【完結】彼岸の花を手向に

彩華(あやはな)

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 それから一年・・・。

「おかえりなさいませ」

 帰ってきたアルドを玄関で出迎える。

 「ただいま」

 彼は微笑んでくれた。

 結婚した頃は素っ気ないものだったが、今では私に笑みをむけてくれるようになった。

 あの後、やはり二人の行方はわからなかった。他国へ行って幸せに暮らしているのかもしれない。
 初めの頃はすぐにでも二人が見つかれば私たちはどうなるのか不安だった。でも、探しても見つからないのならば、もう安心してもいいのだろうか。

 少しずつだが、こうして形とはいえ夫婦の絆ができていると思う。このままの生活がずっと続いてくれたならと思った。


 その日の夕食後、アルドから話があると言われ、彼の部屋へと行った。

 なんだろう・・・

   不安にかられた。なにか気に触ることでもしたのだろうか?私は捨てられるのだろうか?

 意を決して部屋に入った私を、彼は座るように進めてきた。

 ふかふかのソファーに座ると、彼は隣に座ってきた。
 それは初めてのことだった。
 
 緊張する私をよそに、彼はこの一年のことを話始めた。

 結婚式でのこと、私に対しての扱いの戸惑い、そして変化した己の気持ちを・・・。

「ずっと、君は僕を支えてくれた。なんのみ返りを要求することもなく、ただ、僕を見てくれていた。嬉しかった。あの日・・・、結婚式の後、僕は君の尊厳を踏み躙ったというのに、恨まれてもしかたないのに」
「・・・・・・」
「ごめん。謝ってすむことじゃないのはわかっている。でも、できることなら、君とやり直したい」
「アルド・・・」

 私は泣いていた。

「駄目?」

 全力で首を振った。
 言葉にならなかった。

「明日は結婚記念日だ。お祝いを兼ねて明日から夫婦としてやりなおしてくれる?」
「うん」

 嬉しかった。
 その日は、朝まで二人でたくさん話をした。
 好きなことはなんであるか。子供は何人欲しいだとか。何がしたい、どこへ行ってみたいだとか。
 歳をとったあとは、2人で旅行に行こう。
 海の向こうに移住してもいいかもしれない。
 たくさんのものを2人で見てみよう。

 幸せになろうーと。
 
 
 今までのすれ違いを正すように。付き合いたての恋人のようにずっと話しをした。

 朝日が眩しい。朝焼けの空が美しかった。

 一晩という時間がこうも短いと思いもせず、話したりない。
 お互いに寝不足で真っ赤になった目を見て笑い合う。

 私たちは二人で朝食をとった。

 そして、仕事へゆくアルドを見送る。

 彼は、私を抱きしめてくれた。口にキスをした。
 初めてのことに、うっとりとする。

「いってくるね。今日は寝かせないから覚悟しといて」

 耳元で囁かれ、真っ赤になってしまった。
 アルドは笑う。

「もう!アルド、いってらっしゃい」
「あぁ、行ってきます」

 私はアルドを見送った。






 ーでも、アルドは私を二度と抱きしめてはくれなかった。

 「愛してる」そう言わなかったことを後悔した。

 
 
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