(完結)泡沫の恋を人魚は夢見る

彩華(あやはな)

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28.アルフ様と

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「アルフ様は800年前に何があったか知っているのですか?」

 いつものキラキラ顔がない。暗く沈み影がアルフ様を包んでいる。

「知っている。私は長い間、この城にいるからな」
「えっ?」

 自分でもびっくりするくらいの声が出た。

「なんだ?」
「長い間って・・・」
「あっ、いや、それは・・・」

 なぜか戸惑うアルフ様に普通に問いかけてしまう。

「アルフ様は若造したおじさんですか???」
「おじ・・・ぷっ、あはははっ」

 突然、腹を抱えて笑い出すアルフ様を見て唖然とした。子供っぽいところもあるとは思ったいたがこんなに表情を出してくるとは思わなかった。

「た、確かににおじさんと言われてもしかたないな」

 しばらく続いていた笑いを収めると、真摯な顔を向けてきた。

「私は国王からの信頼もあつい。それなりの権限をいただいている。だからこの国の歴史全部をも把握している」
「全部をですか?」
「わたしに特殊な能力があるとすれば、記憶が良いことだろうな。一度見たことや体験したことは確実に覚えている」
「それは、辛くないですか?」 

 私からすれば記憶がいいのは羨ましい。でも見たことや体験したことを覚えたままなのはどうなのだろう。忘れたいこともあるのではないだろうか。

 彼は薄く笑った。
 どんなことを体験したらそんな顔ができるのだろう。

「確かにしんどいな・・・。すべてを忘れたいと思うこともある」

 その顔が今までのことを語っているように思えた。だから、わたしも口にせずにはいられなかった。

「忘れることも辛いですよ」
「フィー?」
「忘れてしまうと思い出になりません。その時の気持ちさえ忘れるんです。断片的な記憶があってもそれだけの物なんです。そう考えればずっと覚えていることは価値があることだと思いますけど」
「価値のあること?」

 きょとんとした表情で見てきた。見た目が若く見える分、本当におじさんなのかわからない。

「記憶にあるってことは、あなたを作る人生に何かしらの影響を与え、価値あるものにしたんじゃないんですか?」

 彼はくしゃりと顔を崩し、わたしの頭をなぜ回した。
 すごく子供扱いしてくるのが悔しい。

「人を子供扱いしていませんか?」
「そんなつもりはない。君は私の知っている人によく似てるから安心するんだ」

 なぜてくるその手が暖かい。

「知っている人?なら、その方にしてください」
 
 アルフ様はなぜる手を止めた。

「彼女はかなり前にこの国から出て行った。私は彼女にまた会うためにここにいるんだ」
「会えると思っているのですか?」
「あぁ、彼女はまたここに帰ってくる。僕に気づいてもらう。そのためなら・・・」

 最後の方は聞き取れなかった。

「少しだけ・・・」 

  アルフ様はわたしを抱きしめてきた。

 アルフ様の心音が聞こえてくる。その胸の中は温かった。
 ドキドキする思いと同時に胸が痛くなった。

ーわたしはその人の代わり。
ーなんで、なんでこんなに寂しいのだろう。

 耳もとで、今日夢見た人の声が聞こえた。

『どうすればいいの?あの人はわたしに振り向いてくれないの!わたしはこんなにもあの人が愛おしくて、見ているだけで胸が痛いの。恋焦がれてるの!』

 夢の・・・もこんな想いだったののだろうか。

 わたしは彼の温もりを感じながら、哀れな人魚を考えていたー。


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