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四章、辺境会議
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エルバスは存在感なくシェリルについてきていたグレンディールを連れて奥の一室に入った。
シェリルは冒険者たちの似顔絵を書いていた。話術の巧な者がシェリルの精神負担にならないようそう言う流れを作り、いざと言うときの似顔絵マップを作らせているのだ。
エルバスが自ら入れたお茶を机に置き座る。
「グレン坊、なんだ?」
「いつまでも『坊』はやめろ」
何度も言ってもなおらないない呼び名。
「冒険者として、育てたのは俺だぞ」
「それは感謝してる。何度言わす気だ」
「一生だな。リルのこともあるしな」
「それは反省・・・「契約書」ぐっ・・・」
契約書の話はギルドにも伝わっているようだ。出入りするシェリル親衛隊が報告したのだろう。
エルバスの軽蔑の眼差しを受け、ぐっと口元を引き締めた。
「言い訳するか?」
「しても意味がない。シェリルが記憶が無いんだ、今更何を言おうとも意味がないものだ。俺が償うしかない・・・」
「ほぉ~、少しはまともになったか?」
「エルバス!話を進めるぞ」
「へぇー、へぇー、領主様」
「ちっ、樹海の探索とこっちの様子はどうだった?」
やっと本題へとはいる。
グレンディールが来た理由の一つが例の穴の事だった。
ジュマに行っている間に、樹海の探索と人身売買の裏取りをしてもらっていたのだ。
領主がジュマに行っているとなると、手薄になったサウセストで奴らも動くと踏んだのだ。
案の定、帰って見るとこちらに残っていたアリスによってこてんぱんにされた者が数人、地下牢に増えていた。
子供たちを再び捕まえに来たものだった。
「樹海の中にはあれだけしか見つからなかった。街中でおかしな奴らを見かけて捕らえたけどな。リルの為と言えば全員動いたぞ。そっちはどうだった?」
「聞いてると思うが、山脈内にあった。助けることは無理だった。あと、宝飾業を語る商人を捕まえた」
「商人もからんでるのか?」
「ああ。地下牢で捕まえてる奴らでも商人との交渉役は数人だったらしい。それも向こうからの連絡待ちだったそうだ。その商人は今、向こうで父が尋問してるはずだ」
厄介なことになってきていた。
「あの洞穴一体いつからあったんだ?」
「分からん。あんな場所には誰もいこうと思わん。お前なら行くか?」
「・・・行かん。一人では特に」
「だよな。大型魔樹の棲家の近くだもんな。魔獣避けをしてるとはいえ、並の神経なら行かないな。・・・その組織いつからありそうなんだ?」
「まだはっきりしていないが、シェリルの売買記録があるからして、少なくとも15年前にはあったようだな」
「15年・・・はあ、ますます闇が濃いな」
ズルリとだらしなく座った。
お茶を飲む青年に目を向ける。
目の前の、見た目はいいのに中身はダメダメ青年に気になっている事をエルバスは聞いたのだった。
「お前、リル抱くのか?」
シェリルは冒険者たちの似顔絵を書いていた。話術の巧な者がシェリルの精神負担にならないようそう言う流れを作り、いざと言うときの似顔絵マップを作らせているのだ。
エルバスが自ら入れたお茶を机に置き座る。
「グレン坊、なんだ?」
「いつまでも『坊』はやめろ」
何度も言ってもなおらないない呼び名。
「冒険者として、育てたのは俺だぞ」
「それは感謝してる。何度言わす気だ」
「一生だな。リルのこともあるしな」
「それは反省・・・「契約書」ぐっ・・・」
契約書の話はギルドにも伝わっているようだ。出入りするシェリル親衛隊が報告したのだろう。
エルバスの軽蔑の眼差しを受け、ぐっと口元を引き締めた。
「言い訳するか?」
「しても意味がない。シェリルが記憶が無いんだ、今更何を言おうとも意味がないものだ。俺が償うしかない・・・」
「ほぉ~、少しはまともになったか?」
「エルバス!話を進めるぞ」
「へぇー、へぇー、領主様」
「ちっ、樹海の探索とこっちの様子はどうだった?」
やっと本題へとはいる。
グレンディールが来た理由の一つが例の穴の事だった。
ジュマに行っている間に、樹海の探索と人身売買の裏取りをしてもらっていたのだ。
領主がジュマに行っているとなると、手薄になったサウセストで奴らも動くと踏んだのだ。
案の定、帰って見るとこちらに残っていたアリスによってこてんぱんにされた者が数人、地下牢に増えていた。
子供たちを再び捕まえに来たものだった。
「樹海の中にはあれだけしか見つからなかった。街中でおかしな奴らを見かけて捕らえたけどな。リルの為と言えば全員動いたぞ。そっちはどうだった?」
「聞いてると思うが、山脈内にあった。助けることは無理だった。あと、宝飾業を語る商人を捕まえた」
「商人もからんでるのか?」
「ああ。地下牢で捕まえてる奴らでも商人との交渉役は数人だったらしい。それも向こうからの連絡待ちだったそうだ。その商人は今、向こうで父が尋問してるはずだ」
厄介なことになってきていた。
「あの洞穴一体いつからあったんだ?」
「分からん。あんな場所には誰もいこうと思わん。お前なら行くか?」
「・・・行かん。一人では特に」
「だよな。大型魔樹の棲家の近くだもんな。魔獣避けをしてるとはいえ、並の神経なら行かないな。・・・その組織いつからありそうなんだ?」
「まだはっきりしていないが、シェリルの売買記録があるからして、少なくとも15年前にはあったようだな」
「15年・・・はあ、ますます闇が濃いな」
ズルリとだらしなく座った。
お茶を飲む青年に目を向ける。
目の前の、見た目はいいのに中身はダメダメ青年に気になっている事をエルバスは聞いたのだった。
「お前、リル抱くのか?」
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