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第103話 女将のお題⑩
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「別の方法でも考えろといったんじゃな? まったく、あのたぬきババアめ、最初っから他の方法などあるわけないではないか……」
そう言って百恵ちゃんはコンクリートに手を添える。
そして「むんっ!!」と気合をいれると、青い光が出現し、それが膜となり彼女を包んだ。
「ファントム結界……」
「うむ、そうじゃ。これが吾輩の結界じゃが……」
だが、その結界はコンクリートの壁を突き抜け、干渉している様子はない。
百恵ちゃんはさらに気合を上乗せする。
「ぬうおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
すると結界は強度を増し、やがて少しずつ壁を削り始める。
「お……おおぉ!? すごいすごいっ!! これって結界術!??」
私は感嘆の声を上げるが、そこで彼女は力果て、結界を閉じてしまう。
残った壁には百恵ちゃんを中心に円を描くように筋が掘られたが、それだけで、とても女将さんのように粉々にするまではいかない。
「……チッ、やはり吾輩の結界ではこの程度か……」
息を荒げながら悔しそうな表情をする彼女。
「いえ、物質に干渉できるだけでもすごいですよ、私なんていまだに出すだけで精一杯ですから……」
菜々ちんが背をさすってあげながら、情けなさそうに呟いた。
それを言うなら私なんて出すことも出来ませんがな……。
「ふん……一応、吾輩も戦闘班として結界術は鍛錬しておるからな。しかし……その苦労も何だが馬鹿馬鹿しくなってくるわい」
汗を拭いて、彼女はなぜか私を恨めしそうに見てくる。
「……やってみせろ」
「ん?」
「結界術だ。やってみせろと言っている」
「え? いや、私はそんなもの使えないけど??」
「誰もヒロインには言っておらん。吾輩はラミアに言っておるのじゃ」
『きゅ?』
話を振られたラミアはキョトンとしている。
「ファントムならば能力だけじゃなく、結界術も、もしかしたら自在に操れるのではないか?」
そんなラミアに百恵ちゃんは探るような目で問い詰める。
なるほど、確かにそれはそうかも知れない。私じゃ何をどうすればいいかチンプンカンプンだが、ラミアならば専門職だ、行けるかも知れない。
て、言うか女将さんとの戦闘のとき結界出してたよね?
『きゅきゅ~~……』
しかしラミアの表情はすぐれないものだった。
「……どうした? なんて言っている?」
「使えるけれども、女将さんみたいのは知らないって……」
すると百恵ちゃんはしばし考えて、
「……ふむ……まあ、結界術とは人間が磨き上げた技じゃからな、ファントムにとっては未知のものじゃったのだろうよ。……しかしならば、言い方を変えようか」
と、百恵ちゃんは足元に落ちていたホウキを拾い上げて私に渡してきた。
そしてラミア問う。
「女将の技……模倣出来るか?」
え? ま、模倣《マネ》?? あの技を??
あの女将さんでも習得に三十年掛かったっていう結界術を?
いやぁ~~それはいくら何でも……都合のいい話って――――ええっ!??
私がそう思うとは反対にラミアは軽く『きゅっ!!』と鳴くと私に『力』を渡してきた。
ええ~~と……。
その力の種類を直感で感じた私は、それが結界エネルギーだと理解する。
そしてそれを能力を放つ要領で解放してみると――――、
ブオォォォォォォォン……。
なんとホウキ製の光の剣が出来上がってしまった。
「な、な、な……そんな、こんなあっさり……」
菜々ちんがあんぐりと口を開け驚いている。
いや、私も同じ思いだ。
で、でも……ただ結界で包んだってだけかも知れないし、大事なのは物質に干渉できるほどの出力かってことだ。
戦闘班の隊長である百恵ちゃんですら、ほんのちょっとだけしか出来ない物質干渉だ、いくらラミアが優秀なファントムだからって所詮は真似事。女将さんみたいな達人技をそんな簡単に、いくらなんでも――――、
――――ザクッ!!
