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29.ソレイユ王女1
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私はカラナイ国の第一王女です。
我が王室には昔から不思議な掟があります。
それは白髪を持つ子供は三ヶ月だけ『海に面するアトラス国の修道院に行くこと』というものです。
この50年ほどは生まれていませんでしたが、私が白髪を持って生まれてきたのです。
珍しい色に国中は騒いだそうです。
なぜならこの色は先祖返りなのです。400年前の当時の王太子が白髪で赤い目をした美女を外遊先から連れ帰ってきたのです。
当時その方・・・レフィシア様は色々な理由から人魚姫と噂されました。
今になっては信憑性はわかりませんが不思議な人だったといい伝わっています。
レフィシア様が王太子妃になってから、カラナイ国は繁栄しました。『カラナイ国の聖母』とまでいわれています。
出自もわからない者が聖母とし謳われるのですから余程の素晴らしい方と言えるでしょう。
掟はその方の遺言だそうで、現在も続けられているのです。
掟とはいえ廃れていたのも同然だったため正直、国を出て他国の修道院で暮らすなど面倒臭いとも思っていました。
それでも掟に従い仕方なく修道院に行ったのです。
正直初めて海を見て綺麗とは思いましたが、それだけで逆に匂いは生臭く感じるし、夜の海は不気味で、聞こえてくる風の音はかなしく怖かったのです。
でも波の音は好きでした。押して返す音。懐かしいとも思いました。
大人しく修道院の敷地内で好きな刺繍をします。何枚ものハンカチに好きな花の刺繍をしました。
私は白髪にコンプレックスを持っていたため他の人に見られたくなくて、外に出ることもなかったのです。
最終日。この日初めて海岸に行きました。
来た当初から海の近くに行くのも嫌だったので今まで来たこともありませんでした。
自分でも何を思っていたのかよくわかりません。本当に最後に行ってみよう、そんな軽い気持ちだったのです。
そこで、私の運命を大きく変える出会いをしたのです。
浜辺に倒れている人を見つけ慌てて駆け寄りました。
その方は綺麗な男性でした。
身近な男性といえばお父様とお兄様と、あとはがっちりした近衛兵くらいなので、こんな綺麗な方がいるのかと驚きました。
「大丈夫ですか?」
濡れている顔をハンカチでぬぐい、ゆすって尋ねるとうっすらと目を開けました。わずかに手が動いたので反射的に握って差し上げました。
そうしないといけないと思ったのです。
目を開けて私を見てほしいと思ってしまいました。
ですが、このままではいけません。どうすれば良いか思案していると、私を探しに来た侍女がやってきました。
あとは侍女・・・サリナに任せました。
サリナはその方を知っていたらしく、後の行動は早かったです。
しばらくするとその方の関係者と見られる人たちがきました。丁寧に運ばれていく姿を見送るしか私にはできませんでした。
見送ったあと、私はサリナと共に修道院に戻りました。
そして、次の日には後ろ髪を引かれながらカラナイ国へと帰ったのです。
カラナイ国に帰ってからも、私はあの方のことが忘れられずにいました。
こんな気持ちは初めてでした。
どうしたのか自分でもわかりませんでした。
「お嬢様」
サリナが心配します。
「サリナ。胸が痛いの。私、何かの病気かしら」
胸を抑え訴えました。
「どんな時に痛いのですか?」
「それは・・・」
「お嬢様。大丈夫です。私には教えてください」
そう促され正直に答えました。
「助けたいあの方を思い出すだけで胸が痛いの・・・」
「そうですか・・・。話していただいてよかったです。お嬢様。それは病気の名前を持ちますが病気ではありませんので大丈夫です」
「なんなの?」
「恋の病というものです。カラナイの王女様方は運命的な恋をするというのは本当のようですね」
サリナは慈愛に満ちた顔を向けてきます。
恋ー、私にはそれが本当にそうなのかその時にはわかりませんでした。
