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エピソード3 へなちょこボール
しおりを挟むまたボールが戻ってきて、もう一度投げようとした時、
体育の近藤先生の言葉を思いだしました。
『夏休みが終わったら、ドッチボール大会をやります。
みんな、ボール投げの練習をしてきて下さい。いいですか』
思いだした拍子に、足がすべり、
ボールが向こうの公園の入り口へ飛んで行きました。
ちょうど、公園から入ってくる人がいて、
ボールをとってくれました。
『なーんだ。このへなちょこボールは。あいかわらずだなぁ』
見ると、あの耳かっぽじおじさんが立っていて、
ニヤリッと笑いました。
前会った時と同じ、野球ぼうをかぶり、
キツネのような細い目でした。
お腹だけは、さらにポッコリが目立っています。
ガンちゃんも、笑いました。
『おじさん、ふとった?』
『うっ。』
おじさんは、ちょっとうめき声を出して、
顔を赤らめました。
でも、またすぐ、いつものおじさん姿に戻りました。
『坊主、いくつになった?』
『ぼうずじゃないけど、ろくさい!』
『6歳は坊主だ』
『ぼうずじゃなくて、ガンちゃん!』
『いいか、耳かっぽじって、よーく聞きな。
お前は、へなちょこボールを投げているうちは、まだまだ坊主だ。
しっかりボールが投げれるようになれ!』
『みてて、すぐになげれるようになるから。
そして、おじさんをあてて、がいやにだしてやる!』
『でたでた、ガンちゃんのくちはっちょうケンジュウ!』
コートの中のお友達がいいました。
『口八丁拳銃か。たいしたカウボーイだ』
ガンちゃんは、カウボーイぼうを脱ぎ、鉄棒にかけました。
ガンちゃんが本気になりました。
『ようし、いっちょやるか!』
耳かっぽじおじさんも、野球ぼうをぬいで鉄棒にかけると、
ドッチボールのコートに向かって大股で歩き出しました。
〈完結〉
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