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二章、学園時代

レイザード視点

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「お前がいて助かった」

 レイドリックは嫌な笑いをする。
 本当に血の分けた兄弟なのか分からなくなることがあった。

「アス兄。強いからな~」
「努力すれば、レイドも強くなるだろう。もっと真剣になればいいだろう」
「面倒」
「なら、王位を放棄すればいいだろう!」

 こんなふざけたやつが国王になれば民衆が可哀想だ。だが、影である僕が口答えし、それを聞き入れるわけはない。

「何言ってるんだ。俺の影が!」

 レイフリードの気配が膨れ上がり、凶悪ともいえる禍々しい姿が具現する。
 レイド自身も同じような表情を見せる。

「これで俺が王太子だ。そして、国王になる。そうしたらこの国はすべて俺が統べる。面白いじゃないか」 

 本当にレイドが国王になってよいのだろうか・・・。自分の片割れだからと思い、手伝ってきたが、もしかすれば間違っているのかもしれない。

「今更、言うなよ。まっ、言っても、お前は存在しないんだ。お前は俺のために働けばいい」

 レイドは僕と同じ顔で醜く笑った。イフリードの気配で僕を脅しながら。
 

 やり場のない思いにかられる。

 こんな時に思い出すのはいつもエルファのことだった。
 
 まだ幼い頃に、隠れるように散歩をしていると、迷子になっていた少女。他人ひとに知られてはいけませんと監視役の侍女にいわれたが、道案内をした。だが、急にいるはずもない魔獣が襲ってきて、逆に彼女は僕を助けてくれた。

 あの後、僕は国王陛下に叱られ、ますます部屋から出ることを許されなくなった。
 レイドリックの代わりとしてだけすごせる日々が続く。

 10歳になり、内密に行なわれた精霊の儀でジニーと契約してからは人目を盗んで抜け出せるようになった。ジニーが人の気配や様子を教えてくれるのだ。

 だからこそ、僕はカリナ嬢の精霊報告に王宮に付いて来ていたエルファに会いことができた。
 会えたことで、以前できなかったお礼が言えた。そしてたくさん会話をする。彼女は僕の話に興味を持ってくれた。質問を返してくれるのは初めてで嬉しくて、新鮮だった。

 楽しい時間はあっという間に終わる。また会えたら・・・と約束をしたが、それ以降彼女に会うことはなかった。
 
 だからまさか、学園で僕がお気に入りにしている秘密の場所に彼女がいたのには驚いた。
 やはり、彼女との会話は楽しかった。
 僕はクラスの女の子たちは甲高い声をあげ、鼻が曲がりそうなきつい香水をつけていることもあって苦手にしている。
 でも、彼女は違う。
 優しい匂いだし、静かに話をしてくる。何より僕の話をじっくり聞いてくれ、わからないことはなんでも聞いてきた。彼女のする話も興味深かい。
 彼女の傍は安心できた。

 彼女の精霊と、ジニーが僕たちの秘密のお話会を見守ってくれているおかげで、たくさん話す時間が持てている。

 でも、僕はまだ言っていない。
 『レイドリック』ではなく、双子の弟だと、まだ内緒にしたままだ。

 話したいが話せない事実を悩んでいる。

 彼女の精霊ものことに気づいてはいるようだが、精霊の誓約で言えないでいるのだろう。

 どうすればいいか、僕は迷っている。


「カリナの姉も必要だな。カリナさえこっちに引き込めたらいいと思ってたが、聞こえるにあの力は使えるみたいだ。この先を考えると必要になる」
「関係ない者まで引き込むな」

 エルファまでこのいざこざに関わらせたくない。
 このこともあるから自分のことを正直に話せなかった。

「俺の影だろう。影は黙って従えばいい。そうそう、お前にはサネイラ国に行って貰おう。これは命令だ」
「サネイラ国?何故?」
「これからのためだ」
「嫌だと言えば?」
「兄上の将来は僕の手の上だよ」

 僕が何も言い返すこともできないのがわかっているからこそ、人を見下してくる。


 ・・・・・・どうすればいい・・・。

 僕は唇を噛み締める。無力な自分が悔しかった。

 
 
 
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