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第195話 守り手⑤
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「――――ザキエルッ!!!!」
結びの力言葉を唱えると、周囲の空気がざわつき、その力がクロードの足元へと集まっていく。
風はクロードと、その手に吊るされたアルテマを中心に竜巻を作り始めた。
「……な、なにを……?」
全力魔力放出の弊害で、いまだ頭と身体がしびれているアルテマは、ろくに抵抗できぬまま、強い渦となった空気に為す術もない。
「決まっている。こうしてやるのだ」
不敵な笑みを浮かべる。
クロードはその渦に乗せるようにアルテマの体を離した。
「――――なっ!? き、貴様っ!?」
中心から外されたアルテマの小さな体は、竜巻の渦に簡単にもっていかれ、
「なぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁっ――――っ!???」
あっという間に、遥か上空へ打ち上げられてしまった。
飛ばされたアルテマはバタバタと手足をかいてみせるが、風の鎖に巻き付かれた体はどこにも移動することができない。
その様《さま》を下から見上げるクロードは、
「殺しはしないと言ったが、しかしそれなりのケジメはつけさせてもらうぞ? そう……敗者の恥辱という名のケジメをなぁ、ふははははははははははっ!!!!」
大きく、勝ち誇った高笑いを上げる。
そして両手に特大のラグエルを充填し始めた。
その光を見たアルテマはサッと顔から血の気を引かせる。
「お、お、お前……ま、まさか……!?」
「ふん、知れたこと。空中で身動きが取れぬ貴様に、もはやコレをかわす術《すべ》などあるまい?」
風魔法『ザキエル』と光魔法『ラグエル』のコンボはクロードの得意技。
敵を宙に飛ばし、動きを封じてからラグエルを命中させる。
そしてその一撃をくらった者はどうなってしまうのか?
普段のアルテマなら、アモンの爆風を利用して空中でも動いてみせるのだが、いまはまだ、一時的に抜けた魔力が回復してこない。
「バ、バカやめろ……き、貴様何を考えている!?」
「とある紳士から聞いた。……この世界では、敗北した女騎士はみな〝敗北脱ぎの刑〟にあうと……貴様も、知らぬわけではあるまい?」
「知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らーーーーーーーぬっ!!!!」
そんな話聞いたこともない!!
どこだ、どこ発信の情報だそれはっ!!!!
泣き叫ぶアルテマの視界の端で、いつのまにか目を覚ましていたアニオタが、眼鏡を眩しいほどに光らせて、千切れんほどに首を縦に振っていた。
「さ、さすがクロード殿でござる。お、お、おおお〝女騎士と敗北脱ぎ〟は、我ら二次元愛好家同盟において絶対不滅普遍の美徳!! その究極ともいえる美の理《ことわり》に抗うことは、神の御顔にコークスクリューパンチを食らわすに同義の冒涜!! 決して許されることではないのでござるーーーーーーーーっ!!!!」
自らのスマホを動画モード。さらにヨウツベからふんだくった一眼レフを構え、決定的瞬間にそなえて仰向けに寝そべる。
「き、貴様のせいか馬鹿者―ーーーっ!! つまらぬことしてないで目覚めたならコノ馬鹿に蹴りの一つでも入れてくれっ!!」
真っ赤になって怒鳴るアルテマだが、
「無理」
至極明快簡潔に断られてしまった。
隣りにいるヨウツベもちゃっかり目を覚まし、そこまで露骨ではないにせよ、ハンディカムを手放そうとしない。
「ん、な、ば、か、か、か、か――――ッ!???」
この土壇場にて、なにを煩悩むき出しに裏切っているのだ、あの男どもは!?
言葉を無くし、青ざめるアルテマ。
そうこうしているうちにラグエルの充填が完了する。
「くっ――――ま、まて、やめろクロード!??」
真っ赤に恥じて、身をくねらせるアルテマに、
「郷に入っては郷に従え。貴様には世の戒律《かいりつ》に則《のっと》った敗北をくれてやろう!! ふはは、ふははははは、ふははははははははははははは、はーーーーーーーーーははははははははははっ!!!! ――――ラグエルっ!!!!」
勝利(初)に酔いしれたクロードは、その神々しい光をかかえた両手を大高笑いとともに全力で天に突き上げた!!
「ま、や……やだっ!!」
――――ゴッ!!!!
涙を浮かべるアルテマへ、回避不可能・超巨大なラグエルが襲いかかる!!
そしてその身を包む、神聖な巫女服を跡形もなく消し去った。
――――かに思われたが。
「やめんか、このボケ」
ごき。
「あ」
光がクロードの手から離れる瞬間、横から何者かがその手を引っぱった。
突然、照準を変えられてしまったラグエルは、止めようにも、もう止まらない。
「え? ちょ? お、お前は??」
手を引いた者の正体を見て、今度はクロードが青ざめる番だった。
「私の前でアルテマちゃんを泣かせるなんて……あんたもいい度胸してるわね」
その者の名はぬか娘。
神聖魔法を跳ね返す、クロードにとっては天敵ともいえる〝逆神《ぎゃくしん》の鏡〟を身にまとったもう一人の女戦士であった。
――――カッ!!!!
ラグエルは、その手が向かうまま、ぬか娘へと放たれ、
――――パキャァァァァァァァァンッ!!!!
