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1章 感情能力試験編
いつもの日常
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ーー「……信!おい信!聞いているのかぁ!?」
身長170センチ後半、筋肉質な体育教員の大声が教室に響いた。机で寝ている男子生徒を起こそうとしていたからだ。
信と呼ばれる生徒がその声で目覚めた時には、担任である導教学(どうきょうがく)が仁王立ちし、叫び疲れていた。
「……僕はさっきから起きてましたよ?導教先生。ほら、僕に構っていたら授業時間がもったいないです。授業を続けてください」
本当は導教の大声で目覚めたのだが、信は誤魔化す事に決め込む。
信がそう言うと、「授業ならもうとぉっっくに!終わっとるだろうがっ!」と、導教に怒鳴られてしまう。信はすぐに横目で教室を見渡す。
――教室には自分と導教先生の2人しか残っていないことに気がついた。
……これは誤魔化せない。
「ったく、もうとっくに下校時間はすぎているぞ?お前は勉強の点はそこまで悪くないんだ……もう少し生活態度を改めたらどうなんだ。」
導教が小言をこぼし始める。このようなやりとりはこれが初めてではなく、信がこの高校に入学し、1週間に数回はこのようなやりとりがある。学年が上がっても担任が変わっていないのだ。
導教は声こそ大きいが顔は呆れ顔になっていた。
「ほら信。さっさと帰んないと一緒に帰ってる奴らの帰りも遅くなるぞ!」
導教はアゴで出口を指しながら言った。
「じゃあ帰ります、先生また明日ー」
信は早口で挨拶を済ませて立ち上がり、教室を出ようとする。
それを聞いた導教は「明日は土曜日だ……まぁ今日寝てた分、学校に来てもいいぞ?」少しニヤケながら言い、信にスマートグラスと呼ばれるデバイスを投げ渡す。
「おっよっと。明日は自宅でしっかり勉強しまーす」
信はスマートグラスをキャッチしながら棒読みで伝え、そのまま教室を出た。
廊下を歩きながら信はスマートグラスを左耳にかける。折り畳まれていた部分が前に伸び出し、左目の前に透明なグラスが設置される。
ーーログイン画面が表示され、自動的にログインされる。時計機能を確認すると17時30分になっていた。
下校時間は17時であることから、30分ほど遅れての下校となる。
信は部活動に加入していないため、下校時間になると帰宅している。そのため、信を起こしてくれるような人はごく一部に限られており、他の生徒たちからはほとんど起こされることはない。
起こしてくれるような友人が少ないと言った方が適切かもしれないが……。
――玄関で外ぐつを出した際、後ろに人がいることに気がつき、信は話しかける。
「今日の部活は終わったのか?國陰」
髪型はおかっぱで黒縁メガネをかけ、影が明らかに薄いような少年が靴を履き替えようとしていた。
この少年は國陰白(クニカゲハク)だ。
他の生徒から話しかけられたら話すが自らはあまり話すことはない男子。右後ろの隅っこの席でいつも分厚い難しそうな本を読んでいる。
信に話しかけられた國陰は「いえ、さっき父上から伝令がありまして。すぐに帰宅するようにってね……それでは」
信にそう答えると小さく頭を下げ、素早い駆け足で帰っていった。
「俺も帰るか……」
靴を履き、外に出た際に信は声をかけられる。
「やっと起きたのか?寝坊やろう」
低めのイケボで喉元に傷がある男子生徒が話しかけてきた。
「いや、起こせよな鉄」
信よりも身長が何ぼか高いこの男子は国守鉄(クニモリテツ)だ。鉄とは保護学校時代からつるんでいる。制服のシャツを出し、一見だらしなさそうに見えるがそれをしっかりと着こなしている。
一応、この国の安全と秩序を守る国守家の息子だ。こいつの妹はしっかりしているのだが……。
