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21.真珠1 (アルフ視点)
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彼女はいつも笑っていた。
『面白いわね』
そう言って、僕を見てくる顔が好きだった。僕に触れる白くて長い指にドキドキしていた。
初めて出会った時まだ僕は10歳だった。浜辺の岩に彼女は腰掛け歌を歌っていた。気持ちよさそうな彼女に恋をした。
恋に落ちるのに年齢はないのだと感じた。早く彼女に見合うような大人になろうと頑張った。
でも僕の・・・・・・私の恋は叶わなかった。
たくさんのことがあって彼女も私も傷ついた。
彼女は私の前から消えた。
そんな彼女の幸せを願うことしか私にはできなかった。
彼女からもらった真珠を携えて、いつか彼女に会えるのを待ち望む・・・。
◇◇◇◇◇
私は白紙の紙が机の上にペンを持った手をとめた。今日の報告書をしあげ、個人的な日誌をつけようとしたままゆらゆらと揺れるランプの炎をみつめる。
ノックの音が聞こえ、アンナがお茶を持ってきてくれた。
「腑抜けた顔をしてますね」
ぼぅっとしていたのを見抜かれたらしい。
「勤勉なアルフ様にしては珍しいですね」
幼い頃から知っている分、アンナは私にずけずけ言ってくる。
「ちょっと考え事をしていた」
「フィーのことですか?」
ペンが勝手に指から離れ小さな音を立てて転がった。
「アンナ・・・」
「フィーの前だと優しい顔をされますね。そんなに初恋の方に似ていますか?」
「・・・どうでもいいだろう。それより、黒髪の女性だ。彼女の様子は?」
触れられたくなくて話を変える。アンナは鼻で息を吐き出すと報告してくれた。
「西館に部屋をご用意しました。今はまだ眠ってらっしゃいます」
「そうか・・・」
「あの方も人魚でしょうか?」
アンナも気にしているようだ。
私は首を振る。
「どうだろう。一度に人魚が行く人も集まることは少ないからな」
「800年前きりですか?」
アンナは物知りだとつくづく思う。優秀な侍女だと。
お茶で喉を潤していると、コンコンとドアが鳴った。
アンナが扉を開けるとそこにはフィーが神妙な顔で立っていて、私とアンナを見た瞬間、顔色をあからさまに変えた。
「す、すいません!お二人の貴重な時間に申し訳ありませんでした!!」
ーはっ??
「フィー!何考えてるの」
アンナに首根っこを掴まれフィーは部屋に連れ込まれた。
もじもじしながらも言いにくいことはっきり言ってくる。
「ですが、こんな夜遅くに二人っきりで・・・」
「あのねぇ~、侍女としてお茶をおもちしたの。これでも私には婚約者がいるのよ。あと数ヶ月したらしばらく休むことになってるわ」
アンナは首を離した手でフィーの頭をぺしりとはたいた。
「あ、そう、なんですか・・・」
「そうよ。あと言っておくけど、アルフ様は私の好みのタイプじゃないわ。どんなに笑顔を向けられて誘われてもなびくわけないでしょう」
そこまでずばりと言い切られるのも辛く感じる。
「アンナ・・・」
フィーが憐れんだ目で見てくるのだからため息を吐きたくなった。
「フィー、こんな時間になんのようだ」
気を取り直して聞いてみる。
彼女も用事を思い出したのか、姿勢を正し私を見てきた。
彼女の真剣な表情をしている。
「そうでした。先日のご褒美をお願いしたくてきました」
先日・・・、カラナイ国のパーティーの為のダンスレッスンの褒美だと思い出す。
「あれは、ダンスがなくなったんだ。ノーカウントだろう?」
「ダンスレッスンをしたからにはありです!」
意気揚々に言ってくる。
しかも力説してきた。
「来る日も来る日もセイネ様とアリー様のしごきに耐えました。これは褒美ものですっ!」
そこまできつかったのか!?と思わせるほどの拳を握って言ってきてはこちらが折れざる得なくなる。
「マリーのレッスンはそんなにきつくはないと思うわよ」
呆れたようなアンナの声に、フィーは首を振る。
「いえいえ、アンナ様。ダンスを知らないものには大変なことです。ましてやセイネ様は体力があまりなかったのですよ。基礎体力作りからしました!わたしも一緒に頑張ったんです!!」
眼光の圧が強い。キラキラを通り越してギンギンに紫の目が輝いている。
「わ、わかった。褒美をやる。何が欲しいのか言ってみろ」
私の言葉に彼女は嬉しそうに笑った。
「形は不揃いでいいので真珠を百粒ほど欲しいです!」
「はあ~!??」
ー真珠を百粒!!ありえないだろう!
