【完結】結び屋 アメリア・ブロー〜他人の幸せを結んでいますが、自分の幸せの相手には気付きません〜

彩華(あやはな)

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四十六話、サーシャス視点2

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 次の日、昼から学園を休んでタロ=タジェロに行きました。

 彼に無償に会いたくなったからです。
 彼の顔を見れば、この晴れない気持ちが収まると思ったから・・・。

 彼の演技は素晴らしい。
 空中で回転。彼の剣を使っての演技はすごい。鍛えてあげられた筋肉を惜しげもなく見せる。
 美しいわ・・・。

 あら、今日は新顔の女性がいる・・・。
 目元だけのマスクしてるけど女性よね。身のこなしが滑らか。
 まあ、二人で剣のジャグリング?!
 まあ、次は剣舞なのかしら?
 凄いわ。
 満足そうな顔・・・。
 羨ましい。
 あの人・・・彼に気があるのかしら?
 嫌な笑み・・・。

 触らないで・・・。
 彼に触れないで。

 周りもきゃーきゃー言っわないで!!

 彼、マキシムは私のものよ!

 誰にも、渡さない・・・。

 


 彼を見たのはセジャルス王国に来て初の公演の時。
 あまりの素晴らしさに、声をかけにバックヤードに行った時だった。
 美しい茶金色の髪に翡翠色の目に目を奪われた。一目惚れというのかしら。
 すごく惹きつけられた。
 
 彼に会いたくて、毎日のように通って、彼に会った。
 そして、話を聞いた。

 貴族だったのに、婚約破棄をした事で、除籍なんて有り得ないって思った。
 彼が惚れたと言う女に嫉妬をした。

 大変な目にあったのね。
 苦労したのね。

 だから、いろいろ、プレゼントもしたわ。
 喜んでくれるから、嬉しかった。
 離れたくなかった。

 そうだ・・・私の愛人になればいいんじゃないかしらと思ったの。
 ずっとそばでいられるもの。
 もとは貴族なんだし、文句は言われないわ。私は王女ですもの。
 いずれお父様が決めた相手と結婚しなきゃいけないでしょう。でも、清い関係なら愛人がいてもいいじゃない、そうよ、そうしましょう!

 そう思って、彼に言ったけど、「自分は幸せにする資格はない」って。
 かっこいいわ。
 諦めきれない。

 だから、ここまで追いかけてきた。
 必ず手に入れるわ。

 演技が終わると、バックヤードへと行った。セジャルス王国とは違いから通して貰うまでに時間を要した。
 
 私はセジャルス王国の王女なのよ!
 早くしなさい!
 イライラするわ。

 やっと通してもらえた。
 誰もいない天幕の中で彼に抱きつく。
 彼も優しく抱き返してくれた。
 
 幸せだわ。
 心が満たされる。

「サーシャ・・・」

 震える声。

 どうしたのかしら。
 
 身体も・・・震えている・・・。

「サーシャ・・・、これが貴女に会える最後に
なると思います」
「マキシム?」
「・・・、すみません・・・。団長にいろいろとばれて、逃げようと思って、います」
「どう言うことなの?」
「ここでいたら、死ぬまでこき使われる・・・、その前に逃げようと・・・」 
「マキシム・・・」
「だから、もう貴女に会うことはないです」
「いやよ。じゃあ、やっぱり私の愛人になって」
「それではダメなんです。遠くに逃げないと・・・あの人は・・・追ってくる・・・」
「私はセジャルス王国の王女よ、そんなの私がどうにかするわ」
「王女・・・、尚更、無理です。バレる!わたしは貴族に顔を出すことはできないんです!」
「じゃあ、どうするの?」
「だから、逃げるしか・・・静かに暮して・・・田舎、誰も知らない田舎に行こうと、思っています」
「私・・・私も行くわ」
「サーシャ・・・?」
「私も貴方についていく、それならいいでしょう」
「サーシャ・・・」


 マキシムは強く抱きしめてくれた。


  
 この時・・・私は小説に出てくるヒロインのように感じた。
 私しか、彼を支えられないって。
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