象徴の重厚な赤いマントを纏うアウル様は覇気に溢れ輝かんばかりに堂々として凛々しかった。この方が自分の旦那様とか信じられなかったし。
 この化けっぷり。あのやんちゃな変態戦闘狂でもこうして立派に君主になれるのだと感嘆したものだった。これぞ王族のカリスマなのだろうか。
 
 そして私も王配として、王冠を纏うアウル様から王妃の戴冠を受けた。もうね、私が大国ファシア王国の王妃だって?これはなんというか悪い冗談というか茶番というか。現実味がなくていっそ緊張もしなかった。
 それを勘違いされて、堂々と気高い様子だったと皆には評判だったわけで。そう解釈されるん?もうどうでもいいやって感じだ。

 本来なら王妃としての公務もあるところなのだが、その後妊娠が発覚。ご懐妊!めでたい!慶事だ!と皆が盛り上がる中で、アウル様が王妃の体調優先だ!!と王妃の公務を全てふっとばしてしまった。

 なにせアウル様は歩いた後には公務が全てなくなるというとんでもない兵器なのだ。どういった処理速度なんだか。
 お陰で体を大事にするという言い訳のもとにゆっくり王妃教育を受けられたわけで。

 アウル様が言っていた悪くないってこのこと?先見が鋭すぎてホントおっかないですわ。



 ベビーベットに眠る赤ん坊を覗き込んでアウル様はものすごい喜びようだ。こんな子煩悩だとは思わなかったからちょっと驚いた。首の座っていない小さな赤ん坊をおっかなびっくりではあるが抱き上げて微笑んでいる。

 生まれていた赤ん坊は耳は尖っていなかった。ウサギ耳はなぜかリーネント王家の直系にしか現れない。アウル様はちょっと残念そうだ。

「可愛い耳なんだけどな。ぜひファシア王家に残したい遺伝なんだがなぁ。まあ次に期待だ。遺伝なんて確率論、劣性遺伝でも数打ちゃチャンスはいくらでもある」
「まさかウサギ耳の子供が生まれるまで‥‥?」
「その甲斐性はあるつもりだが?お前と俺は相性もいい。たった一ヶ月で子ができた」
「私の体がそこまで持ちません」

 前半は体調を崩しまくってたのだが、安定期に入れば絶好調。産婆さんに絶賛誉められるほどに今回の出産は安産だったらしい。どうも格闘技が良かったらしい。体を鍛えていたから?
 それでもものすごく疲れた。ずっとお腹が大きいのも色々と大変なんだからね!

 アウル様との相性は確かにいいかもしれない。ハタからは婚前性交しまくりと思われてたが、致したのは実は初夜が初だ。初夜からたった一ヶ月で妊娠とか。やはり結婚前にシなくてよかったよ。

 ホント、これもアウル様の的中テクがすごいのか?連日連夜ヤりまくりの数打ちの乱れ打ち?確かに弾は底なし無制限だったし。


 これは後で知ったのだが、結婚一年で生まれた第一子がいきなり王子ということで私たちより王宮や国内が大フィーバーだったとか。当初私はアウル様のガセ情報でウサギ姫と国民に人気だったが、今やアウル様と二人で仲睦まじい王夫婦と人気があるのだ。
 実はアウル様は面倒くさがって広報に参加していなかった為にアルフォンス様程に人気はなかった。だけど挙式での暗殺未遂で私を庇って矢を受けたアウル様に国民の同情が一気に向いた。
 さらにそこで解禁されたアウル様の絵姿がイケメンだし凛々しいし?お陰で即位直前に支持率爆上げである。その後例により色々美化されて本やら歌劇やら色んな娯楽になったという。

 これ絶対アウル様の策略だよ。翌日挙式に参加できてたんだからおかしいとかならないんかな?

 そんな美談付きのイケメン王様だが!アウル様のエロエロ絶倫は国家レベルの機密事項だ。よって寝室は相変わらず防音仕様のあの部屋を使っている。
 アウル様はどこでも盛りたがるからアウル様のクリーンなイメージを崩さないように私も結構大変なのだ。


 即位の直後こそ毎日慌ただしかったが、一通り片付いて最近は平和な日々だ。
 あの頃は婚約からの結婚、即位、妊娠。更に合間にアウル様暗殺未遂やクーデターもあって私の人生史上一番濃密な日々だったと思う。

