(完結)泡沫の恋を人魚は夢見る

彩華(あやはな)

文字の大きさ
21 / 57

21.真珠1 (アルフ視点)

しおりを挟む
 彼女はいつも笑っていた。
 『面白いわね』
 そう言って、僕を見てくる顔が好きだった。僕に触れる白くて長い指にドキドキしていた。
  
 初めて出会った時まだ僕は10歳だった。浜辺の岩に彼女は腰掛け歌を歌っていた。気持ちよさそうな彼女に恋をした。
 恋に落ちるのに年齢はないのだと感じた。早く彼女に見合うような大人になろうと頑張った。

 でも僕の・・・・・・私の恋は叶わなかった。

 たくさんのことがあって彼女も私も傷ついた。
 彼女は私の前から消えた。
 そんな彼女の幸せを願うことしか私にはできなかった。
 
 彼女からもらった真珠を携えて、いつか彼女に会えるのを待ち望む・・・。


 ◇◇◇◇◇

 私は白紙の紙が机の上にペンを持った手をとめた。今日の報告書をしあげ、個人的な日誌をつけようとしたままゆらゆらと揺れるランプの炎をみつめる。

 ノックの音が聞こえ、アンナがお茶を持ってきてくれた。

「腑抜けた顔をしてますね」

 ぼぅっとしていたのを見抜かれたらしい。

「勤勉なアルフ様にしては珍しいですね」

 幼い頃から知っている分、アンナは私にずけずけ言ってくる。

「ちょっと考え事をしていた」
「フィーのことですか?」

 ペンが勝手に指から離れ小さな音を立てて転がった。

「アンナ・・・」
「フィーの前だと優しい顔をされますね。そんなに初恋の方に似ていますか?」
「・・・どうでもいいだろう。それより、黒髪の女性だ。彼女の様子は?」

 触れられたくなくて話を変える。アンナは鼻で息を吐き出すと報告してくれた。

「西館に部屋をご用意しました。今はまだ眠ってらっしゃいます」
「そうか・・・」
「あの方人魚でしょうか?」

 アンナも気にしているようだ。
 私は首を振る。

「どうだろう。一度に人魚が行く人も集まることは少ないからな」
「800年前きりですか?」
 
 アンナは物知りだとつくづく思う。優秀な侍女だと。

 お茶で喉を潤していると、コンコンとドアが鳴った。
 アンナが扉を開けるとそこにはフィーが神妙な顔で立っていて、私とアンナを見た瞬間、顔色をあからさまに変えた。
 
「す、すいません!お二人の貴重な時間に申し訳ありませんでした!!」

ーはっ??

「フィー!何考えてるの」

 アンナに首根っこを掴まれフィーは部屋に連れ込まれた。
 もじもじしながらも言いにくいことはっきり言ってくる。

「ですが、こんな夜遅くに二人っきりで・・・」
「あのねぇ~、侍女としてお茶をおもちしたの。これでも私には婚約者フィアンセがいるのよ。あと数ヶ月したらしばらく休むことになってるわ」

 アンナは首を離した手でフィーの頭をぺしりとはたいた。

「あ、そう、なんですか・・・」
「そうよ。あと言っておくけど、アルフ様は私の好みのタイプじゃないわ。どんなに笑顔を向けられて誘われてもなびくわけないでしょう」

 そこまでずばりと言い切られるのも辛く感じる。

「アンナ・・・」

 フィーが憐れんだ目で見てくるのだからため息を吐きたくなった。

「フィー、こんな時間になんのようだ」

 気を取り直して聞いてみる。
 彼女も用事を思い出したのか、姿勢を正し私を見てきた。
 
 彼女の真剣な表情をしている。

「そうでした。先日のご褒美をお願いしたくてきました」

 先日・・・、カラナイ国先ほどのパーティーの為のダンスレッスンの褒美だと思い出す。

「あれは、ダンスがなくなったんだ。ノーカウントだろう?」
「ダンスレッスンをしたからにはありです!」

 意気揚々に言ってくる。
 しかも力説してきた。

「来る日も来る日もセイネ様とアリー様のしごきに耐えました。これは褒美ものですっ!」

 そこまできつかったのか!?と思わせるほどの拳を握って言ってきてはこちらが折れざる得なくなる。

「マリーのレッスンはそんなにきつくはないと思うわよ」

 呆れたようなアンナの声に、フィーは首を振る。

「いえいえ、アンナ様。ダンスを知らないものには大変なことです。ましてやセイネ様は体力があまりなかったのですよ。基礎体力作りからしました!わたしも一緒に頑張ったんです!!」

 眼光の圧が強い。キラキラを通り越してギンギンに紫の目が輝いている。

「わ、わかった。褒美をやる。何が欲しいのか言ってみろ」

 私の言葉に彼女は嬉しそうに笑った。

「形は不揃いでいいので真珠を百粒ほど欲しいです!」 
「はあ~!??」

ー真珠を百粒!!ありえないだろう!

「待て!それはいくらなんでも無理だ!不揃いとはいえ、真珠にいくらかかると思っている!?」

 フィーの隣でいるアンナでさえ言葉を失っている。

 フィーは真珠の価格を知らなかいから簡単に言っているのだろうと思い、彼女に説明した。

「フィー。真珠一粒でダイアモンドと同じ価値はするんだぞ!それをわかっているのか?」

 そう言っても、彼女は不思議そうに首を傾げただけだった。
 しかも、とんでもないことに口にしたのだ。

「えっと・・・。岬の向こうにある村と人魚が契約して真珠の取引していました・・・、よね?」

ー知らない・・・。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

皇帝とおばちゃん姫の恋物語

ひとみん
恋愛
二階堂有里は52歳の主婦。ある日事故に巻き込まれ死んじゃったけど、女神様に拾われある人のお世話係を頼まれ第二の人生を送る事に。 そこは異世界で、年若いアルフォンス皇帝陛下が治めるユリアナ帝国へと降り立つ。 てっきり子供のお世話だと思っていたら、なんとその皇帝陛下のお世話をすることに。 まぁ、異世界での息子と思えば・・・と生活し始めるけれど、周りはただのお世話係とは見てくれない。 女神様に若返らせてもらったけれど、これといって何の能力もない中身はただのおばちゃんの、ほんわか恋愛物語です。

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

『影の夫人とガラスの花嫁』

柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、 結婚初日から気づいていた。 夫は優しい。 礼儀正しく、決して冷たくはない。 けれど──どこか遠い。 夜会で向けられる微笑みの奥には、 亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。 社交界は囁く。 「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」 「後妻は所詮、影の夫人よ」 その言葉に胸が痛む。 けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。 ──これは政略婚。 愛を求めてはいけない、と。 そんなある日、彼女はカルロスの書斎で “あり得ない手紙”を見つけてしまう。 『愛しいカルロスへ。  私は必ずあなたのもとへ戻るわ。          エリザベラ』 ……前妻は、本当に死んだのだろうか? 噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。 揺れ動く心のまま、シャルロットは “ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。 しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、 カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。 「影なんて、最初からいない。  見ていたのは……ずっと君だけだった」 消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫── すべての謎が解けたとき、 影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。 切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。 愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる

処理中です...