超能力者の私生活

盛り塩

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第98話 女将のお題⑤

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「――――ま、それも一つの方法って事だよ。結界が使えなきゃ別の方法でも考えてみるんだね」

 ぶっきらぼうにそう言うと、女将さんは廊下の向こうへと去っていった。
 ……さんざんウンチクを聞かせておいて、けっきょくほったらかしかい!!
 語りたかっただけじゃないか、あのオババめっ!!!!

「もうやってられん……メシじゃメシじゃっ!!」

 と言うわけで昼食兼クールダウンのため、私も尾栗庵で昼休憩を取ることにした。




「……はぁ、結界術ですか、私もそれ苦手なんですよねぇ……」

 おかわりの座布団ハンバーグを運んでくれながら、宇恵ちゃんは苦い顔をした。
 昼食のついで、せっかくなので能力者としては先輩の宇恵ちゃんにアドバイスを聞いてみたのだ。
 しかし彼女はお盆を口にあてつつ、 

「そもそも私みたいな弱い能力者の結界なんて、いくら鍛錬したって大した武器にもなりませんしね……。やっぱり宝塚さんや菜々先輩みたいな強い能力者の方々でないと……」

 と、困った顔をした。

「菜々ちんや百恵ちゃんは使えるのかな?」

 流れ出すジューシーな肉汁に半分心奪われつつも、さらに聞いてみる。

「いえ、菜々先輩も苦手だって言ってましたし、百恵さんも使っているところはほとんど見たことないですね。そもそも、いくらお二人が優秀でも訓練生の段階で結界術なんて普通は使いこなせたりしませんよ?」
「ほうひょれ? ほはみもはんひゅうれんははったっていてらし、ほもほもがむひゃなのよ!! はのははあっ!!」

「……食べてから言って下さい」

 もぐもぐもぐもぐ……ごっくん。
 切り切り……ぶす、ぱくぱくもぐもぐもぐもぐ……。

「いや、食うんかいっ!!」

 ばふっ!!

「わあ!! 何してるんですか、吐かないで下さいっ!!」

 良いタイミングのツッコミに思わず吹き出してしまった……。
 いかん、馬鹿な漫才まがいなことをやっている場合じゃない。

「いや、それよ!! やっぱり結界術なんて普通は使えないのよね!? なのにあの女将ったら結界術無しじゃクリア出来ないお題なんか出してくるのよ!! 意地が悪いったりゃないでしょ!?」

「別の方法でも良いって言ってたんですよね?」
「まぁ……うん。でも、別の方法なんてあるの?」
「さぁ……それでも女将さんがそう言ってたんなら、あるんじゃないですかね? あの人、厳しいですけど、弟子に不可能な事を押し付けるような無責任な人でもないんですよ? きっと何か方法があるってことですよ」

「……方法ねぇ……例えば?」

 付け合せのじゃがバターを分解しながら聞いてみる。

「う~~ん……そりゃあやっぱり能力を使えってことでしょうねぇ。超能力者ですから私たち」

 お盆を抱えながら可愛く首をかしげる宇恵ちゃん。
 確かに……まぁ、普通に考えたらそうなんだろうな。
 ……しかし能力と言われても……。
 店内にぞろぞろと職員さん達が入ってくる。

「あ、いらっしゃいませ~~」

 宇恵ちゃんはそっちの相手をするために行ってしまった。
 私は残りのハンバーグをひょいひょい腹に詰め込みつつ考えふけるのだった。




「って、いくら考えたって分かるか~~~~いっ!!!!」

 巨大コンクリートにチョップを食らわせながら、自分にツッコミを入れる私。

 そもそも超能力の存在を知ったのだってごく最近だし、そんな私にいきなり応用問題なんて解けるわけないじゃないかっ!!
 つい昨日、やっと初めて自力で使えるようになったばかりだぞ!??
 まずはその練習の方が先でしょうに!!

 おおそうだ、その通りだ!!
 出来ない問題にいつまでも悩んでいても始まらない。ここは一つ、出来ることからやっていこうじゃないか!!

 よし、じゃあまずは昨日の復習から。
 と私は適当に、精気を吸い取れそうなブツを探す。
 しかしそれらしきものは、廊下の奥に飾ってある生花くらいしかない。

「……むう、さすがにアレに手を出したら、また女将にどやされるだろうな……」

 廃墟に成り果てた中庭庭園を見て汗を流す。
 しかし、そのおかげで一つ妙案が閃いた。

「ああそうか、だったら――――」

 私はポンっと手を打った。




 にゅにゅにゅにゅにゅ~~~~~……。

「おお~~すごいすごい!! 吸える吸える!!」
『きゅきゅ~~♪』

 玄関先の庭に出て、私とラミアはご機嫌な声を上げる。
 ラミアに頼んで発動してもらったのは、昨日と同じ吸収能力。
 相手は垣根の根本に生える雑草たちだ。

 手を触れ『吸収』のイメージを高め、意識を集中させる。
 すると触れている箇所からみるみる枯れていき、ものの数秒足らずで一握りほどの雑草は枯れ草に変わった。

「面白い面白い!!」

 要領を得た私は、すっかり楽しくなってしまい片っ端から枯らして回った。

「これなら旅館の手伝いみたいなものだし文句も言われないでしょ!!」

 ほほほ、と笑いながら、あっという間に一面を除草し終わってしまう。
 うむ、自分で言うのもなんだが、これは便利な使い方だ。

「どれ、じゃあ今度ははあっちの一角を……」

 まだまだ雑草が生い茂っている向こう側に移ろうとしたところで――――、

「――――うっ!? ……あ、れ!??」

 いきなり前触れもなく気分が悪くなり、座り込んでしまった。
 頭がギリギリ痛み、吐き気が上がって、呼吸と鼓動が早くなってくる。

「はぁはぁ!! な、なに?? 突然気分が……はぁはぁ!! なに??? 何なの、いきなり……うぐ……」

 突然襲ってきた体調不良に混乱し、目を白黒させる私。

 ――――バタッ。

 苦しさに抗えず、とうとう倒れ込んでしまった。
 それでも何とか這って、玄関へと入り込み、助けを探す。
 血が逆流するかのような苦しみと、洗濯機の中にでも放り込まれたような目眩。

「ぐ……ぐぐぐ、だ……だれか、た、助け……て、きゅ……救急車……を」

 グルグル回る視界の中、なんとか手を伸ばすが……片付け作業で臨時休業中に加え、昼休み中である周囲に、人は誰もいなかった。

 ――――いや、

「あれぇ~~……あなたぁ何してるのぉ……? こんな所でぇ~~死にそうな顔してぇ……ああん、うらやましいわぁ~~~~……」

 一人だけいたのだ。
 通りがかりの死ぬ子と言う、疫病神が。
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