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2.海の上
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ロイド殿下の誕生日パーティーは盛大なものだった。
各国の要人も参加され、三日三晩開催される。客人たちが退屈しないように工夫も凝らされていた。
オーケストラ、歌姫、道化師などのパフォーマンスは絶えることはなく、貴族たちのおしゃべりは無限に続いている。
そして、裏方である私たちも身を粉にして働いていた。リネン室を往復し、水を無駄遣いしないよう注意しながら食器を洗い、食事を出しに行く。それぞれ分担が分かれているとはいえ、時間によっては人数が足りていない。手の空いている者がそちらに回って手伝いをする、をしなければやっていけない。
それでも、夜はまだましだった。
貴族のたちも流石に深夜ともなれば、自室にこもる。おかげで夜勤者に任せたあとは就寝に着くまでわずかな時間がとれた。
パーティーの最終日の今日も人魚は歌っていた。
このパーティーが始まってからの夜は毎日歌声が聞こえる。
伸びのある声に興味があった。
どうしても人魚を直接見てみたくて、私はダメだとは思いながらそっと甲板へ行く。
仕事をさぼって、しかも貴族専用の場所に行くのがバレるとクビになるかもしれない。
周りを伺いながら誰もいないことを確認して外に出た。
縁から乗り出して見ても雲が月を隠しているので海面は暗く何も見えなかった。
それでも歌声は高らかに聞こえてくる。
なんでだろう?
いつもと同じような声なのに今日はなぜか不安に駆られた。
そう思っていると、入り口から声が聞こえてきた。
メイドが甲板にいることが見つかれば怒られてしまう。慌てて甲板の隅に救助用で置いてある樽を見つけて、その後ろに隠れた。
「あぁっ、最高な夜だよ、兄上、アルフ」
扉を開けて出てきたのは3人の男性のようだった。
「ロイド、飲み過ぎだ」
「殿下。大丈夫ですか?」
「いいじゃないか。どれだけこの16歳のパーティーを夢見てたと思う?去年の兄上のパーティーに出られなくて悔しかったんですよ」
「それはわかってる」
「海に面する国でいて16歳までは海に出てはいけないなんて、本当に最悪だ。アルフだってわかるだろう」
第一王子のリュート殿下と第二王子のロイド殿下のようだ。もう一人は・・・噂で聞く殿下の側近であるアルフ様だろう。
息を殺しつつ、話を聞いていたがメイドキャップが風に飛ばされそうになり、慌てて抑えた。
風が強くなってきている。
見上げると、空を厚い雲が覆っていた。
「殿下。嵐がきます。中に」
「風があるだけだろう」
「いえ、人魚が騒いでます。嵐を予告しています」
「まさか?」
ー人魚が騒いでる?嵐を予告?
アルフ様は人魚の言葉がわかるのだろうか?
好奇心が勝り、アルフ様の顔を見たくなり少しだけ顔を上げた。
その時ー。
「高波だ!掴まれ!!」
頭上で声が上がった。
見上げると、見張りをしていただろう船員が右手側を指差している。
船が大きく傾いたため、私は近くの木の壁に爪を立てしがみついた。
波が船の横を打ち付け、激しく揺れる。
「殿下!」
「大丈夫だっ」
2人の声が聞こえたと思うと、眩しい光と同時に耳をつんざく音、それに伴って船に衝撃が走る。雷が落ちた。
ーよりによってマストに落ちるとは!
雷を受けた中央のマストは燃え出し、火はロープをつたい、帆に移っている。
船員たちが船員室から慌てるように外に出てきて消火にあたり始めた。
急に雨が激しく降り出したため、火はすぐに消えそうだが波は激しくなり、右に左に船が揺れてだす。
その中、わたしは人差し指に息を吹きかけ集中する。
そして、壁に模様を描いた。
『船の安全』を願う紋様。
これさえあれば難破はしないはず。
これだけ揺れが大きければ、中も大変だ。食器がわれたのではずだ。早く行って手伝わなければ、私がいないことがバレてしまう。
そっと離れようとした時、再び声が聞こえた。
「また高波だ!大きい!掴まれ!」
言葉と共に波が覆い被さってくる。
「殿下!」
「キャプテン!」
「うわあっ!!」
波に飲み込まれた?!