それからどういうわけか一ヶ月後、再びアトラス国の地に入ったのです。
我が王室には昔から不思議な掟があります。
それは白髪を持つ子供は三ヶ月だけ『海に面するアトラス国の修道院に行くこと』というものです。
この50年ほどは生まれていませんでしたが、私が白髪を持って生まれてきたのです。
珍しい色に国中は騒いだそうです。
なぜならこの色は先祖返りなのです。400年前の当時の王太子が白髪で赤い目をした美女を外遊先から連れ帰ってきたのです。
当時その方・・・レフィシア様は色々な理由から人魚姫と噂されました。
今になっては信憑性はわかりませんが不思議な人だったといい伝わっています。
レフィシア様が王太子妃になってから、カラナイ国は繁栄しました。『カラナイ国の聖母』とまでいわれています。
出自もわからない者が聖母とし謳われるのですから余程の素晴らしい方と言えるでしょう。
掟はその方の遺言だそうで、現在も続けられているのです。
掟とはいえ廃れていたのも同然だったため正直、国を出て他国の修道院で暮らすなど面倒臭いとも思っていました。
それでも掟に従い仕方なく修道院に行ったのです。
正直初めて海を見て綺麗とは思いましたが、それだけで逆に匂いは生臭く感じるし、夜の海は不気味で、聞こえてくる風の音はかなしく怖かったのです。
でも波の音は好きでした。押して返す音。懐かしいとも思いました。
大人しく修道院の敷地内で好きな刺繍をします。何枚ものハンカチに好きな花の刺繍をしました。
私は白髪にコンプレックスを持っていたため他の人に見られたくなくて、外に出ることもなかったのです。
最終日。この日初めて海岸に行きました。
来た当初から海の近くに行くのも嫌だったので今まで来たこともありませんでした。
自分でも何を思っていたのかよくわかりません。本当に最後に行ってみよう、そんな軽い気持ちだったのです。
そこで、私の運命を大きく変える出会いをしたのです。
浜辺に倒れている人を見つけ慌てて駆け寄りました。
その方は綺麗な男性でした。
身近な男性といえばお父様とお兄様と、あとはがっちりした近衛兵くらいなので、こんな綺麗な方がいるのかと驚きました。
「大丈夫ですか?」
濡れている顔をハンカチでぬぐい、ゆすって尋ねるとうっすらと目を開けました。わずかに手が動いたので反射的に握って差し上げました。
そうしないといけないと思ったのです。
目を開けて私を見てほしいと思ってしまいました。
ですが、このままではいけません。どうすれば良いか思案していると、私を探しに来た侍女がやってきました。
あとは侍女・・・サリナに任せました。
サリナはその方を知っていたらしく、後の行動は早かったです。
しばらくするとその方の関係者と見られる人たちがきました。丁寧に運ばれていく姿を見送るしか私にはできませんでした。
見送ったあと、私はサリナと共に修道院に戻りました。
そして、次の日には後ろ髪を引かれながらカラナイ国へと帰ったのです。
カラナイ国に帰ってからも、私はあの方のことが忘れられずにいました。
こんな気持ちは初めてでした。
どうしたのか自分でもわかりませんでした。
「お嬢様」
サリナが心配します。
「サリナ。胸が痛いの。私、何かの病気かしら」
胸を抑え訴えました。
「どんな時に痛いのですか?」
「それは・・・」
「お嬢様。大丈夫です。私には教えてください」
そう促され正直に答えました。
「助けたいあの方を思い出すだけで胸が痛いの・・・」
「そうですか・・・。話していただいてよかったです。お嬢様。それは病気の名前を持ちますが病気ではありませんので大丈夫です」
「なんなの?」
「恋の病というものです。カラナイの王女様方は運命的な恋をするというのは本当のようですね」
サリナは慈愛に満ちた顔を向けてきます。
恋ー、私にはそれが本当にそうなのかその時にはわかりませんでした。
それからどういうわけか一ヶ月後、再びアトラス国の地に入ったのです。
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