言いながら傾けたホウキの魔剣は、いとも簡単にコンクリートを真っ二つにした。
『…………………………………………』
三人の沈黙が流れる。
ただ一人、ラミアだけは誇らしげに胸を張っていた。
やがて百恵ちゃんが額を押さえながら呟く。
「だから馬鹿馬鹿しくなると言ったのじゃ……」
「……思ったより早く片付いたね。やるじゃないか」
ラミアのおかげで会得した結界術で、残るコンクリートを細切れにし全ての片付けが終わった頃、女将さんが現れて、そう褒めてくれた。
「はい! 終了いたしました!! ご指導ありがとうございました!!」
何はともあれ、女将さんのおかげで急成長出来た私は、もうすっかり彼女の弟子気分である。
「……なぁに、私は何も教えちゃいないよ? お前の筋が良かっただけだよ」
謙遜してそう言ってくる女将さんだったが、
「……筋がいいの一言で片付けられてたまるか」
それに仏頂面で答える百恵ちゃん。
「おや、何だい百恵? 随分つまらなそうな顔してるじゃないか?」
「当たり前じゃっ!! 吾輩達がずっと苦労して鍛錬している術も、能力も、こうも簡単に使いこなされてしまったら立場というものが無くなるわ!!」
涙目になって悔しがる彼女。
う……そう言われるとホント……申し訳ない。
「……なんだい、随分ケツの穴の小さい事言うねえ? 天才百恵の名が泣くよ?
いいじゃないか、私達はべつに競争してるわけじゃないんだから、同じ釜の飯を食う者同士、協力し、助け合うのが組織の第一理念だった筈だよ? 優秀な能力者が出来るぶんには私は構わないがねぇ」
「……う……し、しかし女将は悔しくないのか? 長年苦労して積み上げてきた研鑽を、こうも簡単に真似られてしまったのじゃぞ!! 納得がいかんじゃろ!??」
「納得かい? ……そうだねぇ」
そう言って不敵に笑う女将さんは、まだ術を解いていない私のホウキに手を触れる。
「あ、危ない――――、」
しかし、その瞬間――――、
ばきぃんっ!!
と、呆気なくホウキは術ごと破壊され砕かれてしまった。
あんぐりと口を開けて放心する私とラミア。
「確かに、この程度で真似たと思われたら、納得はいかないかもねぇ」
女将さんの表情にはまだまだ余裕が有り余っているように見えた。
そう言って百恵ちゃんはコンクリートに手を添える。
そして「むんっ!!」と気合をいれると、青い光が出現し、それが膜となり彼女を包んだ。
「ファントム結界……」
「うむ、そうじゃ。これが吾輩の結界じゃが……」
だが、その結界はコンクリートの壁を突き抜け、干渉している様子はない。
百恵ちゃんはさらに気合を上乗せする。
「ぬうおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
すると結界は強度を増し、やがて少しずつ壁を削り始める。
「お……おおぉ!? すごいすごいっ!! これって結界術!??」
私は感嘆の声を上げるが、そこで彼女は力果て、結界を閉じてしまう。
残った壁には百恵ちゃんを中心に円を描くように筋が掘られたが、それだけで、とても女将さんのように粉々にするまではいかない。
「……チッ、やはり吾輩の結界ではこの程度か……」
息を荒げながら悔しそうな表情をする彼女。
「いえ、物質に干渉できるだけでもすごいですよ、私なんていまだに出すだけで精一杯ですから……」
菜々ちんが背をさすってあげながら、情けなさそうに呟いた。
それを言うなら私なんて出すことも出来ませんがな……。
「ふん……一応、吾輩も戦闘班として結界術は鍛錬しておるからな。しかし……その苦労も何だが馬鹿馬鹿しくなってくるわい」
汗を拭いて、彼女はなぜか私を恨めしそうに見てくる。
「……やってみせろ」
「ん?」
「結界術だ。やってみせろと言っている」
「え? いや、私はそんなもの使えないけど??」
「誰もヒロインには言っておらん。吾輩はラミアに言っておるのじゃ」
『きゅ?』
話を振られたラミアはキョトンとしている。
「ファントムならば能力だけじゃなく、結界術も、もしかしたら自在に操れるのではないか?」
そんなラミアに百恵ちゃんは探るような目で問い詰める。
なるほど、確かにそれはそうかも知れない。私じゃ何をどうすればいいかチンプンカンプンだが、ラミアならば専門職だ、行けるかも知れない。
て、言うか女将さんとの戦闘のとき結界出してたよね?
