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三十四話、アンドリュー視点
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やっと、タリオンに会えた。
彼に会うのは難しい。年中どこかしらに行っている上、王都にはこない。他の場所に行くには父の目もあるので、行けないのだ。
こんな絶好のチャンスを逃せない。
彼も僕のことに気づいてくれた。
わざわざ、彼女に気を遣ってくれたのだ。
天幕に入るなり、タリオンは抱きしめてきた。
ぐぇっ!
強い!締まる。
「久しぶりだなアン」
「タリオン・・・」
10年前まで、僕は彼の元に母さんといた。母と父上とあってはならない関係の末、僕を産んだ。父上の正妻は嫉妬深く、報復を恐れた母は、知り合いのタリオンに保護を求めたのだ。
裏方の仕事をしていた。衣食住が保障された生活。贅沢なことはできなかったし、プライベートもほぼ無いものだったが、毎日が楽しかった。
正妻の執事が現れるまでは・・・。
父上と正妻の子供・・・僕より二歳年上の・・・兄上が病気で死んだのだ。
正妻は、難産がもとで次は見込めなかったらしく、そこで、昔、父上と関係があった母さんに目をつけ居場所を突き止めたのだ。
そこで、僕のことがバレた。
誘拐のよう連れて行かれた。
当時、正妻の目を欺く為、女の子の格好をしていたが、それも虚しく・・・、連れて行かれた場所で水浴びした際、それもバレた。
正妻の顔が歪んだのを今でも覚えている。
嫉妬と妬み、悔しさ、そういったものを僕に向けた。
最低限の教育しかしていなかった僕に対してあの女は厳しい教育をした。できなければムチを使うこともあった。
父上は幾度も僕を助けてくれた。
仕切りに謝り、抱きしめてくれた。
僕がこうしているのも父上のおかげだ。
あの女は・・・、3年前、病気で死んだ。
寂しい最後だっただろう。知らない。
5年前に、金を湯水のようあの女に、父上はあの女の執事の悪事・・・不正や強要の事実を突きつけ、領地の離れに閉じ込めたのだ。あの時の甲高い声で叫びながら去って行った。
一人で死んでいったらしい。葬式も質素だった。あの女の生家は例の執事のこともあり、何も言ってくることも無かった・・・。
「大変だったな」
タリオンとサジュは僕の話を静かに聞いてくれた。頑張ったな、と頭をなぜてくれる。
「タリオン、母さんは?」
「・・・お前がいなくなったあと、あの正妻が手を回して、噂を流されてここを出て行ったんだ。その・・・、いいにくいんだが、娼婦まで身を落として・・・」
「娼婦?母さんは?」
「待て、大丈夫だ。ある男、知り合いがすぐに気づいて身請けをした。エラルは今そいつと所帯を持って、子供もいる」
力が抜けた。
母さんが、結婚、子供・・・。
追いつかない。
嬉しいはずなのに、複雑。
僕のことは忘れてしまったのか?
悲しい・・・。
「エラルはずっとお前のこと気にしてるよ。お前の幸せを思ってエンリュリッヒ侯爵家に手紙を送らないんだ」
「ほんとう、ですか?」
声が・・・震えた。
「ああっ、エラルの旦那もいい奴だから、君を気にしてるよ。少し・・・侯爵に嫌がらせしてるみたいだかな・・・」
「父上に嫌がらせ?」
「いやいや、大したことじゃ無い。お前がエラルの居場所も知り合いだろうが、今すぐは無理だ。奴に聞いてからじゃないと・・・、て・・・あれ?」
最後は小さな声だった。
何が、あれ?だ?
「メリアはお前のこと気づいてるのか?」
首を振った。
「覚えてないみたいだ」
「それはないはずだが・・・。メリアはずっとアンを探して・・・、あっ、お前、メリアはアンを女の子と思ってるぞ」
えっ?