身体が勝手に動き、彼らがさらわれただろう、海へ私は飛び込こんだ。
各国の要人も参加され、三日三晩開催される。客人たちが退屈しないように工夫も凝らされていた。
オーケストラ、歌姫、道化師などのパフォーマンスは絶えることはなく、貴族たちのおしゃべりは無限に続いている。
そして、裏方である私たちも身を粉にして働いていた。リネン室を往復し、水を無駄遣いしないよう注意しながら食器を洗い、食事を出しに行く。それぞれ分担が分かれているとはいえ、時間によっては人数が足りていない。手の空いている者がそちらに回って手伝いをする、をしなければやっていけない。
それでも、夜はまだましだった。
貴族のたちも流石に深夜ともなれば、自室にこもる。おかげで夜勤者に任せたあとは就寝に着くまでわずかな時間がとれた。
パーティーの最終日の今日も人魚は歌っていた。
このパーティーが始まってからの夜は毎日歌声が聞こえる。
伸びのある声に興味があった。
どうしても人魚を直接見てみたくて、私はダメだとは思いながらそっと甲板へ行く。
仕事をさぼって、しかも貴族専用の場所に行くのがバレるとクビになるかもしれない。
周りを伺いながら誰もいないことを確認して外に出た。
縁から乗り出して見ても雲が月を隠しているので海面は暗く何も見えなかった。
それでも歌声は高らかに聞こえてくる。
なんでだろう?
いつもと同じような声なのに今日はなぜか不安に駆られた。
そう思っていると、入り口から声が聞こえてきた。
メイドが甲板にいることが見つかれば怒られてしまう。慌てて甲板の隅に救助用で置いてある樽を見つけて、その後ろに隠れた。
「あぁっ、最高な夜だよ、兄上、アルフ」
扉を開けて出てきたのは3人の男性のようだった。
「ロイド、飲み過ぎだ」
「殿下。大丈夫ですか?」
「いいじゃないか。どれだけこの16歳のパーティーを夢見てたと思う?去年の兄上のパーティーに出られなくて悔しかったんですよ」
「それはわかってる」
「海に面する国でいて16歳までは海に出てはいけないなんて、本当に最悪だ。アルフだってわかるだろう」
第一王子のリュート殿下と第二王子のロイド殿下のようだ。もう一人は・・・噂で聞く殿下の側近であるアルフ様だろう。
息を殺しつつ、話を聞いていたがメイドキャップが風に飛ばされそうになり、慌てて抑えた。
風が強くなってきている。
見上げると、空を厚い雲が覆っていた。
「殿下。嵐がきます。中に」
「風があるだけだろう」
「いえ、人魚が騒いでます。嵐を予告しています」
「まさか?」
ー人魚が騒いでる?嵐を予告?
アルフ様は人魚の言葉がわかるのだろうか?
好奇心が勝り、アルフ様の顔を見たくなり少しだけ顔を上げた。
その時ー。
「高波だ!掴まれ!!」
頭上で声が上がった。
見上げると、見張りをしていただろう船員が右手側を指差している。
船が大きく傾いたため、私は近くの木の壁に爪を立てしがみついた。
波が船の横を打ち付け、激しく揺れる。
「殿下!」
「大丈夫だっ」
2人の声が聞こえたと思うと、眩しい光と同時に耳をつんざく音、それに伴って船に衝撃が走る。雷が落ちた。
ーよりによってマストに落ちるとは!
雷を受けた中央のマストは燃え出し、火はロープをつたい、帆に移っている。
船員たちが船員室から慌てるように外に出てきて消火にあたり始めた。
急に雨が激しく降り出したため、火はすぐに消えそうだが波は激しくなり、右に左に船が揺れてだす。
その中、わたしは人差し指に息を吹きかけ集中する。
そして、壁に模様を描いた。
『船の安全』を願う紋様。
これさえあれば難破はしないはず。
これだけ揺れが大きければ、中も大変だ。食器がわれたのではずだ。早く行って手伝わなければ、私がいないことがバレてしまう。
そっと離れようとした時、再び声が聞こえた。
「また高波だ!大きい!掴まれ!」
言葉と共に波が覆い被さってくる。
「殿下!」
「キャプテン!」
「うわあっ!!」
波に飲み込まれた?!
身体が勝手に動き、彼らがさらわれただろう、海へ私は飛び込こんだ。
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