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63.アーサー視点
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叔父さんとの共同研究は、意外なほど進んだ。
ノエルの力も大きい。
彼女の着眼点はすごい。僕も見習うために、気にしていなかった分野や専門外のことも知りたいと思うようになった。
ライールと回った国外のことをまとめるだけでも勉強になるのがわかる。
エマとの体験を思い出すだけでもなにかヒントになるのでは?と思うことも。
幼い頃のことを思い出すことで、自分の進化や成長を実感できた。
その日も古代アスベス語について、ノエルと語っていた。
だいぶ解読できたアスベス語。
もっと細かなところまでわかることができたなら、次のステップに移ることができる。まだ、解読されていない文献を読むことができたなら、当時の暮らしや文化がもっと研究できるのだ。
その楽しみがあるからこそ、集中してしまう。
エマが入ってくるまで、時間を忘れていた。
エマに言われ気づく外の暗さ。
弁論大会のメンバーに選ばれ、迎えに来れないからとうるさく言われていたことを忘れていた。
「似たものが集まって集中してたら、時間も忘れるのもわかるわよ。でも、ノエル、あなたは女性よ。この二人が公爵家の端くれ紳士だといっても流石に辺りが暗くなるまで一緒にいるのはダメよ」
エマが優しい口調でノエルに注意するが、その目は怖かった。
そして、とんでもない事実を教えてくれる。
「ノエル。あなた気づいてないでしょうけど、クラスメイトや上級生の男性が狙ってるのよ」
なっ・・・なんだと!?
「髪を切って、片眼鏡をかけるようになってから声をかけられること増えたでしょう。よくお誘いされていない?」
ノエルは頷く。
マジ!?嘘だろ・・・。
「雰囲気が変わって、みんなノエルの魅力に気づき出したのよ」
「そんなことが?」
叔父さんも驚いている。
「研究が大事ですからお断りしています」
それを聞いてほっとする。
だが、自分が情けなくなった。
「ともかく、ノエル。帰るわよ」
「あ、はい」
「僕も送るよ」
エマが送りに行くと言うので、僕もついてゆくため急いで片付けを始めた。
「大人である私がいこうか・・・」
「叔父さんは泊まり込んで考察をまとめてるんだろう。僕は屋敷に帰るし、その帰り道だ。エマもついでに送るよ」
「わたしはついでなんだ・・・」
「いや、ちがう!」
一応、エマも心配だからー。
こうして、寮までの道を三人で歩いて帰った。
寮には入れないので、寮の入り口で別れを告げようとしたとき、管理人が、薔薇の花を一本持ってくる。
「ちょうどよかった、ノエル様。いつもの花がきてました」
「これは?」
エマが眉を寄せ、管理人さんに問う。彼女は言いにくそうにエマに向かって言った。
「近頃・・・週に幾度か、ノエル様宛に送られてくるのです。差出人名もないのですよ」
「ノエル!?それどうするの?」
エマは厳しい声を上げる。
相手の名前がないとは・・・気持ち悪い。
ノエルはそれを部屋に飾ると言うので、エマが眉を吊り上げ注意喚起をする。
「それでも怪しいでしょうが!ストーカーからだったらどうするのよ!」
そうだ!エマ、もっと言え!!
「もうっ!不用心な!明日からわたしの屋敷にきなさい!朝に迎えに寄越すから準備しといて!」
「明日の土曜日は、三日間しかしない骨董市に行くから無理よ」
「ますますダメよ!!アーサー!」
「はいっ!」
条件反射的に返事をすると、エマがアーサー様を振り返り、にっこりと笑ってくる。
「明日はノエルのエスコートしてくれるわよね?わたし討論会のスピーチでいないからアーサーに任せるわよ。骨董市寄ってでいいから、わたしの屋敷に連れてきて!」
「わかった。ノエル嬢もそれでいいかい?」
ノエルとデート・・・できる!?
