54 / 76
54.
冬休みはあっという間に終わる。
最後は私の知恵熱という何とも言えない終わりだった。
しかもアーサー様の顔がまともに見れず、エマに泣きついてエルトニー伯爵家にお世話になってしまうという醜態付き。
思い出しただけでも恥ずかしい。
でも、それは昨日までの私。今の私は違う。
学園内を歩くたび、誰もが歩みを止め私を振り返ってくる。
「ノエル。顔を上げて背中を曲げないのよ」
エマのアドバイス通りに、私はまっすぐ前を向いて歩く。
私は、左目を隠すのをやめた。前髪を切り片眼鏡をかけ、傷を気にしないことにする。
熱が下がって、エマの母親に頼んで髪を切ってもらった。
ザクッという音と共に銀色の髪が落ちてゆくのを見て、心が軽くなった気がして、視界が色鮮やかに色づく。
怖い感情もあったが、どこか楽しみな自分がいた。
アーサー様に見てもらいたい。
似合うと言ってくれた、彼の顔が頭から離れなかった。
また言ってくれる?どんな顔をするかしら?
アーサー様には私の気持ちを伝えるのが怖くてできないが、それでもいい。彼の傍で研究できるのであれば、私は満足だ。
私は変わった。
だから、もうおどおどしない。
ぺったんこ靴だったのを踵5センチあるブーツにした。ほんの少し身長が高くしただけで景色も変わったように見える。
午前中の授業では、クラスメイトからひっきりなしに声をかけてもらえた。
知らない話題もあったし、話が弾んだ。
いつものようにエマとお昼を食べに行くと話をしたことない子が誘ってくれたので一緒に食事をする。
楽しくて笑っていると、口角が引きつって痛くなるのだと気づいて、また笑っていた。
そして、昼からアルバート先生の研究室へ行くと部屋の前で、一度息を吐く。
ゆっくりと空気を吸い込んで、扉を開けた。
「こんにちは」
「いらっしゃい・・・」
「きたか・・・」
二人は私を見て唖然とした表情で出迎えてくれる。
「ノエル・・・」
「どう?」
肩をすくめて聞いてみたい。
「前髪切ったんだね。スッキリして眼鏡が似合うね」
アルバート先生が微笑む横で、アーサー様は固まったままでいた。
「アーサー様?」
どうしたの?似合わない?
無言なことに不安になる。
だが彼は、名前を呼ぶとばっと視線を逸らし、手で顔を覆った。
「いや、その・・・、凄くいいと、思う」
思っていた反応と違っていたことが少し残念だったが、それでもいい。
今までが研究の話しかしてこなかったのだから、褒め言葉を求めるのは違う。
でも、こんな反応もありかもしれない。
俄然やる気が出てきた。
「冬休みも終わりましたし、また研究を始めましょうか。先生、続きの資料はどこですか?」
「あぁ、これだ」
「アーサー様もがんばりましょう」
「そうだな・・・」
変わらない毎日が始まる。
でも、もっと楽しくなるだろう。
私は資料を手に取り読み込み出した。
最後は私の知恵熱という何とも言えない終わりだった。
しかもアーサー様の顔がまともに見れず、エマに泣きついてエルトニー伯爵家にお世話になってしまうという醜態付き。
思い出しただけでも恥ずかしい。
でも、それは昨日までの私。今の私は違う。
学園内を歩くたび、誰もが歩みを止め私を振り返ってくる。
「ノエル。顔を上げて背中を曲げないのよ」
エマのアドバイス通りに、私はまっすぐ前を向いて歩く。
私は、左目を隠すのをやめた。前髪を切り片眼鏡をかけ、傷を気にしないことにする。
熱が下がって、エマの母親に頼んで髪を切ってもらった。
ザクッという音と共に銀色の髪が落ちてゆくのを見て、心が軽くなった気がして、視界が色鮮やかに色づく。
怖い感情もあったが、どこか楽しみな自分がいた。
アーサー様に見てもらいたい。
似合うと言ってくれた、彼の顔が頭から離れなかった。
また言ってくれる?どんな顔をするかしら?
アーサー様には私の気持ちを伝えるのが怖くてできないが、それでもいい。彼の傍で研究できるのであれば、私は満足だ。
私は変わった。
だから、もうおどおどしない。
ぺったんこ靴だったのを踵5センチあるブーツにした。ほんの少し身長が高くしただけで景色も変わったように見える。
午前中の授業では、クラスメイトからひっきりなしに声をかけてもらえた。
知らない話題もあったし、話が弾んだ。
いつものようにエマとお昼を食べに行くと話をしたことない子が誘ってくれたので一緒に食事をする。
楽しくて笑っていると、口角が引きつって痛くなるのだと気づいて、また笑っていた。
そして、昼からアルバート先生の研究室へ行くと部屋の前で、一度息を吐く。
ゆっくりと空気を吸い込んで、扉を開けた。
「こんにちは」
「いらっしゃい・・・」
「きたか・・・」
二人は私を見て唖然とした表情で出迎えてくれる。
「ノエル・・・」
「どう?」
肩をすくめて聞いてみたい。
「前髪切ったんだね。スッキリして眼鏡が似合うね」
アルバート先生が微笑む横で、アーサー様は固まったままでいた。
「アーサー様?」
どうしたの?似合わない?
無言なことに不安になる。
だが彼は、名前を呼ぶとばっと視線を逸らし、手で顔を覆った。
「いや、その・・・、凄くいいと、思う」
思っていた反応と違っていたことが少し残念だったが、それでもいい。
今までが研究の話しかしてこなかったのだから、褒め言葉を求めるのは違う。
でも、こんな反応もありかもしれない。
俄然やる気が出てきた。
「冬休みも終わりましたし、また研究を始めましょうか。先生、続きの資料はどこですか?」
「あぁ、これだ」
「アーサー様もがんばりましょう」
「そうだな・・・」
変わらない毎日が始まる。
でも、もっと楽しくなるだろう。
私は資料を手に取り読み込み出した。
あなたにおすすめの小説
さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
いつも隣にいる
はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。
もう何も信じられない
ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。
ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。
その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。
「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」
あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。