「いや、お前寝てる時スッゲー変な手つきしてたぞ、周りの女子はそれを見てドン引きだった」
起こさなかった理由を鉄はニヤニヤしながら教えてきた。
……おいおいまじかよ、それはキッツイよなぁ、と信は思った。
「おい、真に受けるなよ信……」
信は昔から何か言われると真に受けるタイプだった。そのため、今の環境は信にとってあまりいいものではないと鉄は思っていた。
――高校から下校した二人は小さな公園に差し掛かった。
「あっ!てっちゃん!それに信!遅いよぅ!?」
砂浜で子どもと公園で遊んでいた女子が声をかけてくる。
「じゃあうち、友達来たからまたね!」そう子どもに伝え、2人に駆け寄ってきたのは国栄花(クニザカハナ)だ。
誰にでも優しく同じ態度で話しかけ、人懐っこく、物腰が柔らかい女子だが、芯はしっかりとしている。
さすがは国のテステム繁栄を担っている国栄家の1人娘だと信は思う。母が外国人であるため、肌は白く、髪色は金髪、目の色はあおみがかった綺麗な色をしている。
初対面の人が花を日本人だと見分ることは中々難しいだろう。身長は俺よりも少し低いくらいだが、ヒールを履いたら間違いなく越されてしまう。
「何で遅くなったのー?また導教先生に注意されてたんでしょ?」
花が小首を傾げて、信に聞いてきた。
「こいつがまた授業中に寝てたんだよ、いつも通りだ」
鉄が即答する。
「またー?」
笑いながら花は信の顔を見ながら話す。こうやって学校が終わると3人で帰る……。これが彼らの日常だ。
夕焼けを見ながらふと思い出したように花は2人に話しかける。
「あ!そうえばさぁ、明日は体術授業があるよね~はぁ……めんどくさいなぁ~」花はため息混じりにそう言った。
信はすっかり忘れていた。前期末に全校生徒で行われる感情能力の体術試験があると言うことを。
花の言葉を聞き、鉄は信に問いかける。
「今回はどうやって休むんだ?腹痛か?捻挫か?睡眠不足か~?」
鉄は信に肩を組み、ニヤケながら聞いた。
「明日は……どうすっかなぁー」
明日サボる理由を考えながら信は下校した。
身長170センチ後半、筋肉質な体育教員の大声が教室に響いた。机で寝ている男子生徒を起こそうとしていたからだ。
信と呼ばれる生徒がその声で目覚めた時には、担任である導教学(どうきょうがく)が仁王立ちし、叫び疲れていた。
「……僕はさっきから起きてましたよ?導教先生。ほら、僕に構っていたら授業時間がもったいないです。授業を続けてください」
本当は導教の大声で目覚めたのだが、信は誤魔化す事に決め込む。
信がそう言うと、「授業ならもうとぉっっくに!終わっとるだろうがっ!」と、導教に怒鳴られてしまう。信はすぐに横目で教室を見渡す。
――教室には自分と導教先生の2人しか残っていないことに気がついた。
……これは誤魔化せない。
「ったく、もうとっくに下校時間はすぎているぞ?お前は勉強の点はそこまで悪くないんだ……もう少し生活態度を改めたらどうなんだ。」
導教が小言をこぼし始める。このようなやりとりはこれが初めてではなく、信がこの高校に入学し、1週間に数回はこのようなやりとりがある。学年が上がっても担任が変わっていないのだ。
導教は声こそ大きいが顔は呆れ顔になっていた。
「ほら信。さっさと帰んないと一緒に帰ってる奴らの帰りも遅くなるぞ!」
導教はアゴで出口を指しながら言った。
「じゃあ帰ります、先生また明日ー」
信は早口で挨拶を済ませて立ち上がり、教室を出ようとする。
それを聞いた導教は「明日は土曜日だ……まぁ今日寝てた分、学校に来てもいいぞ?」少しニヤケながら言い、信にスマートグラスと呼ばれるデバイスを投げ渡す。
「おっよっと。明日は自宅でしっかり勉強しまーす」
信はスマートグラスをキャッチしながら棒読みで伝え、そのまま教室を出た。
