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5.ミシェル視点

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 私は扉が壊れるかと思うほどに乱暴に開け、部屋に入った。

「どういうこと?」
「ミシェル、静かに入ってこい」

 長椅子に座っていたお兄様が、口に指を立てて言います。
 
 ですが、かっかっとブーツを鳴らし、セイラのベッドに近づいた。
 ベッドで眠る真っ白な顔のセイラ。
 童話に出てくる『森の眠り姫』のよう。

 ついこの間、春休みにあった時は幸せそうに笑っていたのに、どういうこと?何があった?

「帰ってくるのが早かったな」
「当たり前でしょ。手紙を受け取ってすぐに乗って、昼夜問わず走らせたもの」

 見よ、この乗馬姿を。
 目の下の隈を。
 それほどの一大事なのだ。

「女の子がするな。それに警護のやつらを振り回すな」

 お兄様は呆れたように言いますが、それどころではないでしょうに。
 確かに、無理を言って迷惑をかけてしまったし、そうよね、福利厚生は大切よね。

「彼らに一週間休みを上げて頂戴」
「おい!そういうことじゃなくて」
「そ、れ、よ、り、よ!詳しく話して頂戴」
「・・・わかった。わかったから静かにしろ。ここで騒ぐな。談話室に行くぞ」

 小声で諌められながら追い立てられるようにして部屋を出された。

 騒いだのは悪いけど、そんなに無理やりしなくてもいいんじゃないかしら?

 談話室に行くと、お兄様から何があったのかを詳しく聞いた。

 はあ?

 お兄様は顰めっ面で話をしてくれた。その顔に怒りが見え隠れしている。

 ふふふっ。

 笑いが込み上げてきた。

 怒りを見せていたお兄様のお顔が次第に青筋がくっきり見えてきた。

 よくもまあ、私がいない間にそんな事が起こりましたようで、なっちゃうわぁ~、というのが本音だった。

「で、セイラは寝込んで1週間なのね?」
「ああ。心労だろうと。まさか、セシルが起きる前に、1週間で帰ってくる妹がいるとはな」

 そりゃあ、そうよ。大事なセイラの一大事とあれば、光の如く駆け抜けてくるに決まってるわ。

「やる気か?」
「もちろん。既には手を打ってきたわ。念の為と思って人脈も広げることもできたからよかったわ」

 お兄様が呆れてらっしゃいます。
 きっと私のした、半分くらいを想像してしての反応だと思いますけどね。

「お前は・・・、結婚相手が見つからないぞ」

 もう、またその話。
 でも・・・まあ、いいわ。まだ未定ですし。相手が相応の覚悟なさらないと、ない話だし。こんなを気にいる方なんていないしね。

「どうするつもりだ?」
「皆様に私が復学することを伝えるわ。そして、私のすることを黙認するように言います」
 
 私は中身はともかく、見た目はセイラに似ている。
 見るものが見ればわかるだろう。でも、衣装やメイクを同じようにすればパッと見ではわからないのだ。
 あの男たちは、私を見た事がない。
 ならば、私とセイラを間違えるはず。
 念には念をいれて、そこはするとして・・・。

 しっかり報復してあげないと。

 セイラの代わりに私が、仕返ししますわ。私の大事な従姉妹を泣かしたのだから覚悟してもらいましょう。


「ミシェル、顔が怖いぞ。お手柔らかにしてやれ」
「嫌ですわよ。木っ端微塵にしますわ」
「だから怖いって」

 お兄様が震え上がりました。

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