【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

彩華(あやはな)

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3章、サウロス山脈魔討伐

番外編、アレクディアと兄妹

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 辺境伯会議。

 王都に年に一度、各辺境伯が集まり現状況を話し合う会議がある。

 わたしがシェリルにあったのは7年ほど前の事だった。
 まだあの子は8歳の子供だった。

 正式な話し合いは終え、・・・個人的な雑談をするために神殿の隠された部屋に行っていた時だった。

 同年代の辺境伯。気心もしれ、公の場ではなにかと差し支えがあるため、司祭であるレニーがこの場を貸してくれているのだ。

 部屋にいくと、奴らは既に来て宴会が既に始まっていた。

 そこへレニーがやってきた。
 聖女たちを連れて。
 今までにも幾度か顔を合わせていた。
 皆生意気で大人をやり込めるほど口が悪い。
 そんな彼女らが、この日チラチラとレニーの足元を見ているのだった。

「シェリル。ほら」

 レニーの服の握りしめた小さな女の子。
 ヒョロリとして小さい。
 銀の髪に赤い目。
 恥ずかしそうに顔を覗かせた。

「なんだ、レニー、新顔か?」
「はい。シェリルといいます。皆様よろしくお願いします」
「おねがい、ちましゅ」

 辿々しい言葉。

「この子の代償は?」

 『代償』は知っている。聖女たちの・・・。

 ウララ嬢がシェリルを抱き上げた。
 嬉しいのか、ぎゅっと抱きしめて笑っていた。その目が赤々と輝いているのが印象に残る。

 笑っているシェリルを見ながらも暗い表情。
 
「記憶の消失、です」

 記憶?
 ・・・代償が大きい。
 なのか?
 庇護欲を掻き立てるのか?

「シェリルは浄化、癒し、結界が使えます」
「なんと・・・」
「そのせいで代償が大きいようです」
「使わせたくない、のか?」
「はい、できる限り。わたしが見つけた時は、表情もなく言葉があまり出ませんでした。やっと・・・やっとこうして笑ってくれるようになりました」
「やっとか・・・」
「どこでみつけた?」
「地方の神殿です。彼女の力を無闇に使っているのを聞いて・・・。もっと言えば売られた、ですか・・・」
「人身売買か・・・」
「根が深いな・・・」
「アジトでもわかれば・・・」
「奴らは上手く隠れている・・・」
「皆様」
「わかってる。に気づかれないように調べるよ」
「お願いします」

 小さなあの子の笑顔を守ってやりたい、そう思った。




 北の辺境地に帰り毎日執務をこなす。
 Sクラスの魔獣が現れ、騎士だけでは手に負えずギルドに依頼をした。

 そこに現れたのはAランク・・・Sランクに近いと噂の『天満の月あまみつのつき』だった。

 依頼も達成して、挨拶に来てくれた。
 なかなかな感じの良いパーティーに思えた。

 5人いるメンバーそれぞれが美男美女。その中の一人が美しい銀の髪をした男性でアシュリードだった。
 
 彼らの実力は思った以上のものだった。
 人懐こいリーダーとは違い彼にはどこか影があった。

 「いつも通り聞いとくのか」

 リーダーが彼に聞くと、濃い紫の目がわたしを射抜くように見てきた。

 「人探しをしています。銀の髪で赤い目の8歳の女の子を知りませんか?」

「聖女か?」
「「「「「聖女?」」」」」

 声が揃う。
 知らないようだったので説明する。

「君たちはこの国出身ではないのだね。この国では赤い目は聖女の証なんだ」
「本当ですか?どこへ行けば会えますか?」
「待って、くれ。聖女でも幾人もいるんだよ。地方止まりの聖女もどきから、都市部にいる大聖女まで。君の探している子がどの子かまではわからんよ。他の特徴はないのかい?」

 彼は首を振った。

 目の色が薄くなる。

 あれ?

「その目の色は変わるんだね」
「あ、はい。感情の起伏で変わります」
「へぇ・・・、・・・そういや、あの子も変わってたな・・・」
「あの子?」
「ああ、先日、王都の神殿で新しく入った聖女の子・・・君が探してる銀髪で赤目の子の瞳の色が変わってたなって・・・」

 彼はガタンと身を乗り出してきた。
 目の色が再び濃くなる。

「どこですか?どこで会えますか?名前は?」
「ちょっ、落ち着きたまえ。君の思っている子かはわからんよ」
「す、すみません」

 椅子に座り直す。
 周りもおちつかしてくれた。
 
「シェリルだよ」
「シェリル・・・」

 名前を教えると何度も口に出していた。

「会いたいかい」

 彼は力強く頷いた。

 彼が必死なのがわかった。後が無いような・・・、余裕のない表情。なにか事情があるのだと思った。

「紹介状を書いてあげよう」

 わたしは彼に紹介状を渡した。
 ぎゅっと握りしめる。
 仲間によかったなと励まされていた。



 まさか、7年後に君と再会するとは。
 見た目が変わっていて驚いた。
 中身も変わっていた。
 君は気づいてないようだが。


 あの後シェリルに会えたんだな。
 君の探していた子なんだな。

 表情が変わった。
 優しく彼女を見つめている。

 そうか・・・、『妹』か。
 だから必死だったのか。

 確かに似ている。

 出会えてよかったな。
 

 アシュリード、シェリル・・・。
 


 
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