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連載
番外編、バルト
世の中、逆らってはならない者がいると聞いたことはあったが、まさか自分が出会うとは思わなかった。
皇妹殿下から紹介された女性とはすぐに婚姻を結んだ。
強引に腕を取られ、手続きをしに行った。
神殿の人から『おめでとうございます』とにこやかに言われたが、笑う事もできなかった。
僕の様子に何か察した神殿の人が気まずそうにしていた。
彼女はにこやかに返事を返していた。
「ありがとうございますわ。直接婚姻届を出すことができて、本当に嬉しいですわ。手違いで出してないなんてことありませんもの」
ぐはっ・・・。
知っている。
確実に知っていて、言っている。
隣の美しい顔が怖かった。
屋敷に帰れば、リゼッタのウェディングドレスのある部屋に強制的に連れ込まれた。
「今日からわたしの部屋にしますわ」
「待ってくれ」
「はい?」
「ここは・・・」
「妻のための部屋ですもの、わたしに資格はありますわよね」
唇の端がくいいっと、あがる。
ひっ・・・。
怖い!
こんな笑顔が怖いと感じる人に初めて出会った。
「まあ、ウェディングドレス、素敵ですわね?でも、わたしには小さいようですわ。お片付けしましょうか?」
「まて、これは!!」
「今、庭で燃やされるのと倉庫のチェストに片付けるのとどちらを選びます?」
「はいっ?」
何を言っている?
彼女は帝国から連れてきた侍女から、火のついている蝋燭をもらった。
ユラユラと蝋燭の火が揺れている。
僕の前にすうっと持ち上げてきた。
オレンジ色の火が揺らめいだ。
「よく燃えるでしょうね。わたしがここにきた記念に燃やすのも綺麗かしら?」
ふふふっと笑う。
ゾワワワワッ!
やばい!
何も言えずにいた僕に決定事項を突きつけてきた。
「チェストにお片づけでよろしいですわね?」
こくこくと頷くしかなかった。
そして、その夜は喰われた。
喰ったのではない。喰われた。抵抗もできずに・・・何故だ。
しかも、行為が終わって、彼女は恥じらいもなくうっとりとした表情で言ってきた。
「あら~。初めてでしたの?ふふっ。大事に守っていたものを貰ってしまったのね。ご馳走様」
理想はどこに行ったのだろう・・・。
リゼッタと願って夢見たものはどこに?
いや、リゼッタが死んでしまったからもう叶う事もないが、男としてリードを・・・。
なんだろう・・・。
何もかも奪われたような感じがしてしまった。
それから、僕の日常は変わった。
彼女・・・アルミスは優秀だった。
もしかするとサリーナよりかもしれない。
口も行動も申し分ない。
働き者だった。
屋敷の人間にも有無も言すこともなく使っていった。
怖かった。
真っ黒な瞳は人の心を見通しているようにも思えた。
サリーナの残したドレスに関しても『気持ち悪い』と言われ、すぐに売った。
あれだけ我儘三昧の母上にたいしても、コテンパンにしてしまった。
今では母上は一気に老け込んでいる。たが、痴呆防止としてしっかりこき使っている。
僕は領地に逃げるように行く。
『薬草の為に』を理由に。
仕事の大半をアルミスが手伝ってくれるので、薬草のことに力を入れることができるようになっていた。
薬草栽培は順調である。
薬草園も広げたし、効果はそのままに他の環境でも育てることができるよう研究もすすんでいる。
それでも『帰って来い』手紙が届くと帰らざるを得ない。
ブルリと震える僕に対してカイザックが『がんばれや~』と無責任な応援をしてくれるのが常だった。
数年後にはそんな僕にもアルミスは子供をくれた。
可愛い。
自分の子供が抱けるとは思わなかった。
子供ができてから、彼女は少しだけ優しくはなったが、僕にはまだまだ、手厳しい。
思い込み的な事を言おうものなら、ビンタが飛んでくることもある。
そんな毎日だが、僕はそれでちょうどいいのかもしれないと思う今日この頃である。
◇◇◇◇◇
明日が最後となります。
皇妹殿下から紹介された女性とはすぐに婚姻を結んだ。
強引に腕を取られ、手続きをしに行った。
神殿の人から『おめでとうございます』とにこやかに言われたが、笑う事もできなかった。
僕の様子に何か察した神殿の人が気まずそうにしていた。
彼女はにこやかに返事を返していた。
「ありがとうございますわ。直接婚姻届を出すことができて、本当に嬉しいですわ。手違いで出してないなんてことありませんもの」
ぐはっ・・・。
知っている。
確実に知っていて、言っている。
隣の美しい顔が怖かった。
屋敷に帰れば、リゼッタのウェディングドレスのある部屋に強制的に連れ込まれた。
「今日からわたしの部屋にしますわ」
「待ってくれ」
「はい?」
「ここは・・・」
「妻のための部屋ですもの、わたしに資格はありますわよね」
唇の端がくいいっと、あがる。
ひっ・・・。
怖い!