 因みにクーデター及びアウル様たちのあの日のやんちゃぶりはクレマン卿が何事もなかったように見事に片付けたという。私軍まで出たのにすんばらしいお片付け手腕です。

 そんなバタバタの中での妊娠。つわりもひどいし体調も崩しがちでさらに初産で。精神的にも脆くって安定期に入るまでアウル様に縋って毎日メソメソ泣いてばかりだった。
 アウル様だって即位したてであの頃は恐ろしく忙しかったのに。そんな私を煙たがらず、ヤバい!泣きウサギ可愛い!もっと泣いてくれ!とか連呼してさ。むしろデレてベタベタに甘やかしてくれたのが救いだ。

 私の泣き顔であんなに喜ぶとかどうよ?と今なら残念に思うところだ。
 アウル様が変態でホントよかったと心底思った瞬間だった。




「名前は何にしようか?ノワはどうだ?」
「女の子だと思っていたのでまだ何も‥」
「そう言ってたな。お前のカンが外れたのは珍しいな。ん?まさか女の子とか?!」
「ちゃんと男ですって」

 アウル様は抱き上げた子を下から覗き込んでいる。変態ちっくなんで赤ん坊でも恥ずかしいのでやめてほしいのだが。

「ん?だな?男だ。こうなると女の子も欲しくなってきたな」

 赤ん坊をベッドに戻したアウル様のおねだりする様な笑顔で私の頬に朱が差した。

「‥‥も、もう!出産したばかりでまだ無理ですからね!」
「ああ、勿論だ。次は少し間を空けよう。子も欲しいがイチャイチャもしたい。人間を一人作ったんだ。お前はまず消耗した体を休めないとな。美味いものをたんと食え!ケーキでもパフェでも!」
「え?スイーツ縛りですか?」
「おう、残ったら俺が食ってやるから存分にな」
「‥‥‥いえ、やはり遠慮します」

 大好きなアウル様に肩を抱かれ労わる様に頭を撫でられれば、胸がときめいて嬉しくてほぅとため息が出る。やっぱり私はチョロい。でも幸せだからいいんだ。

「まあ致さなくても快楽を与えることはいくらでも出来る。シたくなったらいつでも言えよ?すぐデキないよう今度はちゃんと避妊しような」

 鬼教官に耳元で優しくそう囁かれれば、私は顔を赤らめて俯いてもじもじしてしまう。安定期に入ってからはアウル様の上に乗せられて優しく可愛がられる日々だった。激しい睦み合いではなく穏やかに結ばれるその快楽を体は覚えているのだ。


 ああ、この方の側にずっといたい。
 私の側にいてほしい。


 そう望めば口から問いが出ていた。

「もしこの世の終わりが来てもアウル様は私の傍にいてくださいますか?」
「ん?この世の終わり?随分物々しいな」
「—— 例えばの話です。もし私がその時アウル様の敵になったらどうなさいます?」

 アウル様が驚いてか目を瞠る。

「なんで俺がお前の敵になるんだ?ありえないだろ?」
「でも‥‥私がこの国の敵になれば私はアウル様の敵です」

 そういいよどめばアウル様が呆れたように軽く息を吐いた。

「ありえないと言ってるだろ?俺とお前は一緒だ。多少の説得はするかもしれないが、お前がつく側に俺もつく。だから敵にならない。まあ国を気にするならなるべく国側に立ってくれれば国としては助かるだろうが、俺はどっちでもいい」
「ど?どっちでもいい?」

 私の驚いた声にアウル様が苦笑する。そしてうっとりと目を細めた。

「その時は王位はアルに譲ってお前と子供を攫って駆け落ちだ。言っただろ?お前は俺のウサギで絶対に手放しはしないと。ずっと一緒だ。たとえ死を迎えようとも」

 こんなにカッコよくてハイスペックなのに、この方はどこまでも自由奔放でやんちゃだ。きっと玉座でさえこの方を縛ることはできない。

 そんなアウル様が私を手放さないと言ってくださった。

 そこで理解した。

 アウル様を失って私は生きていけない。
 アウル様の側でしか私は存在できない。
 アウル様がいるから私は生きてるんだ。

 存在意義。あの方はそう言っていた。
 意味がわかれば胸が締め付けられた。

 幸せそうに微笑むアウル様の笑顔が歪んで見えた。鼻の奥がツンと痛んで勝手に熱いものが瞳から溢れ出した。

「おいおい、もしもの話で泣くことないだろ?」
「‥‥嬉しいんですよ。喜んで泣いちゃダメですか?」
「いや、こんなウサギを見るのもいいな。俺も幸せな気分になる」

 そっとアウル様に抱き寄せられた。

 ずっとずっとアウル様と共に。
 どうかこの温もりがいつまでも続きますように。
 私はこの方のお側を離れないのだから。

 あなたを闇に堕とさせはしない。絶対に。

 願いと決意。

 私は心の中でひっそりとそう誓った。
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