【完結】結び屋 アメリア・ブロー〜他人の幸せを結んでいますが、自分の幸せの相手には気付きません〜

二十九話、まだ、もう少しだけ

「待て待て、養女？カジュは賛成したのか？」
「はい。父にこと訳を話すと二つ返事でした」
「えっ、ええっ～、そんな簡単に？」
「未来ある若者に更正の機会をあたえてあげれるなら、このチャンスは与えてあげるべきだ、と言ってました」
「「人が良すぎる！！」」

　学園長先生とセスは吠えた。
　殿下は苦笑してるし、エンリュリッヒ様たちは口をポカンと開けている。

　カロン様に至っては目からウロコが落ちそうなくらい目を大きくされています。

「残念ながら、カロン様のお兄様は悪事に手を染めらていたので、裁判が待っています。カロン様は･･･ご存じでは、なかった･･･。ですが、共犯にされます。今なら、回避できます。
　もし、全てを捨てて、一から始めるというなれば、こちらにサインをしてください。時間はありませんので、すぐに」
「･･･なぜ、あなたは、ロズベルトのことを？それにわたしを助けようとするの？」

　当然じゃない。

「わたし、引きが強いらしくて、結構な確率で欲しいものを手にいれるんです」
「？」
「カインセル伯爵子息様にあったのも、本当偶然です。恥ずかしいですが、もう一度いいます。
　夏休みの牛を買ったので、その事で、カインセル伯爵にお会いしに行きまして、まさか、カロン様の幼馴染馴染みに会えるとは思わず･･･」
「あれは、偶然だったよね。牧場見学で話することじゃないよね。なんでいきなり首を締め上げられなくてはいけないのかな？」
「あの時は申し訳ありませんでした。あまりの事で手加減が･･･」
「あれを止める弟君がすごいね･･･」

　言わないで。
　あっ、引かないで。

「ゴホッ･･･、失礼しました。助ける理由でしたね、それは･･･どうにもならない物は一度無くして新たな縁を結ぶ、それがわたしの役目、だからです」
「なにそれ？」

　カロン様が笑いました。

「カロン様、もうよろしいのではありませんか？」

　マロン様･･･。

「アメリア様も、わかっていますよね」

　頷く。

「はい。カロン様の全ての行為はお父様に対しての当てつけだった。カロン様は、ほんと･･･「言わなくていいの」」

　遮られましたか。
　ですよね。

　子どもじみた矜持でしたもの。
　ただ、お父様に振り向いて欲しい、わがままを聞いて欲しいと言う思い。
　愛されているマロン様への嫉妬。
　無償の愛を与えているレックス様への憧れ。
　羨ましいさ、妬み。
　そんなぐちゃぐちゃな感情からの事でしたものね。

　カロン様のお父様はその答え方を間違えた。
　きちんと話を聞かず、一方的な間違った形で答えようとした。

　カロン様･･･、ずっと、ロズベルト様を思ってらしたものね･･･
　身分のことや、家のプライドで言えずにいましたものね。

「どうされますか？」
「サイン、してもいいの？お父様たちがしたこと、どうすればいいかわからないけど、私、幸せになっていいかしら？」
「自分の取り方次第です。それに政略結婚ですから、しっかり相手の方に愛されるよう頑張ってください。それが罰なんですから」
「･･･罰になってないから･･･」


　カロン様は泣き笑いしました。


「ブロー男爵令嬢。良かったのですか？
このままだと、あなたの家が不利になりますよ。」
「大丈夫です。
人の良い父の信用度は揺らぎません。
　できる弟がいますから、どうとでもやっていけます。
　所詮、わたしもブロー一族なんです。困っている者を見捨てられないのです。
　でも、転んでもただではおきません。カロン様がカインセル伯爵家に嫁ぐのですから、これからの良縁としてお付き合い、ご覚悟をお願いします」
「ふっ、わかった、よろしく頼むよ」

「守銭奴」
「なんとでもどうぞ」

　カロン様は、エスタキュー侯爵の離縁状とブロー男爵の養子縁組の書類にサインしたのであった。

　あっ、もちろん、正式ですよ。



　学園長先生と殿下の立ち合いがあったからこそ正式な文書ですから、そこのところ、お間違えなく！(エンリュリッヒ様に向けて言ってみました～)

　殿下、ありがとうございます。