こんな笑顔が怖いと感じる人に初めて出会った。
「まあ、ウェディングドレス、素敵ですわね?でも、わたしには小さいようですわ。お片付けしましょうか?」
「まて、これは!!」
「今、庭で燃やされるのと倉庫のチェストに片付けるのとどちらを選びます?」
「はいっ?」
何を言っている?
彼女は帝国から連れてきた侍女から、火のついている蝋燭をもらった。
ユラユラと蝋燭の火が揺れている。
僕の前にすうっと持ち上げてきた。
オレンジ色の火が揺らめいだ。
「よく燃えるでしょうね。わたしがここにきた記念に燃やすのも綺麗かしら?」
ふふふっと笑う。
ゾワワワワッ!
やばい!
何も言えずにいた僕に決定事項を突きつけてきた。
「チェストにお片づけでよろしいですわね?」
こくこくと頷くしかなかった。
そして、その夜は喰われた。
喰ったのではない。喰われた。抵抗もできずに・・・何故だ。
しかも、行為が終わって、彼女は恥じらいもなくうっとりとした表情で言ってきた。
「あら~。初めてでしたの?ふふっ。大事に守っていたものを貰ってしまったのね。ご馳走様」
理想はどこに行ったのだろう・・・。
リゼッタと願って夢見たものはどこに?
いや、リゼッタが死んでしまったからもう叶う事もないが、男としてリードを・・・。
なんだろう・・・。
何もかも奪われたような感じがしてしまった。
それから、僕の日常は変わった。
彼女・・・アルミスは優秀だった。
もしかするとサリーナよりかもしれない。
口も行動も申し分ない。
働き者だった。
屋敷の人間にも有無も言すこともなく使っていった。
怖かった。
真っ黒な瞳は人の心を見通しているようにも思えた。
サリーナの残したドレスに関しても『気持ち悪い』と言われ、すぐに売った。
あれだけ我儘三昧の母上にたいしても、コテンパンにしてしまった。
今では母上は一気に老け込んでいる。たが、痴呆防止としてしっかりこき使っている。
僕は領地に逃げるように行く。
『薬草の為に』を理由に。
仕事の大半をアルミスが手伝ってくれるので、薬草のことに力を入れることができるようになっていた。
薬草栽培は順調である。
薬草園も広げたし、効果はそのままに他の環境でも育てることができるよう研究もすすんでいる。
それでも『帰って来い』手紙が届くと帰らざるを得ない。
ブルリと震える僕に対してカイザックが『がんばれや~』と無責任な応援をしてくれるのが常だった。
数年後にはそんな僕にもアルミスは子供をくれた。
可愛い。
自分の子供が抱けるとは思わなかった。
子供ができてから、彼女は少しだけ優しくはなったが、僕にはまだまだ、手厳しい。
思い込み的な事を言おうものなら、ビンタが飛んでくることもある。
そんな毎日だが、僕はそれでちょうどいいのかもしれないと思う今日この頃である。
◇◇◇◇◇
明日が最後となります。
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