・・・・・・・・・。
女の子・・・。
言ったこと・・・なかった・・・。
初歩的ミス・・・。
ガクッと肩を落とす。
「気を・・・落とすな・・・」
タリオンの言葉が虚しく感じた・・・。
彼に会うのは難しい。年中どこかしらに行っている上、王都にはこない。他の場所に行くには父の目もあるので、行けないのだ。
こんな絶好のチャンスを逃せない。
彼も僕のことに気づいてくれた。
わざわざ、彼女に気を遣ってくれたのだ。
天幕に入るなり、タリオンは抱きしめてきた。
ぐぇっ!
強い!締まる。
「久しぶりだなアン」
「タリオン・・・」
10年前まで、僕は彼の元に母さんといた。母と父上とあってはならない関係の末、僕を産んだ。父上の正妻は嫉妬深く、報復を恐れた母は、知り合いのタリオンに保護を求めたのだ。
裏方の仕事をしていた。衣食住が保障された生活。贅沢なことはできなかったし、プライベートもほぼ無いものだったが、毎日が楽しかった。
正妻の執事が現れるまでは・・・。
父上と正妻の子供・・・僕より二歳年上の・・・兄上が病気で死んだのだ。
正妻は、難産がもとで次は見込めなかったらしく、そこで、昔、父上と関係があった母さんに目をつけ居場所を突き止めたのだ。
そこで、僕のことがバレた。
誘拐のよう連れて行かれた。
当時、正妻の目を欺く為、女の子の格好をしていたが、それも虚しく・・・、連れて行かれた場所で水浴びした際、それもバレた。
正妻の顔が歪んだのを今でも覚えている。
嫉妬と妬み、悔しさ、そういったものを僕に向けた。
最低限の教育しかしていなかった僕に対してあの女は厳しい教育をした。できなければムチを使うこともあった。
父上は幾度も僕を助けてくれた。
仕切りに謝り、抱きしめてくれた。
僕がこうしているのも父上のおかげだ。
あの女は・・・、3年前、病気で死んだ。
寂しい最後だっただろう。知らない。
5年前に、金を湯水のようあの女に、父上はあの女の執事の悪事・・・不正や強要の事実を突きつけ、領地の離れに閉じ込めたのだ。あの時の甲高い声で叫びながら去って行った。
一人で死んでいったらしい。葬式も質素だった。あの女の生家は例の執事のこともあり、何も言ってくることも無かった・・・。
「大変だったな」
タリオンとサジュは僕の話を静かに聞いてくれた。頑張ったな、と頭をなぜてくれる。
「タリオン、母さんは?」
「・・・お前がいなくなったあと、あの正妻が手を回して、噂を流されてここを出て行ったんだ。その・・・、いいにくいんだが、娼婦まで身を落として・・・」
「娼婦?母さんは?」
「待て、大丈夫だ。ある男、知り合いがすぐに気づいて身請けをした。エラルは今そいつと所帯を持って、子供もいる」
力が抜けた。
母さんが、結婚、子供・・・。
追いつかない。
嬉しいはずなのに、複雑。
僕のことは忘れてしまったのか?
悲しい・・・。
「エラルはずっとお前のこと気にしてるよ。お前の幸せを思ってエンリュリッヒ侯爵家に手紙を送らないんだ」
「ほんとう、ですか?」
声が・・・震えた。
「ああっ、エラルの旦那もいい奴だから、君を気にしてるよ。少し・・・侯爵に嫌がらせしてるみたいだかな・・・」
「父上に嫌がらせ?」
「いやいや、大したことじゃ無い。お前がエラルの居場所も知り合いだろうが、今すぐは無理だ。奴に聞いてからじゃないと・・・、て・・・あれ?」
最後は小さな声だった。
何が、あれ?だ?
「メリアはお前のこと気づいてるのか?」
首を振った。
「覚えてないみたいだ」
「それはないはずだが・・・。メリアはずっとアンを探して・・・、あっ、お前、メリアはアンを女の子と思ってるぞ」
えっ?
・・・・・・・・・。
女の子・・・。
言ったこと・・・なかった・・・。
初歩的ミス・・・。
ガクッと肩を落とす。
「気を・・・落とすな・・・」
タリオンの言葉が虚しく感じた・・・。
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