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最後に見た景色ー。

婚約者ーアルス様が学園に入学して、恋に落ちたアルセナ様が階段から落ちようとした際、その手をとるアルス様の姿、でした。


私は  ー階段から落ちたー



目が覚めると、そこはいつも見る景色と違って見えた。鮮やかな色合いの景色。
とはいえ、物が少ない部屋。

ゆっくり身を起こし、手足に力を入れると身体中が痛いながらも動かすことができた。
足を床につけると絨毯の柔らかな感触を捉えることができる。
思い切って立ち上がりふらつきながらも、一歩一歩足を進め、鏡の前に立てば、わたしの顔がそこに写った。

見たことのある金のストレートの髪にエメラルドの瞳。白い肌は青白く、唇も紫かかっている。頭に包帯・・・。

写る私の名前を呼ぶ。

「ミネルバ・・・」


ミネルバ・グランバード。グランバード伯爵の娘。それが私だ。
 グランバード伯爵の実子でありながら母が死んだのち再婚した後妻とその連れ後の妹にいじめられる哀れな私。

鏡に触れ、自分の輪郭を追う。
涙が溢れ頬伝う。

思い出す。
最期の瞬間を・・・。

わたしは何があっても生きなければならないのだと誓う。
もう、今までの私ではないのだから。


ドアが空きメイドが入ってきた。

私が幼い頃からずっと一緒にいてくれた、サナ・・・。

「お、お嬢様っ」

サナはわたしを見て泣き出した。

「お嬢様。やっと起きたのですね」
「サナ?」
「一ヶ月もお眠りになられていたのです。良かった・・・良かった・・・」

 一ヶ月・・・。
 そうなのか、
 一ヶ月かかったねか・・・。
 
 心配かけたのね・・・。

 本当に?

わたしはサナが安心するかなと、笑った。でもサナはビクリと肩を震わせわたしを見た?

「お嬢様?」
「なあに?」
「本当に・・・お嬢様、ですか?」
「そうよ。どうかした?」
「笑い方が・・・」
「ふふっ。頭を打ったせいかしら。少し自分を変えようと・・・いえ、変わったのかもしれないわね。でも、わたしはよ。ミネルバよ」


もう一度笑った。
私は微笑むだけだったものね。

わたしはかわったの。
だからこれからは自由にさせてもらうわ。誰にも邪魔されたくないわ。
あなたでも、よ。

わたしは軽くシャワーをあび、食べる物を用意してもらう。胃に負担がないように雑穀粥。いつもと変わらないけど・・・。

わたしが起きても家族も婚約者さえもこなかった。

それでもいい・・・。
わたしは笑う。
声を出して。
楽しく、そして面白く。

さあ、何が起きるかしらー。
何を起こそうかしらー。

楽しくて仕方ない。
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