【本編完結】聖女は辺境伯に嫁ぎますが、彼には好きな人が、聖女にはとある秘密がありました。

彩華(あやはな)

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5章、最終章

番外編、アリスとシェリルの出会い1

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 わたしの主人はシェリル様。

 初めて会ったのは、シェリル様が7歳の頃だった。 
 依頼主がとある教会でいる少女を殺して欲しいとの依頼だった。
 
 理由はしらない。
 きっとくらだらい縁故だろう。今までそうだったのだ。聞くだけくだらない。

 真夜中、教会に忍び込む。
 シスターたちが着る修道着に似た色の服を着る。暗闇に紛れる黒い服は、姿を隠すのに持ってこいだった。

 情報を得ていた、少女の部屋へと向かう。
 そっと部屋を開けると、ベッドの上でうずくまった少女の姿があった。そして、月の光に銀の髪が照らされ、キラキラと光っていた。
 少女は泣いていた。
 ヒクヒクと言わせていた。


 入ってきたわたしに気づき、顔を上げる。
 怯えきった顔。腫れた頬。赤黒い字のある腕。赤い目が涙で溢れている。

「やーなの。やーなの」

 首を振りながら嫌がる。
 見た目より幼い言葉。

「大丈夫」

 自然とその言葉が出てきて、少女を抱きしめていた。
 
 記憶の箍が外れそうになるのを押し殺していた。

 父からも母からも疎まれた。
 全てわたしのせいだと言った。生まれてこなければよかったのに、と殴られた。
 そして、ボロボロにされて捨てられた。
 雨の中。冬の氷雨ひさめの中。
 もうダメかと思った時、に拾われた。
 温かなご飯に寝床。その恩に応えるべく、暗殺の術を習った。喜んで欲しくてー。
 でも、それは思い違いだった。
 わたしはただの道具に過ぎなかったのだ。
 人を殺す道具。
 だから、道具として、感情を全て捨てた。命令されたら動く人形なのだ。

 この子はわたしと同じだ。きっと、このまま生きていても、道具になるだけかもしれない。

 そう思ってしまった。
 過去を思い出してはいけない。
 
 手元にいる少女は温かった。
 少女は笑った。

 この細い首を折れば、この少女はわたしみたいな人形にならない。道具にならない。

 でも、できなかった。
 少女の未来を見てみたかった。

 
 初めて、暗殺に失敗した。ボスに怒られたが、後悔はなかった。




 
 
 
 
 
 
 








 
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