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1章、契約の内容
31.ニーナ視点
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グレン様が21歳になられた時、伯父様は爵位を譲られた。
伯父様とグレン様の弟のロイ様は、第二の領都であるジュマへと行ってしまった。
わたしはなぜかそれに合わせて部屋が変わった。
グレン様の隣。
奥様になるべき方の部屋よね?
確認すれば、一番環境に良いからだと言われた。
いいのかしら。
大丈夫なの?
そしてメイドの数が増えた。
発作が増えるようになり、かかりつけの医師がついた。
いたせりつくせり・・・。
不安になる。
母様は贅沢をはじめた。わたしの為といいながら何着もドレスを買う。
わたしは着ないよ。
わたしの為に宝石を選ぶ。
わたしはいらない。
わたしの為にと言って出かける?
どういうこと?わからない。
メイドたちは仕事なんてしない。ただ、わたしをおだてながら、おしゃべりをするだけ。
それが仕事だって言うの。どんな仕事なの?
わたし、おしゃべりじゃなくて本を読んだり、刺繍をしたり勉強をしたいのに・・・。
誰も気づいてくれないし、聞いてもくれない。言わしてもくれない。
言っても、笑って流される。
わたしはなんなの?
みんな、素晴らしい方だと言うの。
わたしの何が素晴らしいの?
苦しくても笑わなきゃいけないじゃない。
悲しくても笑わなきゃダメなんだ。
褒めればいいの?じゃあ、褒めてあげる。
我慢、
我慢。
がまん・・・。
しんどい。
どうせ、わたしの命はあと少し。
もうすぐ死ぬわ。
わかるもの。
それまでの我慢。
早く死んでみんなを解放してあげたい。
お父様・・・。
やっぱり、死にたくない。
生きて、走ってみたい。
働いてみたい。
でも、叶わない。
苦しい・・・。
夜中、誰もいない所で泣いた。
物音が聞こえて振り向くと、マクロン様が・・・気まづそうにしていた。
そして、優しく包み込んでくれた。
「泣いてください。お辛いので、しょう」
頷いた。弱音をはいた。
「怖いの。いつ死ぬかもしれない。怖い。苦しい。心臓が痛くて、痛くてたまらないの。誰もわかってくれなくて、寂しくて、でも、でもっ!我慢しなきゃって・・・。どうしたらいいの?生きたいのに死ぬのが見えてるなんて・・・」
泣いた。泣いた・・・。
初めて心内を漏らすことができた。
マクロン様はただ、黙って聴いてくれた。
慰めの言葉はなかった。
逆に嬉しかった。
きっと、上部だけの慰めであったら、惹かれなかった。
じっと聞いてくれただけ。
それが、嬉しかった。
それから、マクロン様を追った。
見てるだけで幸せだった。
わたしはもう時期、死ぬ。
それでも、あなたに恋したい。
あなたの目に写りたい。
ふと、目線が合うこともある。恥ずかしくて目を逸らす。
そんなわたしを見て、メイドたちはキャーキャー言った。
そして、あの日、わたしは出会った。
茶色の髪にビン底メガネの少女に。
「あなたも、無理な時は無理と言いなさい。我慢はしないこと。身体も心も。我慢が一番悪いからね」
なぜかしら、
それだけの言葉にわたしは救われた気がした。
我慢しなくていいの?
無理な時は無理って言っていいの?
肩の力が少し抜けた。
死ぬことに、少しだけ恐怖が薄らいだ。
その二日後、銀髪に赤い目の少女がきた。
一ヶ月前メイドたちが噂をしていたグレン様の奥様である聖女様。
グレン様とわたしが恋仲と言う噂があるのは知っている。
どんなに否定しようとも信じてくれないから無視を決め込んでいた・・・。
きっと、聖女も信じて文句を言いに来たのね。
自業自得だわね。
わたしが悪いの。
怖い。赤い目が怖い。
「ごめん、な、さい」
そう言うと、彼女はコテンと首を傾げた。
あれ?
「なんであやまるの?わたし、あなたの治療に来ただけよ?ずっと我慢して・・・しんどいんでしょ。苦しんでしょ。心も身体も。わたしなら治せる。だから、手をとって」
手を差し伸べてくる。
メイドたちが騒いでいたけど、それより・・・怖かったはずの彼女の瞳に吸い込まれていた。
そして、なぜか先日あった子を思い出していた。
同じ。
わたしを思いやる気持ちが同じ。
自然に涙が溢れてきた。
本当の自分を見てくれている、そう感じた。
手をとると彼女は顔をくしゃくしゃにして笑った。
彼女は祈る。
わたしの為に。
それが、美しかった。
伯父様とグレン様の弟のロイ様は、第二の領都であるジュマへと行ってしまった。
わたしはなぜかそれに合わせて部屋が変わった。
グレン様の隣。
奥様になるべき方の部屋よね?
