8 / 42
8.ミシェル視点
しおりを挟む
ちなみに、教室に行くまでに三人の貴公子たちに絡まれた。
皆言うことは同じ。
『レイチェル嬢を泣かすな!』
一体何事?と言いたくなるほどの変わり映えしないセリフに辟易してくる。
カルロとファルスしか知らない為、他の貴公子に言われてもどうすればいいかわからない。しかも名乗ってくれないのだから誰なのか想像すらつかない。
「あの方誰?」
絡まれるたび、近くで見ていた令嬢に聞いてみた。
みんな懇切丁寧に説明してくれた。
「オールド国からの留学生。経済学2年目のアリゼード・ベイス伯爵令息ですわ」
「バトラス公国大使令息マリスク・マーセル伯爵令息です。半年前の大使赴任に合わせて編入されました」
「オズス国からの留学生でエルバス・オブラー伯爵令息です。去年から政治学を学びにきていますわ」
それはそれは彼女たちは、笑顔でこと細かに説明してくれた。
誕生日から趣味、好きな料理に色や花の名前まで。
なぜそこまで詳しいのかしら?
憧れに満ちた言いようではなく、どこか呆れや軽蔑感が含まれている所をみると、どうやら問題があるのかもしれない。
聞いていないことまで説明してくれるのだから、わたしに何かしらのことを期待しているのかしらと思いたくなってしまった。
情報をもらい教室に向かう。
教室ではシュリナ様とアフタル殿下が迷惑そうに迎えてくれた。
「臭いわ」
シュリナ様が顔を顰めながらわたしを見てきた。
「少しだけですが、そんなに匂いますか?」
「ぷんぷんするわ」
自分の腕を嗅いでみた。
確かに独特な甘い匂いがするがもう気にならない。もしかすると匂いに慣れて鼻が馬鹿になっているのかもしれなかった。
「今日は帰りなさい。近くにいて欲しくないわ」
しっしっと右手で追い払うようにしてくる。わざわざ鼻に皺を寄せながら言ってくるのだから、よほど臭うのだろう。
「わかりました。今日は帰りますわ。・・・アフタル殿下はこの匂いはどうですの?」
シュリナ様の横で微妙な表情を浮かべているアフタル殿下に聞いてみた。
「あまり、好ましくない・・・かな・・・」
「・・・・・・、そう、ですか・・・」
「どうしたの?」
「わたしに忠告をしてきた者たちは全て他国の貴公子だったなぁと、思いまして。それも公爵より低い者たち・・・。この学園には高位貴族もいますのに・・・」
「高位貴族は彼女のクラスではないだけじゃないの?」
「その彼女のクラスに探りを入れないといけませんね」
うふふふっと笑って見せた。
周囲にいたクラスメイトたちが会話を止めわたしを戦々恐々と見てくるのがわかった。
「ミシェル・・・」
はぁ・・・とシュリナがため息をついていたが、構わずににっこり笑いながら呟いた。
「わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですもの覚悟してもらうに決まっているでしょう?」
その瞬間、どこからともなく短い悲鳴がいくつも聞こえてきたのは無視することにした。
皆言うことは同じ。
『レイチェル嬢を泣かすな!』
一体何事?と言いたくなるほどの変わり映えしないセリフに辟易してくる。
カルロとファルスしか知らない為、他の貴公子に言われてもどうすればいいかわからない。しかも名乗ってくれないのだから誰なのか想像すらつかない。
「あの方誰?」
絡まれるたび、近くで見ていた令嬢に聞いてみた。
みんな懇切丁寧に説明してくれた。
「オールド国からの留学生。経済学2年目のアリゼード・ベイス伯爵令息ですわ」
「バトラス公国大使令息マリスク・マーセル伯爵令息です。半年前の大使赴任に合わせて編入されました」
「オズス国からの留学生でエルバス・オブラー伯爵令息です。去年から政治学を学びにきていますわ」
それはそれは彼女たちは、笑顔でこと細かに説明してくれた。
誕生日から趣味、好きな料理に色や花の名前まで。
なぜそこまで詳しいのかしら?
憧れに満ちた言いようではなく、どこか呆れや軽蔑感が含まれている所をみると、どうやら問題があるのかもしれない。
聞いていないことまで説明してくれるのだから、わたしに何かしらのことを期待しているのかしらと思いたくなってしまった。
情報をもらい教室に向かう。
教室ではシュリナ様とアフタル殿下が迷惑そうに迎えてくれた。
「臭いわ」
シュリナ様が顔を顰めながらわたしを見てきた。
「少しだけですが、そんなに匂いますか?」
「ぷんぷんするわ」
自分の腕を嗅いでみた。
確かに独特な甘い匂いがするがもう気にならない。もしかすると匂いに慣れて鼻が馬鹿になっているのかもしれなかった。
「今日は帰りなさい。近くにいて欲しくないわ」
しっしっと右手で追い払うようにしてくる。わざわざ鼻に皺を寄せながら言ってくるのだから、よほど臭うのだろう。
「わかりました。今日は帰りますわ。・・・アフタル殿下はこの匂いはどうですの?」
シュリナ様の横で微妙な表情を浮かべているアフタル殿下に聞いてみた。
「あまり、好ましくない・・・かな・・・」
「・・・・・・、そう、ですか・・・」
「どうしたの?」
「わたしに忠告をしてきた者たちは全て他国の貴公子だったなぁと、思いまして。それも公爵より低い者たち・・・。この学園には高位貴族もいますのに・・・」
「高位貴族は彼女のクラスではないだけじゃないの?」
「その彼女のクラスに探りを入れないといけませんね」
うふふふっと笑って見せた。
周囲にいたクラスメイトたちが会話を止めわたしを戦々恐々と見てくるのがわかった。
「ミシェル・・・」
はぁ・・・とシュリナがため息をついていたが、構わずににっこり笑いながら呟いた。
「わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですもの覚悟してもらうに決まっているでしょう?」
その瞬間、どこからともなく短い悲鳴がいくつも聞こえてきたのは無視することにした。
183
あなたにおすすめの小説
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
婚約破棄されてイラッときたから、目についた男に婚約申し込んだら、幼馴染だった件
ユウキ
恋愛
苦節11年。王家から押し付けられた婚約。我慢に我慢を重ねてきた侯爵令嬢アデレイズは、王宮の人が行き交う大階段で婚約者である第三王子から、婚約破棄を告げられるのだが、いかんせんタイミングが悪すぎた。アデレイズのコンディションは最悪だったのだ。
(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに
にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。
この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。
酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。
自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。
それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。
私、一度死んで……時が舞い戻った?
カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。
嫉妬で、妹もいじめません。
なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。
エブリスタ様で『完結』しました話に
変えさせていただきました。
永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた
堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」
ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。
どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。
――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。
ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。
義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる