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マヤの告白7
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ベラニージ国から帰って来てからは、ミリア様は学園にはあまりいけませんでした。
ベラニージ国の医者からもらった痛み止めの薬を飲み騙し騙しの生活を送るようになったからです。
その間、サシャのやらかした噂は多く聞こえてきました。そんな中に飛び込んでいくようにミリア様は辛い身体を推して時たま学園に行くのです。
時たま学園で会うサシャの治癒で痛みをとってもらうことがあっても効果は薄いものでした。
学園から帰ってきたミリア様は本当に辛そうでした。
あと少しなのです。
あと少しすれば、決着がついてミリア様はベラニージ国に行って病気が治ります。
それまで、わたしはミリア様のために頑張ると決めていました。
「本当にうまくいきますか」
でも、大丈夫か不安です。
「大丈夫よ」
ミリア様は笑いました。
旦那様は「聖女」の話を聞いてからはほとんど王宮に行ったきりでしたが、最近は早く帰ってきては、夕食を一緒に摂られるようになりました。ミリア様との時間を大切にしているのです。
わたしはじっと耐えるしかありません。
そして決着がついた時、旦那様に連れられてやってきたミリア様は子供のようでした。
どんなことが起こったのかは知りません。わたしにはどうでも良いことなのです。
わたしはミリア様だけを考えればいいのですから。
ミリア様は・・・わたしの名前を忘れていました。
あの方は強い方です。
わたしの自慢のお嬢様です。
旦那様に託され、信頼のおける御者にお願いしてベラニージ国に向かいました。
聞き分けのない子供のように癇癪を起こすミリア様に何度も泣きたくなりました。
休憩として寄った草原でミリア様はクローバーの葉で冠を作ります。手が覚えているのでしょう。
小さく歌を口ずさみながら作る冠は上手でした。
何の歌でしょう。何を思い出しているのかわたしにはわかりません。
でもその姿を幸せそうに見えました。
ベラニージ国についた次の日にはミリア様は治療室に入っていきました。
何時間も治療室の前で祈ったのかわかりません。
長い長い時間でした。月が冷たい色をしていて本当に怖くてひとりぼっちになってしまったように思えたのです。
やっと終わって出てきたミリア様は変わり果てた姿でした。
美しかった長い髪がありません。
全部髪は剃られ、頭には包帯が巻かれていました。
涙が溢れます。
大声泣きました。周りを憚ることなく溢れる涙を抑えることはできなかったのです。
なんとか医者からの言葉は理解できました。
「瘤は取り除きました。あとは目を覚ますのを待つだけです」
静かに眠るミリア様の横で、わたしは旦那様に手紙を書きます。
そして・・・、ミリア様には止められていましたが、全てのことを綴った手紙をバード様宛に冠と共に送りました。
ミリア様の想いを・・・誰かに知って欲しいと思ったのです。
バード様に渡れば、王太子殿下に・・・もしかすればアルト様に伝わるかも知れない。そんな淡い期待を持ってしまったのです。
もし伝わらなくてもかまいません。
ミリア様の意思が一人でもいい、誰かにわかってくれたなら、それでかまわないのです。
わたしのわがままで身勝手なことだと理解しています。
自分だけの中で抱えこむのがしんどくて悲しくて、誰かに送らずにいられなかったのです。
二日して、ミリア様は目を覚まされました。わたしをトロンとした瞳で見てくると僅かに首をかしげます。
「だあれ?」
ああっ・・・。
泣きたい気持ちを堪え、わたしは笑います。
大丈夫です。
ミリア様がまたわたしに笑いかけてくれました。
生きててさえくれるなら、どんな姿でもわたしはあなたに仕えると決めています。
「わ、わたしの名前は、マヤです。ミリア様の侍女です」
ミリア様は出会った頃のようにわたしに笑ってくれました。
わたしは生まれて初めて神様に感謝しました。
ーミリア様を生かせてくれてありがとうございます・・・。
わたしの手を握るミリア様の手が温かく生きていくれてたことを感じました。
ベラニージ国の医者からもらった痛み止めの薬を飲み騙し騙しの生活を送るようになったからです。
その間、サシャのやらかした噂は多く聞こえてきました。そんな中に飛び込んでいくようにミリア様は辛い身体を推して時たま学園に行くのです。
時たま学園で会うサシャの治癒で痛みをとってもらうことがあっても効果は薄いものでした。
学園から帰ってきたミリア様は本当に辛そうでした。
あと少しなのです。
あと少しすれば、決着がついてミリア様はベラニージ国に行って病気が治ります。
それまで、わたしはミリア様のために頑張ると決めていました。
「本当にうまくいきますか」
でも、大丈夫か不安です。
「大丈夫よ」
ミリア様は笑いました。
旦那様は「聖女」の話を聞いてからはほとんど王宮に行ったきりでしたが、最近は早く帰ってきては、夕食を一緒に摂られるようになりました。ミリア様との時間を大切にしているのです。
わたしはじっと耐えるしかありません。
そして決着がついた時、旦那様に連れられてやってきたミリア様は子供のようでした。
どんなことが起こったのかは知りません。わたしにはどうでも良いことなのです。
わたしはミリア様だけを考えればいいのですから。
ミリア様は・・・わたしの名前を忘れていました。
あの方は強い方です。
わたしの自慢のお嬢様です。
旦那様に託され、信頼のおける御者にお願いしてベラニージ国に向かいました。
聞き分けのない子供のように癇癪を起こすミリア様に何度も泣きたくなりました。
休憩として寄った草原でミリア様はクローバーの葉で冠を作ります。手が覚えているのでしょう。
小さく歌を口ずさみながら作る冠は上手でした。
何の歌でしょう。何を思い出しているのかわたしにはわかりません。
でもその姿を幸せそうに見えました。
ベラニージ国についた次の日にはミリア様は治療室に入っていきました。
何時間も治療室の前で祈ったのかわかりません。
長い長い時間でした。月が冷たい色をしていて本当に怖くてひとりぼっちになってしまったように思えたのです。
やっと終わって出てきたミリア様は変わり果てた姿でした。
美しかった長い髪がありません。
全部髪は剃られ、頭には包帯が巻かれていました。
涙が溢れます。
大声泣きました。周りを憚ることなく溢れる涙を抑えることはできなかったのです。
なんとか医者からの言葉は理解できました。
「瘤は取り除きました。あとは目を覚ますのを待つだけです」
静かに眠るミリア様の横で、わたしは旦那様に手紙を書きます。
そして・・・、ミリア様には止められていましたが、全てのことを綴った手紙をバード様宛に冠と共に送りました。
ミリア様の想いを・・・誰かに知って欲しいと思ったのです。
バード様に渡れば、王太子殿下に・・・もしかすればアルト様に伝わるかも知れない。そんな淡い期待を持ってしまったのです。
もし伝わらなくてもかまいません。
ミリア様の意思が一人でもいい、誰かにわかってくれたなら、それでかまわないのです。
わたしのわがままで身勝手なことだと理解しています。
自分だけの中で抱えこむのがしんどくて悲しくて、誰かに送らずにいられなかったのです。
二日して、ミリア様は目を覚まされました。わたしをトロンとした瞳で見てくると僅かに首をかしげます。
「だあれ?」
ああっ・・・。
泣きたい気持ちを堪え、わたしは笑います。
大丈夫です。
ミリア様がまたわたしに笑いかけてくれました。
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ミリア様は出会った頃のようにわたしに笑ってくれました。
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ーミリア様を生かせてくれてありがとうございます・・・。
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