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しおりを挟むわたしは、自分の状況を享受しているわけではない。
だった反抗しないだけ。
どのタイミングで反旗を翻せば面白いか考えてはいる。
腕は痛い。殴られた頬も腹部も痛い。
痛めつけるだけ痛めて、気が済んだのか、自分の部屋で今頃女でも抱いているのだろう。
自分の環境を嘆いても変わらない。
それは学んで知っている。
わたしは、看守にお願いした。
紙とペンが欲しいと。
初めは渋っていたものの、わたしが使い物にならなくなれば、自分らに被害が出ると思わせ、同情をかわせ、それらをてにいれることに成功した。
少しずつ、暴虐王の信用を勝ちとる。
殴る蹴る、それと引き変えに情報を得る。
地下暮らしから城の一角に変えてももらった。
情報を得ることができればこっちのもの。
半分は見せかけの遊びを書く。後の半分は情報をかいて、買収した看守に全てを持たし国に送るのだ。
暴虐王の目に触れてもわからない。
ラックならわかる。
一緒に遊んだ彼なら、わたしの言いたいことがわかるだろう。
わたしは殴られる毎日を過ごしながらかきつづけた。
暴虐王という割に小心な男。周りを考えない無能な男。子供のまま大人になったのかと言いたくなった。
愛情に飢えた?
馬鹿らしい。
子供でも分別の判断はつく。
でもこの男は、短絡的思考しかない。
周りに流されて、うまくいかなければ人のせいにし、現実から目を逸らしてるただの小物。
泣く、弱々しい女をいたぶって楽しむクズ野郎。
泣きまねをしたわたしの素顔は笑いしかなかった。
鐘が鳴った。
合図だ。
虐殺王は慌てた。
城には火の手があがり、次々と死体の山ができるのが、窓から見えた。
「姫、ご無事ですか?」
ラックがやって来た。
わたしの姿を見て彼は怒りをあらわにした。手にかけられた鎖をとき、首輪を外してもらう。
ラックはわたしを抱きしめた。
懐かしい匂い。
落ち着く。
青くなって頬、擦れて血が滲む手首にキスをしていく。
まるで恋人のように。
虐殺王は首と胴体が分かれた。
わたしが切り落とした。と言っても非力なわたしでは無理で、骨が硬く、剣がかけた。
その分彼は悲鳴をあげた。
一発で仕留めることが出来なかった分、苦しんで死んだのだから、わたしは満足した。
彼の被害者はわたしだけではなかった。
何十人という男女がいた。
わたしは彼らから忠誠を誓われた。
わたしは国に帰り、父たる、国王陛下と対峙した。
虐殺王にとついで、2年。
その間に国王は老いていた。
義姉は嫁に行っていた。
義兄二人は王太子争いに共倒れしていた。
はぁ・・・
ため息しかでない。
わたしの手にすんなりと女王の地位が舞い込んだのだった。
わたしは望んでもいないのに・・・。
女王としてたつ。
宝石が付いて輝くドレス。王たる象徴の王冠。長い赤いマント。
すべてわたしには思い
ラックが膝を突き頭をさげる。
彼はわたしの名前を呼んでくれなかった。
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