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間話 1 ―慶夜―
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ふとした仕草で、奴隷の印が頬に触れる。
兄の名が刻まれた奴隷の印が嬉しくて、弟は繰り返し、首を傾いでみたり指先で触れて確かめては嬉し気に微笑んでいた。
「さ……もう休みなさい。リシェが寝るまではここに居てあげるから」
兄を引き留めることができないことを、弟は切なく思う。だが引き留めて兄の睡眠時間を失くすわけにはいかない。
「ーーありがとう、兄さま。え……と…………」
横になりながら、兄を見上げて言い淀む弟に、クスりと兄は笑った。
「“お休み”の口づけか」
「あ…………の、ごめんなさい…………」
「良い。これは調教ではない」
ちゅ……
兄は、リップ音を響かせて弟に口づけると、弟の眼の上に手を翳した。
「お休み、リシェ」
「はい、お休みなさい。兄さま、ありがとう」
程なく、すーーっと眠りに入った弟を、眼を細めて兄は見入った。
「寝付きが良いのは昔のままだな」
兄は弟の髪をかきあげて額に口づけ、感じ入ったように独り言ちたが、それには控えていた日陰が苦笑する。
「主」
日陰がそれ以上は口にせず、首を振る。
日陰の示唆に思い当たった兄も苦笑を返した。
「私のせいか」
「明日は動けますまい」
それには容易に想像がつく。
「ゆっくりさせてやってくれ」
「心得ました。……主もこちらで寝て行かれては? ーー初夜です」
「……夜が明けたら起こしてくれ」
「承知。お休みなさいませ」
兄は弟の横に身を横たえ弟を抱きしめると、『ん……』と、弟は意識のないまま捩り、自ら心地の良い姿勢に落ち着くと再びすぅ、とした寝息になった。
「日陰、ありがとう」
「主の、御心のままに」
日陰はそう応え、華灯を消した。
§
兄の名が刻まれた奴隷の印が嬉しくて、弟は繰り返し、首を傾いでみたり指先で触れて確かめては嬉し気に微笑んでいた。
「さ……もう休みなさい。リシェが寝るまではここに居てあげるから」
兄を引き留めることができないことを、弟は切なく思う。だが引き留めて兄の睡眠時間を失くすわけにはいかない。
「ーーありがとう、兄さま。え……と…………」
横になりながら、兄を見上げて言い淀む弟に、クスりと兄は笑った。
「“お休み”の口づけか」
「あ…………の、ごめんなさい…………」
「良い。これは調教ではない」
ちゅ……
兄は、リップ音を響かせて弟に口づけると、弟の眼の上に手を翳した。
「お休み、リシェ」
「はい、お休みなさい。兄さま、ありがとう」
程なく、すーーっと眠りに入った弟を、眼を細めて兄は見入った。
「寝付きが良いのは昔のままだな」
兄は弟の髪をかきあげて額に口づけ、感じ入ったように独り言ちたが、それには控えていた日陰が苦笑する。
「主」
日陰がそれ以上は口にせず、首を振る。
日陰の示唆に思い当たった兄も苦笑を返した。
「私のせいか」
「明日は動けますまい」
それには容易に想像がつく。
「ゆっくりさせてやってくれ」
「心得ました。……主もこちらで寝て行かれては? ーー初夜です」
「……夜が明けたら起こしてくれ」
「承知。お休みなさいませ」
兄は弟の横に身を横たえ弟を抱きしめると、『ん……』と、弟は意識のないまま捩り、自ら心地の良い姿勢に落ち着くと再びすぅ、とした寝息になった。
「日陰、ありがとう」
「主の、御心のままに」
日陰はそう応え、華灯を消した。
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