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三章、サネイラ国

カリナ3

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 お姉様は最年少で魔術騎士団に入った。
 クラスのみんなは賞賛とともに、魔女ではないかと噂していた。

 嬉しいが、憎くも思った。
 お姉様ばかり認められているように思えた。どんなに必死に頑張っても、伸びない。それが悔しくて、努力する。

 なんで!!勝てないの?

 クラルテクラリは『毎日の積み重ねよ~』というが、今すぐに力がほしいくてたまらない。

 クラスのみんなも、口先だけで応援するだけで、わたくしの必死さを理解してくれないでいた。


 王宮でレイドリック殿下と恒例のお茶会をしていると、殿下がお願いをしてきた。

「カリナ嬢。お願いがあるのだが、聞いてもらえるかい?」

 整った顔でそう言われるとドキドキする。

「君のお姉さん、エルファ嬢のことなんだ」

 その言葉にわたくしはあからさまに嫌な表情をしたのだと思う。殿下は不思議そうに首を傾げて聞いてきた。

「どうかしたかい?仲が良いと聞いていたが、喧嘩でもした?」

 慌てて首を振る。
 でも、今のわたくしには笑うことはできなかった。

「いえ・・・」
。ちゃんと僕の目を見て話してほしい。君のことを知って置きたいんだ」

 澄んだ青い瞳がわたくしだけを見ていた。
 意を決して聞いてみる。

「殿下は・・・姉と知り合いですか?」
「以前、魔術科へ話をしには行ったが?」
「本当ですか?アスナルド殿下との試合の後、姉を見ていませんでしたか?」

 殿下は、初めてきょとんとした表情だったが、少しして笑いだした。

「ふふっ、きっとカリナ嬢が見たのは、僕が試合に勝って嬉しくて空の鳥を見てる時のことかな?鳶が気持ちよさそうに飛んでたんだよ」

 鳶?
 あの時、鳥を見てたの・・・。なんだ・・・。

 ほっとした。

「へぇ~、あの場所に君のお姉さんいたんだ」
「すいません。変なことを言ってしまいましたわ」

 恥ずかしくなり、俯いた。

「聞いてくれて嬉しいよ。でも、まだ他にあるんじゃない?」
「どうして・・・」
「それだけでそんな顔はしないよ。ちゃんと僕に話をして、ね?」

 殿下に促され、わたくしは自分のモヤモヤしていることをすべて吐き出す。殿下はわたくしの顔を見ながら合槌を打ってくれた。

「ありがとう、全部話してくれて」
 
 他人に話ができて、スッキリする。

「身内だからこそ、どうにもできない思いもあるよね」
「殿下もですか?」
「勿論だよ。だからこそ、アス兄上と試合をしたんだ」

 そうか・・・。
 そういうものなのかと納得する。

「それでだ、お願い事の続きなんだが・・・」

 にこやかな表情からすっと目が細められ、わたくしを見てきた。
 真剣な表情に姿勢を伸ばす。

「君からお姉さんに言ってほしいことがあるんだ」 
「言ってほしいこと、ですか?」
「簡単なことだよ。君にしかできないことであり、君の抱く感情も薙ぎ払うものだ」

 わたくしのこの感情を薙ぎ払う?
 そんなことができるの?

「彼女は君を大事に思っている。それを利用するんだ。君は彼女にお願いごとをするんだ。そうすれば彼女は君のために動くだろう」

 お姉様に笑いかけてお願いする?
 それだけでいいの?

「お願いする内容は一つ。『わたしを護って』だ。そうすれば、どんなに力を得ようとも彼女は君を護り続ける。君を傷つけることはない。逆に巨大な力を持つ彼女を従えることができるんだ」

 震えた。
 恐怖ではない、歓喜にだ。

 私がお姉様に近づくのではなく、お姉様をわたくしが従える。

「頂に登った僕と君の足元でひれ伏す彼女を見たくないかい?」

 ぜひにでも見たい。
 そうなれば、どんなに素晴らしいことか。
 
「僕のお願いを聞いてくれるかい?」

 わたくしは笑って頷いた。
 
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