【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)

文字の大きさ
63 / 76

63.アーサー視点

しおりを挟む
 叔父さんとの共同研究は、意外なほど進んだ。
 ノエルの力も大きい。
 彼女の着眼点はすごい。僕も見習うために、気にしていなかった分野や専門外のことも知りたいと思うようになった。
 ライールと回った国外のことをまとめるだけでも勉強になるのがわかる。
 エマとの体験を思い出すだけでもなにかヒントになるのでは?と思うことも。

 幼い頃のことを思い出すことで、自分の進化や成長を実感できた。

 その日も古代アスベス語について、ノエルと語っていた。
 だいぶ解読できたアスベス語。
 もっと細かなところまでわかることができたなら、次のステップに移ることができる。まだ、解読されていない文献を読むことができたなら、当時の暮らしや文化がもっと研究できるのだ。
 
 その楽しみがあるからこそ、集中してしまう。
 エマが入ってくるまで、時間を忘れていた。
 エマに言われ気づく外の暗さ。
 弁論大会のメンバーに選ばれ、迎えに来れないからとうるさく言われていたことを忘れていた。

「似たものが集まって集中してたら、時間も忘れるのもわかるわよ。でも、ノエル、あなたは女性よ。この二人が公爵家の端くれ紳士だといっても流石に辺りが暗くなるまで一緒にいるのはダメよ」

 エマが優しい口調でノエルに注意するが、その目は怖かった。

 そして、とんでもない事実を教えてくれる。

「ノエル。あなた気づいてないでしょうけど、クラスメイトや上級生の男性が狙ってるのよ」

 なっ・・・なんだと!?

「髪を切って、片眼鏡モラクルをかけるようになってから声をかけられること増えたでしょう。よくお誘いされていない?」

 ノエルは頷く。
 マジ!?嘘だろ・・・。


「雰囲気が変わって、みんなノエルの魅力に気づき出したのよ」
「そんなことが?」

 叔父さんも驚いている。

「研究が大事ですからお断りしています」

 それを聞いてほっとする。
 だが、自分が情けなくなった。

「ともかく、ノエル。帰るわよ」
「あ、はい」 
「僕も送るよ」
 
 エマが送りに行くと言うので、僕もついてゆくため急いで片付けを始めた。

「大人である私がいこうか・・・」
「叔父さんは泊まり込んで考察をまとめてるんだろう。僕は屋敷に帰るし、その帰り道だ。エマもついでに送るよ」
「わたしはついでなんだ・・・」
「いや、ちがう!」

 一応、エマも心配だからー。
 

 こうして、寮までの道を三人で歩いて帰った。
 
 寮には入れないので、寮の入り口で別れを告げようとしたとき、管理人ハウスマスターが、薔薇の花を一本持ってくる。

「ちょうどよかった、ノエル様。いつもの花がきてました」
「これは?」

 エマが眉を寄せ、管理人ハウスマスターさんに問う。彼女は言いにくそうにエマに向かって言った。

「近頃・・・週に幾度か、ノエル様宛に送られてくるのです。差出人名もないのですよ」
「ノエル!?それどうするの?」

 エマは厳しい声を上げる。
 相手の名前がないとは・・・気持ち悪い。

 ノエルはそれを部屋に飾ると言うので、エマが眉を吊り上げ注意喚起をする。

「それでも怪しいでしょうが!ストーカーからだったらどうするのよ!」

 そうだ!エマ、もっと言え!!

「もうっ!不用心な!明日からわたしの屋敷にきなさい!朝に迎えに寄越すから準備しといて!」
「明日の土曜日は、三日間しかしない骨董市アンティークマーケットに行くから無理よ」
「ますますダメよ!!アーサー!」
「はいっ!」

 条件反射的に返事をすると、エマがアーサー様を振り返り、にっこりと笑ってくる。

「明日はノエルのエスコートしてくれるわよね?わたし討論会のスピーチでいないからアーサーに任せるわよ。骨董市アンティークマーケット寄ってでいいから、わたしの屋敷に連れてきて!」
「わかった。ノエル嬢もそれでいいかい?」

 ノエルとデート・・・できる!?

「はい、お願いします」

 嬉しくて悶えそう。

 エマを送る馬車の中、僕はお礼を言った。

「感謝しなさいよ」
「はい!もちろんだ」
「じゃぁ、大通りにある母様のカフェのアップルパイを土産によろしく。事前連絡しておくから、2階のプライベート室で告白してきなさい!」
「・・・・・・っ。わかった」
「ちゃんと、行くルートも予定たてるのよ」
「わかった・・・」

 頼り甲斐のある年下の従妹が可愛く見えた。 
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

某国王家の結婚事情

小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。 侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。 王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。 しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

さようなら、私の愛したあなた。

希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。 ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。 「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」 ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。 ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。 「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」 凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。 なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。 「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」 こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。

私は本当に望まれているのですか?

まるねこ
恋愛
この日は辺境伯家の令嬢ジネット・ベルジエは、親友である公爵令嬢マリーズの招待を受け、久々に領地を離れてお茶会に参加していた。 穏やかな社交の場―になるはずだったその日、突然、会場のど真ん中でジネットは公開プロポーズをされる。 「君の神秘的な美しさに心を奪われた。どうか、私の伴侶に……」 果たしてこの出会いは、運命の始まりなのか、それとも――? 感想欄…やっぱり開けました! Copyright©︎2025-まるねこ

【完結】研究一筋令嬢の朝

彩華(あやはな)
恋愛
研究二徹夜明けすぐに出席した、王立学園高等科、研究科卒業式後のダンスパーティ。そこで、婚約者である第二王子に呼び出された私こと、アイリ・マクアリス。婚約破棄?!いじめ?隣の女性は誰?なんでキラキラの室長までもが来るの?・・・もう、どうでもいい!!私は早く帰って寝たいの、寝たいのよ!!室長、後は任せます!! ☆初投稿になります。よろしくお願いします。三人目線の三部作になります。

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

処理中です...