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序章
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わたしの名前はエルファと言う。
二つ名として『燐火の魔女』と呼ばれていた。
これでも、昔はロザウド侯爵家という家名があったが失われて久しい。
そんなわたしは今、民衆に囲まれてた断頭台の前に立たされていた。
「これより、『燐火の魔女』の処刑を行う」
わたしに処刑執行人が周りに・・・いや、物見台に座わり、こちらを楽しそうに見ている国王様と王妃様に聞こえるよう声を張り上げる。
わたしは彼らを見た。
そして、彼らもわたしを見ている。
今日のわたしは綺麗だろう。
最期の我儘として、身体を清め髪を整え化粧をして貰った。そして、真新しい真っ白な衣装を身につけている。
いつ以来だろう・・・。こうして着飾ったのは。貴族の娘では無くなって以来のことかもしれない。
綺麗にしてくれた女性たちに、わたしは感謝していた。
こんな女性らしい姿で逝けるなら本望だ。
もう、この国にわたしは必要ない。
遠くからでも、国王夫妻がわたしを見て笑っているのがわかる。
昔からこんな風だったのだろうか?特に王妃である妹はもっと・・・もっと・・・違っていた。
彼らを変えたのはなんだろう。
昔を思い出し、わたしは微笑む。
『よいのか?我が力をもってすれば、こんな茶番壊すことなど容易ないぞ』
不意に頭の中に言葉が聞こえてきた。
わたしが契約している精霊ーセイカの声だ。
確かに、セイカの力なら封じられた魔力も解くこともできるし、この状況を打破することもできる。
でも・・・もう、いいのだ。
わたしは疲れていた。
わたしは魔力が多く、その魔力に魅せられ契約したセイカの存在が偉大なせいで、皆から疎まれている。
だから、貴族位を剥奪され、これまでの戦争の道具にされてきた。
彼が目指す国のためにー。
今のこの国にはわたしの魔力そのものが脅威になってしまっている。
わたしにそんなつもりはなくても、だ。
『もういいの』
『逝そぐな・・・』
『セイカとの契約の代償を払うのが、しわしわのおばあちゃんでなくなっただけよ』
『・・・そう、だが・・・』
わたしは小さく笑った。
「何がおかしい!」
死刑執行人が憤り、わたしを殴ってきた。あまりにまともに受けてしまい、倒れ込んでしまう。
あなたに向かってじゃないのにー。
倒れたわたしを彼は見下したように笑ってきた。
「最期に何か言うことはあるか?」
ニヤニヤしながら言う定番のセリフに、わたしは少しだけ考えたのち答える。
「わたしの首を刎ねた後は、すぐに離れてください。わたしが死ねばその身体は火に覆われて燃え尽きます」
「?」
執行人はわかっていないようだ。
「言葉通りよ」
わたしが死ねば、セイカの契約通りこの身体も魂もセイカの物となる。そのためセイカの炎で焼き尽くされるだろう。
わたしは空を見上げた。
今のわたしには悲しみだけしかない。
もう、わたしの大事な人はいない。
生きていてもしかたないのだ。
『まだ諦めるな』
セイカの声が響く。
どうしようもないではないか・・・。
引っ張られるようにして強引に断頭台に首を置かれた。
わたしは静かに目を閉じる。
『エル!まだだ。信じろ!』
セイカの声が響くと共に、轟音が鳴り響いたのだったー。
二つ名として『燐火の魔女』と呼ばれていた。
これでも、昔はロザウド侯爵家という家名があったが失われて久しい。
そんなわたしは今、民衆に囲まれてた断頭台の前に立たされていた。
「これより、『燐火の魔女』の処刑を行う」
わたしに処刑執行人が周りに・・・いや、物見台に座わり、こちらを楽しそうに見ている国王様と王妃様に聞こえるよう声を張り上げる。
わたしは彼らを見た。
そして、彼らもわたしを見ている。
今日のわたしは綺麗だろう。
最期の我儘として、身体を清め髪を整え化粧をして貰った。そして、真新しい真っ白な衣装を身につけている。
いつ以来だろう・・・。こうして着飾ったのは。貴族の娘では無くなって以来のことかもしれない。
綺麗にしてくれた女性たちに、わたしは感謝していた。
こんな女性らしい姿で逝けるなら本望だ。
もう、この国にわたしは必要ない。
遠くからでも、国王夫妻がわたしを見て笑っているのがわかる。
昔からこんな風だったのだろうか?特に王妃である妹はもっと・・・もっと・・・違っていた。
彼らを変えたのはなんだろう。
昔を思い出し、わたしは微笑む。
『よいのか?我が力をもってすれば、こんな茶番壊すことなど容易ないぞ』
不意に頭の中に言葉が聞こえてきた。
わたしが契約している精霊ーセイカの声だ。
確かに、セイカの力なら封じられた魔力も解くこともできるし、この状況を打破することもできる。
でも・・・もう、いいのだ。
わたしは疲れていた。
わたしは魔力が多く、その魔力に魅せられ契約したセイカの存在が偉大なせいで、皆から疎まれている。
だから、貴族位を剥奪され、これまでの戦争の道具にされてきた。
彼が目指す国のためにー。
今のこの国にはわたしの魔力そのものが脅威になってしまっている。
わたしにそんなつもりはなくても、だ。
『もういいの』
『逝そぐな・・・』
『セイカとの契約の代償を払うのが、しわしわのおばあちゃんでなくなっただけよ』
『・・・そう、だが・・・』
わたしは小さく笑った。
「何がおかしい!」
死刑執行人が憤り、わたしを殴ってきた。あまりにまともに受けてしまい、倒れ込んでしまう。
あなたに向かってじゃないのにー。
倒れたわたしを彼は見下したように笑ってきた。
「最期に何か言うことはあるか?」
ニヤニヤしながら言う定番のセリフに、わたしは少しだけ考えたのち答える。
「わたしの首を刎ねた後は、すぐに離れてください。わたしが死ねばその身体は火に覆われて燃え尽きます」
「?」
執行人はわかっていないようだ。
「言葉通りよ」
わたしが死ねば、セイカの契約通りこの身体も魂もセイカの物となる。そのためセイカの炎で焼き尽くされるだろう。
わたしは空を見上げた。
今のわたしには悲しみだけしかない。
もう、わたしの大事な人はいない。
生きていてもしかたないのだ。
『まだ諦めるな』
セイカの声が響く。
どうしようもないではないか・・・。
引っ張られるようにして強引に断頭台に首を置かれた。
わたしは静かに目を閉じる。
『エル!まだだ。信じろ!』
セイカの声が響くと共に、轟音が鳴り響いたのだったー。
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