「待て!それはいくらなんでも無理だ!不揃いとはいえ、真珠にいくらかかると思っている!?」
フィーの隣でいるアンナでさえ言葉を失っている。
フィーは真珠の価格を知らなかいから簡単に言っているのだろうと思い、彼女に説明した。
「フィー。真珠一粒でダイアモンドと同じ価値はするんだぞ!それをわかっているのか?」
そう言っても、彼女は不思議そうに首を傾げただけだった。
しかも、とんでもないことに口にしたのだ。
「えっと・・・。岬の向こうにある村と人魚が契約して真珠の取引していました・・・、よね?」
ー知らない・・・。
『面白いわね』
そう言って、僕を見てくる顔が好きだった。僕に触れる白くて長い指にドキドキしていた。
初めて出会った時まだ僕は10歳だった。浜辺の岩に彼女は腰掛け歌を歌っていた。気持ちよさそうな彼女に恋をした。
恋に落ちるのに年齢はないのだと感じた。早く彼女に見合うような大人になろうと頑張った。
でも僕の・・・・・・私の恋は叶わなかった。
たくさんのことがあって彼女も私も傷ついた。
彼女は私の前から消えた。
そんな彼女の幸せを願うことしか私にはできなかった。
彼女からもらった真珠を携えて、いつか彼女に会えるのを待ち望む・・・。
◇◇◇◇◇
私は白紙の紙が机の上にペンを持った手をとめた。今日の報告書をしあげ、個人的な日誌をつけようとしたままゆらゆらと揺れるランプの炎をみつめる。
ノックの音が聞こえ、アンナがお茶を持ってきてくれた。
「腑抜けた顔をしてますね」
ぼぅっとしていたのを見抜かれたらしい。
「勤勉なアルフ様にしては珍しいですね」
幼い頃から知っている分、アンナは私にずけずけ言ってくる。
「ちょっと考え事をしていた」
「フィーのことですか?」
ペンが勝手に指から離れ小さな音を立てて転がった。
「アンナ・・・」
「フィーの前だと優しい顔をされますね。そんなに初恋の方に似ていますか?」
「・・・どうでもいいだろう。それより、黒髪の女性だ。彼女の様子は?」
触れられたくなくて話を変える。アンナは鼻で息を吐き出すと報告してくれた。
「西館に部屋をご用意しました。今はまだ眠ってらっしゃいます」
「そうか・・・」
「あの方も人魚でしょうか?」
アンナも気にしているようだ。
私は首を振る。
「どうだろう。一度に人魚が行く人も集まることは少ないからな」
「800年前きりですか?」
アンナは物知りだとつくづく思う。優秀な侍女だと。
お茶で喉を潤していると、コンコンとドアが鳴った。
アンナが扉を開けるとそこにはフィーが神妙な顔で立っていて、私とアンナを見た瞬間、顔色をあからさまに変えた。
「す、すいません!お二人の貴重な時間に申し訳ありませんでした!!」
ーはっ??
「フィー!何考えてるの」
アンナに首根っこを掴まれフィーは部屋に連れ込まれた。
もじもじしながらも言いにくいことはっきり言ってくる。
「ですが、こんな夜遅くに二人っきりで・・・」
「あのねぇ~、侍女としてお茶をおもちしたの。これでも私には婚約者がいるのよ。あと数ヶ月したらしばらく休むことになってるわ」
アンナは首を離した手でフィーの頭をぺしりとはたいた。
「あ、そう、なんですか・・・」
「そうよ。あと言っておくけど、アルフ様は私の好みのタイプじゃないわ。どんなに笑顔を向けられて誘われてもなびくわけないでしょう」
そこまでずばりと言い切られるのも辛く感じる。
「アンナ・・・」
フィーが憐れんだ目で見てくるのだからため息を吐きたくなった。
「フィー、こんな時間になんのようだ」
気を取り直して聞いてみる。
彼女も用事を思い出したのか、姿勢を正し私を見てきた。
彼女の真剣な表情をしている。
「そうでした。先日のご褒美をお願いしたくてきました」
先日・・・、カラナイ国のパーティーの為のダンスレッスンの褒美だと思い出す。
「あれは、ダンスがなくなったんだ。ノーカウントだろう?」
「ダンスレッスンをしたからにはありです!」
意気揚々に言ってくる。
しかも力説してきた。
「来る日も来る日もセイネ様とアリー様のしごきに耐えました。これは褒美ものですっ!」
そこまできつかったのか!?と思わせるほどの拳を握って言ってきてはこちらが折れざる得なくなる。
「マリーのレッスンはそんなにきつくはないと思うわよ」
呆れたようなアンナの声に、フィーは首を振る。
「いえいえ、アンナ様。ダンスを知らないものには大変なことです。ましてやセイネ様は体力があまりなかったのですよ。基礎体力作りからしました!わたしも一緒に頑張ったんです!!」
眼光の圧が強い。キラキラを通り越してギンギンに紫の目が輝いている。
「わ、わかった。褒美をやる。何が欲しいのか言ってみろ」
私の言葉に彼女は嬉しそうに笑った。
「形は不揃いでいいので真珠を百粒ほど欲しいです!」
「はあ~!??」
ー真珠を百粒!!ありえないだろう!
「待て!それはいくらなんでも無理だ!不揃いとはいえ、真珠にいくらかかると思っている!?」
フィーの隣でいるアンナでさえ言葉を失っている。
フィーは真珠の価格を知らなかいから簡単に言っているのだろうと思い、彼女に説明した。
「フィー。真珠一粒でダイアモンドと同じ価値はするんだぞ!それをわかっているのか?」
そう言っても、彼女は不思議そうに首を傾げただけだった。
しかも、とんでもないことに口にしたのだ。
「えっと・・・。岬の向こうにある村と人魚が契約して真珠の取引していました・・・、よね?」
ー知らない・・・。
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