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67.アーサー視点
「やっと目が覚めたか?」
見知った天井が見えたと同時に久々に聞く声に驚いて起きあがろうとしたが、腹が痛くて悶絶する。
「無理するな」
「ライール?」
痛みを堪え、声の主を探せばベッドの傍にライールの姿があった。
なぜ、彼が僕の屋敷にいるのだろう?どうして、僕はベッドの上で寝ている?
「まだ、思い出さないのか?お前はマルスに刺されたんだよ」
そうか・・・、刺されたんだった。
ようやくあの時のことを思い出す。
だからといって彼がいる意味はわからない。
「あいつの後始末に来たんだ」
「そうですか。彼はどうなったんです?」
「この問題で帝国を出禁になった。本人に対しての処分は軽いだろうが、国交の制限が課せられることになった。これ以上は悪いが言えんな」
彼はそう言いつつ、僕の額にコツンと拳を落としてきた。
「?」
「よくもノエルを泣かしたな」
「ヒュッ」
色々とやらかしたことを思い出し、恐怖のあまり吸った瞬間、変に喉が鳴る。
だが、彼は気づいていないのか頭を下げてきた。
「ノエルを助けてくれてありがとう」
「えっ、あっ・・・」
頭の中が真っ白になる。ライールからお礼を言われるとは・・・。
「いや、あの・・・それでノエル・・・嬢は・・・」
「あいつは昨日から研究室に戻った。目が覚めるまでついていたそうだったが、4、5日も休んだら、授業単位を落とす可能性があるうえ、研究の成果があげなければ、留学自体が短期になると教えたら、気持ちを切り替えたな」
そうか・・・。
研究に帰ったと聞いて、なぜかほっとした。力が抜け、天井をぼうっと眺める。
「お前はどうしたい・・・」
「えっ?」
いきなり問われ戸惑う。
どういう意味だ?
ライールは真剣な顔で僕を見ていた。
「お前はこのままでいいのか?」
「このまま・・・?」
「道楽で研究しているだけの金食い虫。権利も、成果もない公爵家の次男坊。それでいいのか?」
「・・・・・・」
そうだ。僕は・・・。
ライールは独り言のように呟き始める。
「留学を終えればノエルはトルスター国に帰る。そうなれば、もう国外には出ることはないだろう。あの国はそんなところだ。あの傷もある。母がすぐにでも持参金つきで成金にでも押し付けるかもしれない。マルスのあの異様な執着もあるからな・・・」
ぞっとする。
トルスター国に違和感はあった。
そんなところなのか?
帰れば、国外にでれない?もし、ノエルが帰ってしまえば会えなくなるということ?
彼女が物のように扱われる?
あの才能さえ埋没してしまう?
「髪や目の色でさえやっかみにあうんだ。女性ともなると余計にな・・・。ノエルにはそこに傷のことも含むとますます・・・、どんなに才能があっても、女性に地位はいらないですまされてしまう・・・。お前はどうしたい?ノエルをどう思っている?」
「僕は・・・・・・」
以前トルスター国で、ノエルに言ったことを思い出す。
「いずれ将来のことを考えなければいけねぇし・・・」と。
あの研究室の雰囲気が好きで後回しにはしていたが、考えていないわけではない。
でも、一歩が出なかったのも事実。
ーこのままじゃダメなんだ。
「ノエルを護りたいなら動け。力になってくれる者は傍にいるだろう。頼れ。そして、お前自身に力をつけろ」
僕は頷いた。
それを見たライールは満足そうに笑みをこぼす。だが、次の瞬間、鬼のような形相に変化する。
「それはそれとして・・・、お前、ノエルの腕を掴んで引きずろうとしたんだってな・・・」
「あっ・・・・・・」
「ゆっくりと話し合おうじゃないか」
「ひっっ!!」
その後、みっちりと説教を食らった。
見知った天井が見えたと同時に久々に聞く声に驚いて起きあがろうとしたが、腹が痛くて悶絶する。
「無理するな」
「ライール?」
痛みを堪え、声の主を探せばベッドの傍にライールの姿があった。
なぜ、彼が僕の屋敷にいるのだろう?どうして、僕はベッドの上で寝ている?
「まだ、思い出さないのか?お前はマルスに刺されたんだよ」
そうか・・・、刺されたんだった。
ようやくあの時のことを思い出す。
だからといって彼がいる意味はわからない。
「あいつの後始末に来たんだ」
「そうですか。彼はどうなったんです?」
「この問題で帝国を出禁になった。本人に対しての処分は軽いだろうが、国交の制限が課せられることになった。これ以上は悪いが言えんな」
彼はそう言いつつ、僕の額にコツンと拳を落としてきた。
「?」
「よくもノエルを泣かしたな」
「ヒュッ」
色々とやらかしたことを思い出し、恐怖のあまり吸った瞬間、変に喉が鳴る。
だが、彼は気づいていないのか頭を下げてきた。
「ノエルを助けてくれてありがとう」
「えっ、あっ・・・」
頭の中が真っ白になる。ライールからお礼を言われるとは・・・。
「いや、あの・・・それでノエル・・・嬢は・・・」
「あいつは昨日から研究室に戻った。目が覚めるまでついていたそうだったが、4、5日も休んだら、授業単位を落とす可能性があるうえ、研究の成果があげなければ、留学自体が短期になると教えたら、気持ちを切り替えたな」
そうか・・・。
研究に帰ったと聞いて、なぜかほっとした。力が抜け、天井をぼうっと眺める。
「お前はどうしたい・・・」
「えっ?」
いきなり問われ戸惑う。
どういう意味だ?
ライールは真剣な顔で僕を見ていた。
「お前はこのままでいいのか?」
「このまま・・・?」
「道楽で研究しているだけの金食い虫。権利も、成果もない公爵家の次男坊。それでいいのか?」
「・・・・・・」
そうだ。僕は・・・。
ライールは独り言のように呟き始める。
「留学を終えればノエルはトルスター国に帰る。そうなれば、もう国外には出ることはないだろう。あの国はそんなところだ。あの傷もある。母がすぐにでも持参金つきで成金にでも押し付けるかもしれない。マルスのあの異様な執着もあるからな・・・」
ぞっとする。
トルスター国に違和感はあった。
そんなところなのか?
帰れば、国外にでれない?もし、ノエルが帰ってしまえば会えなくなるということ?
彼女が物のように扱われる?
あの才能さえ埋没してしまう?
「髪や目の色でさえやっかみにあうんだ。女性ともなると余計にな・・・。ノエルにはそこに傷のことも含むとますます・・・、どんなに才能があっても、女性に地位はいらないですまされてしまう・・・。お前はどうしたい?ノエルをどう思っている?」
「僕は・・・・・・」
以前トルスター国で、ノエルに言ったことを思い出す。
「いずれ将来のことを考えなければいけねぇし・・・」と。
あの研究室の雰囲気が好きで後回しにはしていたが、考えていないわけではない。
でも、一歩が出なかったのも事実。
ーこのままじゃダメなんだ。
「ノエルを護りたいなら動け。力になってくれる者は傍にいるだろう。頼れ。そして、お前自身に力をつけろ」
僕は頷いた。
それを見たライールは満足そうに笑みをこぼす。だが、次の瞬間、鬼のような形相に変化する。
「それはそれとして・・・、お前、ノエルの腕を掴んで引きずろうとしたんだってな・・・」
「あっ・・・・・・」
「ゆっくりと話し合おうじゃないか」
「ひっっ!!」
その後、みっちりと説教を食らった。
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