廊下を歩きながら信はスマートグラスを左耳にかける。折り畳まれていた部分が前に伸び出し、左目の前に透明なグラスが設置される。
ーーログイン画面が表示され、自動的にログインされる。時計機能を確認すると17時30分になっていた。
下校時間は17時であることから、30分ほど遅れての下校となる。
信は部活動に加入していないため、下校時間になると帰宅している。そのため、信を起こしてくれるような人はごく一部に限られており、他の生徒たちからはほとんど起こされることはない。
起こしてくれるような友人が少ないと言った方が適切かもしれないが……。
――玄関で外ぐつを出した際、後ろに人がいることに気がつき、信は話しかける。
「今日の部活は終わったのか?國陰」
髪型はおかっぱで黒縁メガネをかけ、影が明らかに薄いような少年が靴を履き替えようとしていた。
この少年は國陰白(クニカゲハク)だ。
他の生徒から話しかけられたら話すが自らはあまり話すことはない男子。右後ろの隅っこの席でいつも分厚い難しそうな本を読んでいる。
信に話しかけられた國陰は「いえ、さっき父上から伝令がありまして。すぐに帰宅するようにってね……それでは」
信にそう答えると小さく頭を下げ、素早い駆け足で帰っていった。
「俺も帰るか……」
靴を履き、外に出た際に信は声をかけられる。
「やっと起きたのか?寝坊やろう」
低めのイケボで喉元に傷がある男子生徒が話しかけてきた。
「いや、起こせよな鉄」
信よりも身長が何ぼか高いこの男子は国守鉄(クニモリテツ)だ。鉄とは保護学校時代からつるんでいる。制服のシャツを出し、一見だらしなさそうに見えるがそれをしっかりと着こなしている。
一応、この国の安全と秩序を守る国守家の息子だ。こいつの妹はしっかりしているのだが……。
「いや、お前寝てる時スッゲー変な手つきしてたぞ、周りの女子はそれを見てドン引きだった」
起こさなかった理由を鉄はニヤニヤしながら教えてきた。
……おいおいまじかよ、それはキッツイよなぁ、と信は思った。
「おい、真に受けるなよ信……」
信は昔から何か言われると真に受けるタイプだった。そのため、今の環境は信にとってあまりいいものではないと鉄は思っていた。
――高校から下校した二人は小さな公園に差し掛かった。
「あっ!てっちゃん!それに信!遅いよぅ!?」
砂浜で子どもと公園で遊んでいた女子が声をかけてくる。
「じゃあうち、友達来たからまたね!」そう子どもに伝え、2人に駆け寄ってきたのは国栄花(クニザカハナ)だ。
誰にでも優しく同じ態度で話しかけ、人懐っこく、物腰が柔らかい女子だが、芯はしっかりとしている。
さすがは国のテステム繁栄を担っている国栄家の1人娘だと信は思う。母が外国人であるため、肌は白く、髪色は金髪、目の色はあおみがかった綺麗な色をしている。
初対面の人が花を日本人だと見分ることは中々難しいだろう。身長は俺よりも少し低いくらいだが、ヒールを履いたら間違いなく越されてしまう。
「何で遅くなったのー?また導教先生に注意されてたんでしょ?」
花が小首を傾げて、信に聞いてきた。
「こいつがまた授業中に寝てたんだよ、いつも通りだ」
鉄が即答する。
「またー?」
笑いながら花は信の顔を見ながら話す。こうやって学校が終わると3人で帰る……。これが彼らの日常だ。
夕焼けを見ながらふと思い出したように花は2人に話しかける。
「あ!そうえばさぁ、明日は体術授業があるよね~はぁ……めんどくさいなぁ~」花はため息混じりにそう言った。
信はすっかり忘れていた。前期末に全校生徒で行われる感情能力の体術試験があると言うことを。
花の言葉を聞き、鉄は信に問いかける。
「今回はどうやって休むんだ?腹痛か?捻挫か?睡眠不足か~?」
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