『きゅきゅ~~……』
しかしラミアの表情はすぐれないものだった。
「……どうした? なんて言っている?」
「使えるけれども、女将さんみたいのは知らないって……」
すると百恵ちゃんはしばし考えて、
「……ふむ……まあ、結界術とは人間が磨き上げた技じゃからな、ファントムにとっては未知のものじゃったのだろうよ。……しかしならば、言い方を変えようか」
と、百恵ちゃんは足元に落ちていたホウキを拾い上げて私に渡してきた。
そしてラミア問う。
「女将の技……模倣出来るか?」
え? ま、模倣《マネ》?? あの技を??
あの女将さんでも習得に三十年掛かったっていう結界術を?
いやぁ~~それはいくら何でも……都合のいい話って――――ええっ!??
私がそう思うとは反対にラミアは軽く『きゅっ!!』と鳴くと私に『力』を渡してきた。
ええ~~と……。
その力の種類を直感で感じた私は、それが結界エネルギーだと理解する。
そしてそれを能力を放つ要領で解放してみると――――、
ブオォォォォォォォン……。
なんとホウキ製の光の剣が出来上がってしまった。
「な、な、な……そんな、こんなあっさり……」
菜々ちんがあんぐりと口を開け驚いている。
いや、私も同じ思いだ。
で、でも……ただ結界で包んだってだけかも知れないし、大事なのは物質に干渉できるほどの出力かってことだ。
戦闘班の隊長である百恵ちゃんですら、ほんのちょっとだけしか出来ない物質干渉だ、いくらラミアが優秀なファントムだからって所詮は真似事。女将さんみたいな達人技をそんな簡単に、いくらなんでも――――、
――――ザクッ!!
言いながら傾けたホウキの魔剣は、いとも簡単にコンクリートを真っ二つにした。
『…………………………………………』
三人の沈黙が流れる。
ただ一人、ラミアだけは誇らしげに胸を張っていた。
やがて百恵ちゃんが額を押さえながら呟く。
「だから馬鹿馬鹿しくなると言ったのじゃ……」
「……思ったより早く片付いたね。やるじゃないか」
ラミアのおかげで会得した結界術で、残るコンクリートを細切れにし全ての片付けが終わった頃、女将さんが現れて、そう褒めてくれた。
「はい! 終了いたしました!! ご指導ありがとうございました!!」
何はともあれ、女将さんのおかげで急成長出来た私は、もうすっかり彼女の弟子気分である。
「……なぁに、私は何も教えちゃいないよ? お前の筋が良かっただけだよ」
謙遜してそう言ってくる女将さんだったが、
「……筋がいいの一言で片付けられてたまるか」
それに仏頂面で答える百恵ちゃん。
「おや、何だい百恵? 随分つまらなそうな顔してるじゃないか?」
「当たり前じゃっ!! 吾輩達がずっと苦労して鍛錬している術も、能力も、こうも簡単に使いこなされてしまったら立場というものが無くなるわ!!」
涙目になって悔しがる彼女。
う……そう言われるとホント……申し訳ない。
「……なんだい、随分ケツの穴の小さい事言うねえ? 天才百恵の名が泣くよ?
いいじゃないか、私達はべつに競争してるわけじゃないんだから、同じ釜の飯を食う者同士、協力し、助け合うのが組織の第一理念だった筈だよ? 優秀な能力者が出来るぶんには私は構わないがねぇ」
「……う……し、しかし女将は悔しくないのか? 長年苦労して積み上げてきた研鑽を、こうも簡単に真似られてしまったのじゃぞ!! 納得がいかんじゃろ!??」
「納得かい? ……そうだねぇ」
そう言って不敵に笑う女将さんは、まだ術を解いていない私のホウキに手を触れる。
「あ、危ない――――、」
しかし、その瞬間――――、
ばきぃんっ!!
と、呆気なくホウキは術ごと破壊され砕かれてしまった。
あんぐりと口を開けて放心する私とラミア。
「確かに、この程度で真似たと思われたら、納得はいかないかもねぇ」
女将さんの表情にはまだまだ余裕が有り余っているように見えた。
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