「はい、お願いします」
嬉しくて悶えそう。
エマを送る馬車の中、僕はお礼を言った。
「感謝しなさいよ」
「はい!もちろんだ」
「じゃぁ、大通りにある母様のカフェのアップルパイを土産によろしく。事前連絡しておくから、2階のプライベート室で告白してきなさい!」
「・・・・・・っ。わかった」
「ちゃんと、行くルートも予定たてるのよ」
「わかった・・・」
頼り甲斐のある年下の従妹が可愛く見えた。
ノエルの力も大きい。
彼女の着眼点はすごい。僕も見習うために、気にしていなかった分野や専門外のことも知りたいと思うようになった。
ライールと回った国外のことをまとめるだけでも勉強になるのがわかる。
エマとの体験を思い出すだけでもなにかヒントになるのでは?と思うことも。
幼い頃のことを思い出すことで、自分の進化や成長を実感できた。
その日も古代アスベス語について、ノエルと語っていた。
だいぶ解読できたアスベス語。
もっと細かなところまでわかることができたなら、次のステップに移ることができる。まだ、解読されていない文献を読むことができたなら、当時の暮らしや文化がもっと研究できるのだ。
その楽しみがあるからこそ、集中してしまう。
エマが入ってくるまで、時間を忘れていた。
エマに言われ気づく外の暗さ。
弁論大会のメンバーに選ばれ、迎えに来れないからとうるさく言われていたことを忘れていた。
「似たものが集まって集中してたら、時間も忘れるのもわかるわよ。でも、ノエル、あなたは女性よ。この二人が公爵家の端くれ紳士だといっても流石に辺りが暗くなるまで一緒にいるのはダメよ」
エマが優しい口調でノエルに注意するが、その目は怖かった。
そして、とんでもない事実を教えてくれる。
「ノエル。あなた気づいてないでしょうけど、クラスメイトや上級生の男性が狙ってるのよ」
なっ・・・なんだと!?
「髪を切って、片眼鏡をかけるようになってから声をかけられること増えたでしょう。よくお誘いされていない?」
ノエルは頷く。
マジ!?嘘だろ・・・。
「雰囲気が変わって、みんなノエルの魅力に気づき出したのよ」
「そんなことが?」
叔父さんも驚いている。
「研究が大事ですからお断りしています」
それを聞いてほっとする。
だが、自分が情けなくなった。
「ともかく、ノエル。帰るわよ」
「あ、はい」
「僕も送るよ」
エマが送りに行くと言うので、僕もついてゆくため急いで片付けを始めた。
「大人である私がいこうか・・・」
「叔父さんは泊まり込んで考察をまとめてるんだろう。僕は屋敷に帰るし、その帰り道だ。エマもついでに送るよ」
「わたしはついでなんだ・・・」
「いや、ちがう!」
一応、エマも心配だからー。
こうして、寮までの道を三人で歩いて帰った。
寮には入れないので、寮の入り口で別れを告げようとしたとき、管理人が、薔薇の花を一本持ってくる。
「ちょうどよかった、ノエル様。いつもの花がきてました」
「これは?」
エマが眉を寄せ、管理人さんに問う。彼女は言いにくそうにエマに向かって言った。
「近頃・・・週に幾度か、ノエル様宛に送られてくるのです。差出人名もないのですよ」
「ノエル!?それどうするの?」
エマは厳しい声を上げる。
相手の名前がないとは・・・気持ち悪い。
ノエルはそれを部屋に飾ると言うので、エマが眉を吊り上げ注意喚起をする。
「それでも怪しいでしょうが!ストーカーからだったらどうするのよ!」
そうだ!エマ、もっと言え!!
「もうっ!不用心な!明日からわたしの屋敷にきなさい!朝に迎えに寄越すから準備しといて!」
「明日の土曜日は、三日間しかしない骨董市に行くから無理よ」
「ますますダメよ!!アーサー!」
「はいっ!」
条件反射的に返事をすると、エマがアーサー様を振り返り、にっこりと笑ってくる。
「明日はノエルのエスコートしてくれるわよね?わたし討論会のスピーチでいないからアーサーに任せるわよ。骨董市寄ってでいいから、わたしの屋敷に連れてきて!」
「わかった。ノエル嬢もそれでいいかい?」
ノエルとデート・・・できる!?
「はい、お願いします」
嬉しくて悶えそう。
エマを送る馬車の中、僕はお礼を言った。
「感謝しなさいよ」
「はい!もちろんだ」
「じゃぁ、大通りにある母様のカフェのアップルパイを土産によろしく。事前連絡しておくから、2階のプライベート室で告白してきなさい!」
「・・・・・・っ。わかった」
「ちゃんと、行くルートも予定たてるのよ」
「わかった・・・」
頼り甲斐のある年下の従妹が可愛く見えた。
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