確認すれば、一番環境に良いからだと言われた。
いいのかしら。
大丈夫なの?
そしてメイドの数が増えた。
発作が増えるようになり、かかりつけの医師がついた。
いたせりつくせり・・・。
不安になる。
母様は贅沢をはじめた。わたしの為といいながら何着もドレスを買う。
わたしは着ないよ。
わたしの為に宝石を選ぶ。
わたしはいらない。
わたしの為にと言って出かける?
どういうこと?わからない。
メイドたちは仕事なんてしない。ただ、わたしをおだてながら、おしゃべりをするだけ。
それが仕事だって言うの。どんな仕事なの?
わたし、おしゃべりじゃなくて本を読んだり、刺繍をしたり勉強をしたいのに・・・。
誰も気づいてくれないし、聞いてもくれない。言わしてもくれない。
言っても、笑って流される。
わたしはなんなの?
みんな、素晴らしい方だと言うの。
わたしの何が素晴らしいの?
苦しくても笑わなきゃいけないじゃない。
悲しくても笑わなきゃダメなんだ。
褒めればいいの?じゃあ、褒めてあげる。
我慢、
我慢。
がまん・・・。
しんどい。
どうせ、わたしの命はあと少し。
もうすぐ死ぬわ。
わかるもの。
それまでの我慢。
早く死んでみんなを解放してあげたい。
お父様・・・。
やっぱり、死にたくない。
生きて、走ってみたい。
働いてみたい。
でも、叶わない。
苦しい・・・。
夜中、誰もいない所で泣いた。
物音が聞こえて振り向くと、マクロン様が・・・気まづそうにしていた。
そして、優しく包み込んでくれた。
「泣いてください。お辛いので、しょう」
頷いた。弱音をはいた。
「怖いの。いつ死ぬかもしれない。怖い。苦しい。心臓が痛くて、痛くてたまらないの。誰もわかってくれなくて、寂しくて、でも、でもっ!我慢しなきゃって・・・。どうしたらいいの?生きたいのに死ぬのが見えてるなんて・・・」
泣いた。泣いた・・・。
初めて心内を漏らすことができた。
マクロン様はただ、黙って聴いてくれた。
慰めの言葉はなかった。
逆に嬉しかった。
きっと、上部だけの慰めであったら、惹かれなかった。
じっと聞いてくれただけ。
それが、嬉しかった。
それから、マクロン様を追った。
見てるだけで幸せだった。
わたしはもう時期、死ぬ。
それでも、あなたに恋したい。
あなたの目に写りたい。
ふと、目線が合うこともある。恥ずかしくて目を逸らす。
そんなわたしを見て、メイドたちはキャーキャー言った。
そして、あの日、わたしは出会った。
茶色の髪にビン底メガネの少女に。
「あなたも、無理な時は無理と言いなさい。我慢はしないこと。身体も心も。我慢が一番悪いからね」
なぜかしら、
それだけの言葉にわたしは救われた気がした。
我慢しなくていいの?
無理な時は無理って言っていいの?
肩の力が少し抜けた。
死ぬことに、少しだけ恐怖が薄らいだ。
その二日後、銀髪に赤い目の少女がきた。
一ヶ月前メイドたちが噂をしていたグレン様の奥様である聖女様。
グレン様とわたしが恋仲と言う噂があるのは知っている。
どんなに否定しようとも信じてくれないから無視を決め込んでいた・・・。
きっと、聖女も信じて文句を言いに来たのね。
自業自得だわね。
わたしが悪いの。
怖い。赤い目が怖い。
「ごめん、な、さい」
そう言うと、彼女はコテンと首を傾げた。
あれ?
「なんであやまるの?わたし、あなたの治療に来ただけよ?ずっと我慢して・・・しんどいんでしょ。苦しんでしょ。心も身体も。わたしなら治せる。だから、手をとって」
手を差し伸べてくる。
メイドたちが騒いでいたけど、それより・・・怖かったはずの彼女の瞳に吸い込まれていた。
そして、なぜか先日あった子を思い出していた。
同じ。
わたしを思いやる気持ちが同じ。
自然に涙が溢れてきた。
本当の自分を見てくれている、そう感じた。
手をとると彼女は顔をくしゃくしゃにして笑った。
彼女は祈る。
わたしの為に。
それが、美しかった。
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