そしてその原則に従って、真っ直ぐにクロードへと跳ね返された。
結びの力言葉を唱えると、周囲の空気がざわつき、その力がクロードの足元へと集まっていく。
風はクロードと、その手に吊るされたアルテマを中心に竜巻を作り始めた。
「……な、なにを……?」
全力魔力放出の弊害で、いまだ頭と身体がしびれているアルテマは、ろくに抵抗できぬまま、強い渦となった空気に為す術もない。
「決まっている。こうしてやるのだ」
不敵な笑みを浮かべる。
クロードはその渦に乗せるようにアルテマの体を離した。
「――――なっ!? き、貴様っ!?」
中心から外されたアルテマの小さな体は、竜巻の渦に簡単にもっていかれ、
「なぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁっ――――っ!???」
あっという間に、遥か上空へ打ち上げられてしまった。
飛ばされたアルテマはバタバタと手足をかいてみせるが、風の鎖に巻き付かれた体はどこにも移動することができない。
その様《さま》を下から見上げるクロードは、
「殺しはしないと言ったが、しかしそれなりのケジメはつけさせてもらうぞ? そう……敗者の恥辱という名のケジメをなぁ、ふははははははははははっ!!!!」
大きく、勝ち誇った高笑いを上げる。
そして両手に特大のラグエルを充填し始めた。
その光を見たアルテマはサッと顔から血の気を引かせる。
「お、お、お前……ま、まさか……!?」
「ふん、知れたこと。空中で身動きが取れぬ貴様に、もはやコレをかわす術《すべ》などあるまい?」
風魔法『ザキエル』と光魔法『ラグエル』のコンボはクロードの得意技。
敵を宙に飛ばし、動きを封じてからラグエルを命中させる。
そしてその一撃をくらった者はどうなってしまうのか?
普段のアルテマなら、アモンの爆風を利用して空中でも動いてみせるのだが、いまはまだ、一時的に抜けた魔力が回復してこない。
「バ、バカやめろ……き、貴様何を考えている!?」
「とある紳士から聞いた。……この世界では、敗北した女騎士はみな〝敗北脱ぎの刑〟にあうと……貴様も、知らぬわけではあるまい?」
「知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らぬ知らーーーーーーーぬっ!!!!」
そんな話聞いたこともない!!
どこだ、どこ発信の情報だそれはっ!!!!
泣き叫ぶアルテマの視界の端で、いつのまにか目を覚ましていたアニオタが、眼鏡を眩しいほどに光らせて、千切れんほどに首を縦に振っていた。
「さ、さすがクロード殿でござる。お、お、おおお〝女騎士と敗北脱ぎ〟は、我ら二次元愛好家同盟において絶対不滅普遍の美徳!! その究極ともいえる美の理《ことわり》に抗うことは、神の御顔にコークスクリューパンチを食らわすに同義の冒涜!! 決して許されることではないのでござるーーーーーーーーっ!!!!」
自らのスマホを動画モード。さらにヨウツベからふんだくった一眼レフを構え、決定的瞬間にそなえて仰向けに寝そべる。
「き、貴様のせいか馬鹿者―ーーーっ!! つまらぬことしてないで目覚めたならコノ馬鹿に蹴りの一つでも入れてくれっ!!」
真っ赤になって怒鳴るアルテマだが、
「無理」
至極明快簡潔に断られてしまった。
隣りにいるヨウツベもちゃっかり目を覚まし、そこまで露骨ではないにせよ、ハンディカムを手放そうとしない。
「ん、な、ば、か、か、か、か――――ッ!???」
この土壇場にて、なにを煩悩むき出しに裏切っているのだ、あの男どもは!?
言葉を無くし、青ざめるアルテマ。
そうこうしているうちにラグエルの充填が完了する。
「くっ――――ま、まて、やめろクロード!??」
真っ赤に恥じて、身をくねらせるアルテマに、
「郷に入っては郷に従え。貴様には世の戒律《かいりつ》に則《のっと》った敗北をくれてやろう!! ふはは、ふははははは、ふははははははははははははは、はーーーーーーーーーははははははははははっ!!!! ――――ラグエルっ!!!!」
勝利(初)に酔いしれたクロードは、その神々しい光をかかえた両手を大高笑いとともに全力で天に突き上げた!!
「ま、や……やだっ!!」
――――ゴッ!!!!
涙を浮かべるアルテマへ、回避不可能・超巨大なラグエルが襲いかかる!!
そしてその身を包む、神聖な巫女服を跡形もなく消し去った。
――――かに思われたが。
「やめんか、このボケ」
ごき。
「あ」
光がクロードの手から離れる瞬間、横から何者かがその手を引っぱった。
突然、照準を変えられてしまったラグエルは、止めようにも、もう止まらない。
「え? ちょ? お、お前は??」
手を引いた者の正体を見て、今度はクロードが青ざめる番だった。
「私の前でアルテマちゃんを泣かせるなんて……あんたもいい度胸してるわね」
その者の名はぬか娘。
神聖魔法を跳ね返す、クロードにとっては天敵ともいえる〝逆神《ぎゃくしん》の鏡〟を身にまとったもう一人の女戦士であった。
――――カッ!!!!
ラグエルは、その手が向かうまま、ぬか娘へと放たれ、
――――パキャァァァァァァァァンッ!!!!
そしてその原則に従って、真っ直ぐにクロードへと跳ね返された。
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