【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

彩華(あやはな)

文字の大きさ
32 / 150
1章、契約の内容

32.ニーナ視点

 全てが終わった時、清々しい気分だった。
 全てを許されたような気がした。
 柵がとけ、自由を感じた。

 グレン様がやってきて、わたしを抱きしめた。

 ちょっ、
 聖女様!!

 彼は聖女様を押し退けた。
 倒れた聖女様。
 
 初めて『怒り』が生まれた。



 ハイセン先生に見てもらう。

「ニーナ様。気分が悪いとかはありますか?」
「気分?腹は立ってます。そう言う意味では気分が悪いですね・・・」
「ははっ。そう言うことでしたら、大丈夫ですね」

 先生は口元を引き攣らせていた。

 先生は部屋に入ってきたグレン様たちに向かって完治を告げた。

 その時初めて、自分の病の完治を信じることができた。

 夢じゃないのね。

 嬉しい。

 喜んでいるとグレン様がわたしの前にひざまづいた。そして言った。

「ニーナ、わたしと結婚してくれ」

 軽蔑の眼差しのハイセン医師以外のメイドたちはうっとりと聞いていた。

 ふんっ!

 誰が!!




「嫌です」




 目が点。
 




「ニーナ?」



 聞こえなかったのね?
 じゃあ、もう一回言ってあげる。





「嫌です。しません」





 誰がするもんですか!



 もう一度、確認してみるわ。

「ハイセン先生。本当にわたし、大丈夫なんですよね?」
「えっ、あ、はい。大丈夫です」
「発作もなくなったのですよね。走っていいんですよね?」
「はい、走ってもダンスをしても、倒れることも、発作をおこすことはありません」
「ベッドを降りていいのよね?」
「はい。筋力が落ちているので、しばらくはリハビリが必要かと・・・」
「ううん、大丈夫みたい。わたしもう我慢しなくていいのよね」
「はいっ。我慢なさらなくて、もういいですよ」

 我慢しなくていいのね。
 これほど嬉しいことはない!!
 つい、泣いてしまった。
 生きている実感が湧いてくる。
 わたしは生きている。
 嬉しい。
 わたしの好きなこと言っていいのよね。

 ひとしきり泣いた後、グレン様を真っ直ぐにみて言った。
 

「グレン様。わたしグレン様をお兄様のように感じているだけで恋愛感情はありません!」
「ニーナ?」
「わたし好きな人がいるのですの。その方は、わたしが我慢していることも、悲しいことも理解してくれました。
 わたし、ずっと我慢してたの。でもグレン様たちはわたしに理想を押し付けるだけでしたわ。
 気分が悪いのに何時間も居座るし、ゆっくり読書をしたくても、あれこれ言って最後にはネタバレしてくるし。花の匂いが嫌な時だってあるのに押し付けてくるし、ほんと、なんなのよ!」

 やっと言えた。
 不敬罪であろうとどうでもいいわ。
 所詮、平民同然なんだから、当たってくだけろ、よ。
 この際、いいわよ。

「それに、わたしを治してくれた聖女様を押し倒して・・・正直に言って、最低、幻滅ですっ!!それに、聖女様はグレン様の奥様になりましたよね?ありえませんけど!!そんな人嫌いです!」

 ふん、言ってやったわ。
 ほんと、ひどいことをする!!
 聖女様、大丈夫かしら?

「ニー・・・ナ?」
「すっきりした。やっと言えたわ。グレン様。わたしこんな人間よ。知らなかったでしょ」
「ニ・・・ナ・・・」

 わたしは床にしっかり足をつけ立ちあがる。やっぱり、筋肉の衰えなんていない。

 聖女様の力はすごいわ。
 感謝しかない!!
 ありがとうございます。

 わたし、一世一代のことします。
 もう、我慢はしませんっ!!
 聖女様、ありがとうございます。

 言うわ。

「わたし、マクロン様が好きなの」

 そう言ってわたしは彼の元に飛び込んできた。

 受け止めてくれた。
 抱きしめてくれた。

「ニーナ様・・・」
「ニーナ、よ。マクロン様。わたしをあなたのお嫁さんにしてください」
「勿論です。わたしも・・・わたしも貴女を、愛しています。妻になってください」


 やった。
 幸せだわ・・・。

 マクロン様はキスをしてくれた。
 



 ーとろけそう・・・。








◇◇◇◇◇

これで1章が終了になります。
2章から哀れなフラレ男と聖女様がすこしだけ絡んでいきます。

できれば、哀れなフラレ男にも声援を送ってあげてほしいですが・・・無理ですね・・・。

明日、登場人物紹介をいれます。
進行都合で一章と二章の登場人物紹介だけになります。

感想 434

あなたにおすすめの小説

娘を毒殺された日、夫は愛人と踊っていた――聖女と呼ばれた私は、王家を静かに崩壊させる

唯崎りいち
恋愛
異世界に転移し、“聖女”として王太子ジークフリートに嫁がされたフェリシア。 愛のない結婚の中で、唯一の救いは娘シャルロットだった。 しかし五歳の娘は、父から贈られたネックレスによって毒殺される。 娘が死んだ日。 王宮では祝賀会が開かれ、夫は愛人と踊っていた。 誰も娘の死を悲しまない世界で、ただ一人涙を流したのは、第八王子リュカだけだった。 やがてフェリシアは知る。 “聖女は子を産んではならない”という王家の禁忌と、娘の死の裏にある政治的思惑を。 ――これは、娘を奪われた聖女が、王家を静かに崩壊へ導いていく物語。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

夫の幼馴染が「あなたと結婚できなかった」と泣いた日、私は公爵夫人をやめると決めました

柴田はつみ
恋愛
舞踏会で、エレノアは聞いてしまった。 「あなたと結婚できなかったことが、今でも苦しいの」 そう泣いたのは、夫アレクシスの幼馴染ローズだった。 優しい夫。けれど、その優しさはいつも彼女へ向けられる。 公爵夫人として隣にいるのは自分なのに、彼の心だけは別の場所にあるのだと思っていた。 だからエレノアは、静かに決める。 もう、あなたの妻でいることを望みません。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。