超能力者の私生活

盛り塩

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第151話 対決・アマノウズメ⑤

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 ……な、何だこれ…………???
 片桐さんが作り出した巨大な空間の歪みに、私は恐怖を感じていた。

 ――――ま、まさか……これ、全部が『アスポート』なのか?

 その範囲はゆうにこの建物の大きさを超えている。
 こんなものが発動されたら。
 その先を考えて、私の血の気は音を立てて引いていく。

「ゴォワァァァァァァァァッ!!!!」

 真唯さんが、いや、アマノウズメが威嚇の咆哮を上げる。
 こんなものを食らえば、さすがのかの神も耐えきれないと悟ったのだろう。
 そして対抗すべく彼女も最大限のアスポートを作って見せるが、

「ふん、それで限界かしら? 所詮は付け焼き刃よね」

 片桐さんが鼻で笑う。
 アマノウズメの出したアスポートは彼女の半分にも満たない大きさだった。

「……う……うぐるるるるるるぅぅぅぅぅ」
「次に相対する時は、能力だけじゃなく術者の熟練度も『見極める』ことね」
「う……がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 ――――ゴッ!!!!
 そして放たれるアマノウズメのアスポート!!

 それは床を削り、空間をも消し去り片桐さんに襲いかかる!!
 その大きさはそれでもゆうに彼女の背丈を超えている。
 しかし――――、

「――――ま、次はもう来ないけどもね」

 ――――――――ドゴッ!!!!
 その倍以上はある片桐さんの術が、戦乙女《ワルキューレ》から放たれた!!

 歪んだ空間のトンネルが一直線に放たれる。
 それはアマノウズメのアスポート模倣品をたやすく飲み込み、建物の全てを亜空間へと消し飛ばしていく!!

「ガァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 迫りくる悪魔の口に最大限の結界を張って対抗するアマノウズメだが、

 ガガッ――――バキバキバキバキバキッ!!!!

 巨大なローラーに押しつぶされるが如く、その圧倒的な力の前に一瞬の抵抗すら許されない。

 ――――そして、

 ゴガォォォォォォォォォーーーーーーッ!!!!

 大地を削り、向かう物全てを飲み込みながらその力は空へと消えて行った。
 半壊した建屋の中から見えたのは、龍が暴れたかのように陥没した地面とそれに巻き込まれ、削られた住宅、そしてその破壊の前に仁王立ちする片桐さんだけ。

 真唯さんの姿は――――跡形もなく消えていた。




「死ぬ子先生……」

 無数の管に繋がれた死ぬ子先生が、変わり果てた姿で集中治療室のベッドに寝かされていた。

 ここは長浜市内のとある総合病院。

 ここの設備の一部を隔離し、JPAから緊急派遣された医療スタッフが死ぬ子先生の生命維持を行っていた。
 隣には百恵ちゃんが祈るような目で私を見上げている。

 あの後、私は残る力を振り絞り自己回復をした。
 ほとんど無意識だったのだが、もしかしたらラミアが独断で能力を使ったのかもしれない。
 しかし、アマノウズメの吸収によりほとんど精気が残っていなかった私は、術後、干からびたミイラのように枯れ果て仮死状態に陥ったらしい。

 それから一週間。

 医療スタッフさんの献身的な治療により、何とか回復出来た私は目覚めとともに百恵ちゃんに助けを求められた。
 同じく治療を受けている死ぬ子先生の命が今にも消えかかっているというのだ。

 死ぬ子先生は暴走した真唯さんに腹部を裂かれ、全身の骨を砕かれていた。
 医療スタッフの半分は死ぬ子先生の部下の人たちだった。
 彼らが言うには先生はもうすでに助かる状態じゃなく、私の回復術だけが頼みの綱だという。
 なので私が目覚めるまでは、手段を問わず、ただ命の炎を絶やさない事だけに全力を尽くしていたらしい。

「体はすでに手の施しようがなく、頭を生かすため首から切断処理をしました。生きている脳には麻薬を投入し、感覚を完全に遮断しています」

 担当医師が淡々と説明する。

 機械から伸びた赤い色をした管が頭へと差し込まれている。
 たぶん人工心臓からの血液だろう。
 残った身体は血を抜かれ、腐敗処理をされた状態で置かれている。
 その痛々しい姿を見て、百恵ちゃんが小さく震えている。

「ヒロイン……お願いじゃ…………姉を――――、」

 縋るように訴えかける百恵ちゃんの頭にそっと手を置くと、私は彼女の言葉を遮った。
 頼まれずとも、やらないはずがないからだ。
 私の前に三人の大きな男たちが現れた。

「宝塚様、また我々三人の精気をお使い下さい!!」

 この人達は先生の直属の部下たち。
 瞬との戦いの際に、私の能力回復のためその精気をわけてくれた人達だ。

 今の私は回復したとはいえ、まだ痩せている。
 先生を回復させるにはもう一段階精気を溜め込む必要があった。
 経験上、それを理解して準備してくれていたのだ。

「助かります。ではまた頂戴しますね」

 そう言って私は三人の男性の手を握った。
 先生よ、後でこの人たちにボーナスを上げるんだぞ?

「――――ラミア」
『キュウゥイ♪』

 そして見守る医療スタッフのどよめきの中、死ぬ子先生は五体満足な姿で目を覚ましたのだった。
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