【完結】結び屋 アメリア・ブロー〜他人の幸せを結んでいますが、自分の幸せの相手には気付きません〜

彩華(あやはな)

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閑話〜正騎士団団長ガイル

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 正騎士団団長になって二年目。
 国王陛下直属の正騎士団、名誉ある団長。
 どれほど嬉しかったか。
 過去、「眠れる獅子」と言われるタリオ・タジェロアのような勇猛果敢になりたいと思って夢が叶ったのだから。

 だが、今この状況は背水の陣といえた。



 ラフィス殿下から、手伝って欲しいと潤んだ瞳で見上げられたことから始まった。

「ガイル、わたくしを手伝って欲しいの。わたくしをいじめる者がいるの」

 輝く金の目を涙で濡らす顔はあたかも女神のようで、それに抗える者がいようか。
 自分の正規の役目を忘れ、二つ返事で頷いた。休みの者を集め、ラフィス殿下のためだけの兵を作り向かったのは学園の、学園祭真っ只中の学園。
 自分を正義と思い、一組のカップルの前に立ちはだかる。
 殿下の言われるまま、動こうとした時、目の前の女性に言われた。

「あなた方の主人はラフィス殿下と思って宜しいのですね」と。

 痛いところをつかれた。
 わたしの、わたしたち主は国王陛下だ。

「見たところ正騎士団の方とお見受けしましたが、正騎士団は国王陛下の直轄のはず。いつから、ラフィス殿下の近衛兵になったのですか?これは陛下のご意向ですか?それならば書状をお出しください。確かめた上、わたしは牢でもはいります。ですが、ないというなら、わたしがあなた方にはむかっても、文句はありませんね」

 彼女はよく知っていた。

 よくいる茶色の髪に茶金の瞳。その瞳の輝きに一瞬怯んでしまった。国王陛下やアルゼルト殿下を目の前にした時のような気分になった。
 しかし、わたしは正騎士団団長。ここで引くわけにはいかなかった。どうであれ、ラフィス殿下の為にやらなければと、使命だけで動いたものの、気づけば自分は地面についていた。
 わたしをそのようにしたものは、まだ、少年の影を宿す若者。
 仲間も、彼女の知り合いがやりこめていた。
 
 馬鹿な・・・。
 これまで、自分の鍛錬を欠かしたことは一度もない。それなのに最も簡単に倒されるとは・・・。

 あまりのことに学園長ことカイザック様の一喝により、学園長室に行くことになった。

 
 驚きの連続の始まりだった。

 役に二十年ほど前に失踪したとされるサジュエル殿下にあの「眠れる獅子」タリオ・タジェロアが目の前にいるのだ。
 それだけなら、ともかく、えげつない関係性が暴露されていく。

 先ほどの女性が王族ゆかりと言われ納得。あの瞳は、気のせいではなかったのだ。

 しかし、この空気の中、よく彼女とその弟はしゃべることができる。

 アルゼルト殿下もラフィス殿下も顔色を悪くされているのに。

 みろ、周りはもう、晩餐に出される、豚の丸焼き、いや、締められる前のアヒルの様だぞ。
 いつ、倒れてもおかしくないくらい顔色が悪くなっている。自分もおかしくなりそうだ。早く立ち去りたい。
 だが、正騎士団の責任もある・・・。

 にしても・・・、なんだ、このカオスな状況・・・。
 既に拷問なんだが・・・。

 はっ、『軍鬼』と『剣姫』!
 聞いたことある。
 たしか、23年前のスタンピートで功績を上げた二人だ。
 なんて事だ・・・。まさか・・・。
 あっ、小さな天使が侯爵の足を蹴った。
 可愛い・・・。

 いやいや、わたしは幼児趣味じゃない!

 それより、エンリュリッヒ侯爵・・・、だいぶ顔色が青く・・・集中攻撃・・・可哀想に・・・。

「「「ブロー家を敵に回した奴が悪い」」」

 そうか、
 わたしは無謀な事をしたのだな。
 売るべきでない一家に喧嘩を仕掛けたのか・・・。

 わたしだけでなく、部下も巻き添いにしたわたしが、悪い。
 部下たちも、蒼白な顔で下をみていた。

 きちんと罪は償おう。
 やめる時を間違わぬようにしなければ・・・。


 わたしはタリオ・タジェロアの横で会場を見る。

「さあ、お前の実力を見せてみろ」

 「眠れる獅子」はわたしに向かって吠えた。

 
 
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